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津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第五章 安東氏、為信と再び和睦す 天正十一年(1583)秋
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暴発の矛先 第五話


 やさぐれてはいるが……このままではいけぬとわかっている。だからこそ言うべきモノは決まっているのだが……喉の先まで来て言えるか言えまいか。そして言ったが最後、そこから為信自身が変わらねばならぬ。その覚悟はあるか。いや……なくても後から身についてこよう。言うだけでいいのだ。


 風ひとつ流れぬ。虫も飛ばぬ。行灯の火の揺れも一切ない。誰も互いに目を合わせぬ。そのような中の沈黙だったので、とても長い刻に感じられた。そして最後に、髭の生えた口からその言葉がでる。




「わかった。決起する。」



 為信の口から……その言質こそでたが、はたして本心から出た心なのか、投げやりに放ったモノか。沼田は文句を言いたくなるが……そこは抑えて、感情を再びしまった。いつもの落ち着いた凛々しい姿の沼田へと戻る。


「では、そういたしましょう。殿の意志がどうであれ、あなたは津軽衆の象徴でございます。他国者と在来の者、両方がこのままではいけぬと考える以上、それに応えるのが殿の役目……。」



 為信は沼田のいる後ろを見るのをやめ、豊前屋徳司の座す前へと向きを戻した。為信は顔を見ぬまま、沼田へと話し出した。


「在来の者も鬱憤がたまっていたことは承知している。なぜ勝ち戦だったものを終わらしたのかと。ただし、あの時の判断は間違っていなかったと私は思う。だが……すでに傷は癒えた。」



 そして徳司へと目を併せ、安東氏と裏で結ぶことを確約。安東と大浦は六羽川の恨みを水に流し、民が豊かに暮らせるために努めていくのである。




 外は当然ながら真っ暗で、半月の光も弱い限りだ。しかし沼田はもちろんのこと、後に従う八木橋(やぎはし)の目にも為信は……なにやらこれまでと違うように見える。




 再び、為信に輝きが戻った。

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