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津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第四章 妙誓、生玉角兵衛と対面す 天正十一年(1583)晩夏
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激突 第五話

 ……領主である大浦家は兼平氏や商家長谷川を通じて再三忠告しているのだが、他国者を中心とする不貞集団はエゾ衆を追い出さんとばかりに略奪を繰り返した。それが他国者にとって正義であり、耕すことのできる土地は耕すべき者に譲るべきであり、エゾ衆はもっぱら狩や交易などをしているのだから山間や港に移り住めばいいだろうとの考えが根底にある。


 だからといって、むやみに追い出されそうになるのはエゾ衆にとって適わぬ。それがために襲われ命を絶たれるのは許されない。……領主も見て見ぬふり。ならば我ら自身で抵抗し、戦わなければならないという結論になるのは当然だ。それが今に伝わる “蝦夷荒(えぞあれ)” という反乱(=レジスタンス)である。



 生玉(なまたま)角兵衛(かくべえ)などの他国者と……エゾ衆は敵だ。すでに仲良くなどできぬ。使わぬ土地だけを貸して、同じところで暮らすことも無理だ。そして今、角兵衛率いる不貞集団はとあるエゾ村を襲っている。阿鼻叫喚(あびきょうかん)の至る所。一方的に蹂躙(じゅうりん)されてはならぬと、勇気ある者は他のエゾ村へ知らせに走り、各々の村から人を向かわせることに成功。今こそ奴らを殺せとばかりに走るは走る。


 ……ただし先に着いたのは尼の妙誓(みょうせい)。馬に跨り、エゾの青年と共に襲われている村を外側から臨んだ。月明かりは弱いのではっきりとはしないが、黒と黒がぶつかる様はまじまじとわかる。争い合い、悲鳴はもちろんのこと、武具の当たる音や体ごと崩れる音。音という音が外にも響き渡る……。


 思わず妙誓は身震いをした。戦場に出たことは無く、尼なので死者に付いた血を拭くことはあっても、血を出すことに加担したことは当然ない。それでも……いかねばらなぬ。まずは動かんとばかりに腕は手綱を振り上げ、馬は前へと駆ける。従うエゾの青年も慌てて後を追う。



馬に乗ったまま村へ物凄い勢いで入ると、土埃で辺りが霞んでいるようにも思える。……いや、違う。これは(けむ)だ。怒りを成した妙誓は目を見開き、”入ってきた奴は誰だ” と驚いている不貞集団に対しこう怒鳴った。


「私は油川(あぶらかわ)城主奥瀬(おくせ)善九郎が妹、明行(みょうこう)寺の妙誓という。不貞を働くのは許さぬ。いますぐ立ち去れ。」



 ……その言葉を聴く彼らにとっては言われた内容よりも、エゾ衆の服を着ている女が和人の言葉を流暢に使ったぞと。しかも己は和人だと名乗っている……。すぐに理解できる代物ではない。しかも油川というならば……。


 すると遠くより怒鳴りを聞いた生玉角兵衛、彼は片手に太刀を持ったまま、馬に跨る妙誓尼の前へ立つ。


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