激突 第四話
会話を介する通辞は内容の激しくなるのを危うく思い、互いの言葉を聞くたびに冷や汗をかくのだ。族長は一段と厳しい顔で妙誓に問う。
「ならば尼様、妙案でもおありか。争いごとを終わらすお話をお持ちか。和人だ津軽衆やら他国者など違いはどうでもよい。お前たちの“事情”に翻弄されたくはないわ。」
妙誓はその言葉を聞かされて、喉の奥がつかえてしまったようだ。こうなると答えようなどなく、下をうつむくしかない。者どもが囲む松明は否応なく明るいのだが、彼女の顔は暗きで覆われ、周りにも影を落とす。
そんな時だった。馬に跨ったエゾの若者が村へ駆けてきた。族長らの袂へ一目散に走り、馬を降りるなりすぐに伝えようとする。ただし相当息を切らしているので、何を言っているのか族長らにとってもわからぬ。きっと“おちついて”とでも言われているのだろうか。しばらくして……すべての者の顔は陰る。次に来るのは哀しみ、そして怒り。
……通辞は甚だ恐れながら、妙誓へと伝える。
「南方のエゾ村にて、和人が押しいったとのこと。我慢ならぬので、いまから他の村の者も集めて、彼らを殺すと言っておられます。」
妙誓は……即座に族長らへ言い放った。
「ならば私も参る。同じく馬を用意せよ。」
……津軽のアイヌは馬を立派に使いこなす。これが蝦夷々島であれば馬自体が一部の和人のモノなので触れる機会など無く。そして妙誓も女がてら馬を使いこなす。互いに乗る様に驚きつつ、妙誓は若者と共にすぐさま襲われている村へ。族長らは各村によって人を集めたうえで向かうつもりだ。どちらが早く着くかといえば妙誓だろうが、なにかこれといって防ぐ手立てがあるわけではない。それでも自然と体が動く。この様を目撃しなければ、何も語れぬ。そこに誰がいようとも、この身一つで飛び込むのみ。……親しくなったエゾ衆が止めようが、言うことを聞かぬだろう。




