激突 第三話
やっと日も陰ってきたか。妙誓は手招きされるがままに大きめな小屋に入ると……五人ほどのエゾ衆が胡坐をかいて座っていた。ご丁寧にも一人通辞らしき若い青年も用意されており、彼が言うには “尼様がいらっしゃるとお聞きしたので、今の我らの考えを申し上げるそうです” とのこと。つまりここに集まっているのは複数あるエゾ村の族長ら。妙誓は覚えたての “イランカワプ” を唱え、族長らも微笑み返しながら “イランカワプ” と口にする。妙誓の顔は崩れ、まるで見知っている仲のような感じで話が始まったのだった。
初めはそれぞれの暮らしについて。妙誓は仏門に仕えてから肉を食べていないと語ると族長らは驚き、そのような生活は考えられない。我らは狩で得た獣の味を知っている。熊鍋などとても美味だぞと自慢してくる。逆に族長らが “ホタテを食べたことがない” というと、妙誓はここぞとばかりに自慢げに “とてもおいしいぞ” と言い返す。このように中身のない和やかな会話を経て、互いに敵意はないことを確かめ合えたはずだ。
そして日はおち、小屋の中では暗いので皆して外へ出た。大きな松明を焚かせ、そこの地べたに座って談義をし始める。横から顔に光が当たれば、どちらかといえば彫の深いその顔立ちに陰ができる。苦労を重ねてきた皺の筋も際立つ。そんな面の族長らはその場に落ち着くと、急にさきほどまでの笑みを消し去った。そして神妙になって妙誓へ言う。
「我らは和人の不埒者を先に攻めるつもりだ。それが無碍に死んでいった者の仇討にもなろうし、エゾ衆の意地もみせることができる。」
妙誓は……黙って首を振る。
「もしお前たちが和人に対して突然攻撃をしようものなら、堂々と攻めたてるための名分を与えるようなもの。それこそエゾ衆を追い詰めるきっかけになるぞ。」




