北の直虎 第四話
次第に怒りがこみあげてくる。長老や彼を囲む村の民ら、哀しみながら長々と語り続けた。その言葉に嘘偽りはなく、このままでは飢えて死ぬか、どこかへ逃げてしまうかしかない。外は夕日が西の禿山へ沈みかけ……暗がりが訪れる。外を見つつ……妙誓は何も混ざっていない、そこに出されている茶碗の水を口に含んだ。貧しい故、茶の葉など煎じて入れることもできないのだろう。その無味な味にどれだけの想いが込められているか……。彼女は皆に言う。
「よくわかり申した。私の兄上にも伝える故、安心なされよ。」
その場にいる者、彼女に深々と頭を下げ、夜更けになるまで精一杯のもてなしをした。食べ物こそ粗雑で数も多くないが、代わりに歌や踊りを懸命に奏でる。形などない、見様見真似の粗雑なものだが、一つ一つの身振り手振りに心が籠っている。下手に形の定まった能や芸事などとは違う。……ただし皆々やつれており、明るさを感じにくいことが残念でならぬ。……これを取り戻すのが私の役目の一つかもしれぬ。
朝となり、小鳥がさえずりをした。砂利を歩く音が辺りに響き、葦を避けるは白の布帽と橙色の袈裟姿の尼と僧侶……。妙誓は無数に分かれる川の一つの畔に立ち、連れの僧侶と話す。
「この窮状に関していえば、大浦家は主家に従っているのだから、兄上に頼めばなんとかできる話なのか……だが、どうもそれだけではないらしい。」
一人の僧侶が口を開く。
「すでに南部氏に訴えたというのは、おそらく浪岡へでしょう。今の御所号である山崎氏は元々、山奥の饗沢の村長。そうとう昔に北畠と血の繋がりがあっただけで小奇麗に祀り上げられておらしますが、力があろうはずがございません。実際に力があるのは代官の白取氏。彼の一存にて、全てが決まります。」




