表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第四章 妙誓、生玉角兵衛と対面す 天正十一年(1583)晩夏
32/102

北の直虎 第一話   +浪岡城絵図




 ……蝦夷荒(えぞあれ)に伴う津軽の動揺は、もちろん南部氏にも届いた。大浦氏は南部家臣であるが、一度逆らったお家柄。力が弱まるのは大歓迎。逆にここらで大浦家に滅んでもらった方がいい。さして助けることはせず、浪岡代官のほうでも静観の方針を取った。


 ただし南部家中にどうしてもこの事態を見過ごせない者がいた。彼女の名は尼の妙誓(みょうせい)という。油川(あぶらかわ)明行(みょうこう)寺(後の弘前(ひろさき)円明(えんめい)寺)の女住職で、油川城主奥瀬(おくせ)善九郎(ぜんくろう)の妹だ。明行寺は真宗なので、同じ真宗(本願寺)を名乗る角兵衛という他国者がエゾ村を襲ったことが蝦夷荒という混乱のきっかけだと聞いて、とてつもなく憤慨した。女がてら気の強い彼女は、かつては近隣の領主に嫁いでいたが、三行半を突き付けられた出戻り。周りが宥めても、信じた道を突き進むのが彼女の性格……。どうにかして角兵衛をこの手で罰したいと思った。襲われたエゾ衆の悲惨さ。いまだ他国者はエゾ村の土地を狙っていると聞くし、大浦家は何も有効な手立てを打ち出せずにいる。……いやいや、明らかに悪いのは他国者であって、そのきっかけを作った角兵衛ではないか……。他国者らにいくら訳があろうとも、罰せずして事がおさまるか。そして御仏の心に叶うはずがない。


 さて妙誓は出立の願いを出すべく、油川城へと上がった。日の蔭る涼しい頃合い。特に事前の断りもなく、ズガズガと兄のいる住まいへ。奥瀬はあきれた素振りで、そんな妹に “座れ” と一言。


「はあっ……お前も四十路(よそじ)になったというに、その(さが)は治らないの……」


 妙誓は笑顔で答えてやった。



「はい。でなければ、私は私でありませぬ。」




……しかし思い起こすと、妹のおかげで油川が平和になったこともある。滝本(たきもと)重行(しげゆき)の一件の時、民衆を扇動して彼を追い出したのは妹だ。言っても聞かぬは変わらぬし、仏門の身なれば念仏でも唱えて大浦領内に入ればよろしい。もう兄は投げやりだ。



浪岡城絵図

https://18782.mitemin.net/i410960/

挿絵(By みてみん)


2018/02/15  挿絵に関して


出典元:特集 津軽古城址

http://www.town.ajigasawa.lg.jp/mitsunobu/castle.html

鰺ヶ沢町教育委員会 教育課 中田様のご厚意こうい(あずか)りまして掲載が許されております。小説家になろうの運営様にも、本文以外でのURL明記の許可を得ております。


光信公の館

〒038-2725

青森県西津軽郡鰺ヶ沢町大字種里町字大柳90

http://www.town.ajigasawa.lg.jp/mitsunobu/

TEL 0173-79-2535


鰺ヶ沢町教育委員会 教育課

〒038-2792

青森県西津軽郡鰺ヶ沢町大字本町209-2

TEL 0173-72-2111(内線431・433)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ