北の直虎 第二話
街道を進むは尼と後を従う坊主の二人。彼女は錫杖を打ち鳴らし、“南無阿弥陀仏” と唱えながら道を歩む。民の言葉を聴くために様々な道を進み、藪が目の前を塞ごうとも意図ともせず。ただただ彼女の信念の求めるままに、奥地へと分け入るのだ。
寄り道をしつつも、先へと延びる大道を進めば浪岡へ。ただしその手前を右へ曲がり、一旦は嘉瀬(金木)というところへ向かうつもりだ。なんでもその場所は前住職の頼英の生まれ故郷と聞く。大変貧しい村で、小さい頃に食い扶持を減らすため寺へ預けられたらしい。そこからひたすら勉学に励み、明行寺(円明寺)の住職まで成り上がったのだ。そんな彼はたいそう信心深く、特に跡を継いだ妙誓の行く末を心配してくれている。激情ではないながらも、違うことは違うと誰に対しても言い切る彼女の性、いつか身を危うくしてしまうのではないかと……。
そこで最初は当てずっぽうに大浦領内に入らずに、嘉瀬へ寄ることを勧めた。この地域は未だ北畠残党が治める地域であるし、なにより頼英の出自であるので、彼が住職にまでなったことは故郷の民にとっても誇り。協力者も多いことだろうから。
ただ……いざついてみると、なんとも寂れた様よ。夏で盛る頃合いだというに、勢いがなく。身に着けている布はほどけ、家々は傾き、田畑も荒れているところが多い。話を聞くと……これまでの戦で、人が余多死んでしまった。耕すべき人がいないので、そのままにするしかない。かといって大浦領内のように他国者を入れると……我らが喰われてしまう。加えて上流から来る船に屈強な不埒者が番頭として乗り込んでしまうせいで、これまで入っていたはずの運航のための税も取れない。ますますひもじくなるばかりだと。
そう話すは赤子を抱く母。あまり乳がでないので、赤子は弱るばかり。泣き声に力なく、いつしか妙誓の目の前で静かになった。……果ては寝てしまったのか。やけに青白く、ひんやりとしているようにも思えた。




