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津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第三章 狄狩り 天正十一年(1583)夏
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蝦夷荒 第三話

 エゾ村の頭たちは、城内の大広間に通された。ただし上座には誰もおらず、対面して武門の男一人と落ち着いた色の絹を着た男……深みのある茶色……正確には朽れた葉の色と紺色の帯。歳相応に皺を持つ穏やかな老人が待ち構えていた。


 隣の武門の男より、あたかも権力を持つのはこの老人のようにも思える。そしてその二人に侍るは通辞。エゾ村と津軽衆は違う言葉を持つ集団だが、さすがに同じ土地に暮らす者同士であるので、若干のイントネーションは判る。だがこの場合は無駄な誤解を避けるため、大浦家側で用意したという。




 さて、武門の男が第一声。

「私、大浦家臣で譜代の兼平(かねひら)綱則(つなのり)と申す。」


 次に横を見やり、続けて話す。

「そしてこちらにいるのは、商家ながら昔より当家に並々ならぬ貢献をしておらす。鯵ヶ沢(あじがさわ)長谷川(はせがわ)理右衛門(りえもん)殿です。


 理右衛門は穏やかにエゾ衆へ会釈をした。エゾ衆もつられて頭を下げる。兼平は長谷川の化け(つら)を少し見て……さてと再びエゾ衆へ顔を向けた。



「話は事前に承っておる。この度の主犯もすでに知れた。この理右衛門の嫡男は三郎(さぶろう)兵衛(ひょうえ)殿と申し、浪岡で分家し商売してなさる。そこでお抱えの生玉(なまたま)角兵衛(かくべえ)という浪人が率いる集団がしでかしたと聞いた。」


 そこでエゾ衆の頭の一人は “こちらに彼らの身柄を引き渡してほしい” と伝えるが……




「ところが角兵衛が申すに、大浦領内のエゾ村に盗賊が逃げ込んだらしい。我らはそれを追っていたが、エゾ村の者は彼らを匿ってしまった。公然と刃を向けてきたので、わが身の危険を感じ、争うに至った。そこ過程で火が村についてしまったことは申し訳ないと。」




 ……そのような話は聞かぬ。誰も申していない。エゾ衆の頭たちはその場に立ちあがり抗議した。だが兼平は……浮かぬ表情をしたまま。目を合わせようとしない。


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