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津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第三章 狄狩り 天正十一年(1583)夏
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蝦夷荒 第二話

 津軽にはエゾ村が大小含め百近くある。これらは全て和人と穏やかに暮らしてきた。互いに血縁関係を持っている者もいたし、次第にその垣根もあいまいなものになりつつある。それでも ”アイヌ” としての文化と誇りを捨てない村もあったし、津軽衆もわざわざそのことに干渉することがなかったので、至極平和だった。


 しかし戦国の世に至り、中央より流れてきた他国者が大数をなす。彼らは大浦家に力を貸す代わりに、土地を求めた。戦に勝てば敵の所領が恩賞として与えられ、不埒者に成り下がっていた彼らは定住者に変わっていった。さらには大浦家も人を求め、新たなる耕作地へ積極的に人をあてがった。……だがそのシステムは、大浦家が南部に再服従することで決裂した。津軽に人が集まりすぎ、防風と治水による開墾だけでは足りぬ。外を獲れない以上は……中を喰らう。これは弱肉強食の世界で生きてきた流れ者=他国者の当然なる原理である。


 生玉角兵衛とその他国者の一団がエゾ村を襲ったことを契機として、他の者らも我先にとエゾ村を狙い始めた……。彼らは我らとは何もかも異なる “狄” なのだから、襲ってもいいのだと。これは在来の者にとって決してできぬ発想だ。


 当然だが他のエゾ村の者らはこの事態に驚き、襲ったのが誰かもわからないし、同じことが起きまいかたいそう不安がった。そこで村々の頭が代表して二十名は大浦城へと向かった。ゆっくりと町の様子を見ながら……険しい顔で城への道を進む。城の(たもと)に住まう町衆は……何事かと固唾をのんで見守る。……その(さま)に子供は怯え、思わず泣き出してしまう。道を歩むエゾ衆の一人がそれに気づき、わざと子供を笑わせようとニタっと笑ってみた。……この時はエゾ衆にも余裕があった。もちろん村を焼くほどの狼藉だし仲間が多く死んでしまっている。許すわけにはいかないが……まだ彼らはこれから起きるであろう騒動に気づいていなかった。事が起きたのはまだ一回のみだったし、話を聞いただけの襲われていない者らすれば、わが身の外で起きたような出来事。大切な仲間の事なので怒ってはいるが、まだ事態を呑み込めていないというか……。もちろん不埒者の集団を捕まえて殺し、今後このようなことがないように取り締まってほしいと伝えはするが、これまで大小こそあるが(いさか)いはあった。今回の訪問は、折角だから久しぶりに皆で挨拶も兼ねようくらいの意味合いも含んでいる。





 地獄は、目の前。

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