2話
数日で体は馴染んできたな。
そろそろ寺に行くか。寺という場所はかなり面白い、僧や坊主と言われる者達は知識が豊富だ。
記憶だけに頼っていると知らないことだらけだ、それにこの体の奴は勉学が苦手だったみたいだからの。
それもあってか、本来寺に暮らして勉学に励むらしいが、家の方針もあって寺に通っておる。
通いはちょっとばかし、面倒ではあるが、面倒なことはそれはそれで楽しいものだ。
寺のが見えてきた。
「森の小僧ではないか、大怪我を負ったと聴いたが大丈夫そうではないか」
森、私の家の名。だが森家、主に当主の従伯父とその父である大叔父は最近新しくなったこの国の主とは折り合いが悪いらしい。
「和尚様、怪我は軽いものだったので問題ありませんでした」
和尚、寺の主が呼ばれる、名称みたいだ。過去の記憶でもこいつそう読んでいた。
「それは良かった。だがお主、少し雰囲気が変わったか?」
「…そうですか?特に何も変わらないと思いますが」
この者達は勘が鋭いな。
「まぁ、よい。とりあえず中に入れ。勉強をはじめるぞ」
寺は大分こぢんまりしているな、だがなぜか落ち着く。この体のせいか?
この寺は浄土真宗と呼ばれる宗教の建物らしい。浄土真宗はかなり大きな宗教らしいが、この寺は末端らしく、小さいらしい。
だが、寺は小さいが大きな宗教なだけあって、この寺には本が多くある。『浄土三部経』という聖典、『庭訓往来』、『貞永式目』と呼ばれる書物がある。中でも面白そうなのが『武経七書』という七つの軍学書だ。
「松丸、やはり変わったな。お主がこんなに勉学に励むとは」
「和尚様、知識を増やすことが面白いことに気付きました」
「そうかそうか、ならば良し」
和尚は微笑みながら、私に様々なことを教えてくれた。本の内容の意味、礼儀作法、浄土真宗の教え。
それだけではなく、この国の状況。
私達森家が住む蓮台は、美濃国と尾張国と呼ばれる国の境にあり、森家は美濃の土岐家に仕えていたが、当主の土岐頼芸は数カ月前に斎藤道三という家臣に国を追放された。
森家は斎藤道三に仕えることを良しとせず、尾張の織田弾正忠家(以下織田家)に仕えようと、交渉をしている最中である。その織田家は当主が代わった事で戦が起こり交渉は先延ばしにされているらしい。
私はとりあえず勉学と武芸の鍛錬に集中するか。




