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つくづく付喪神 Re  作者: 桜鵺
一章:新たなる始まり
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選ばれしものの証。後篇

お久しぶりです…!

色々リアルがバタバタして中々書き出せずに...


今日からまた投稿していければと思います!

 地面を蹴る音が響いた。


「え――」


 考えるよりも早く、椿の姿が目の前から消えた。


 次の瞬間、桜のすぐ横を巨大な刃が通り過ぎる。


「きゃっ……!」


 桜は慌ててその場から飛び退いた。


 椿の振り下ろした大太刀が地面へ突き刺さり、土埃が舞い上がる。


「ほらほら! 逃げてるだけじゃ終わらねぇぞ!」


「そんなこと言われても……!」


 桜はただ逃げることしかできなかった。


 大太刀を振るう椿。


 いつの間にか背後へ回り込む小梅。


 何が起きているのか理解する余裕すらない。


(無理……! こんなの、勝てるわけない……!)


 逃げ場を探しながら、桜は無意識に左手首を押さえた。


 母の形見。


 このブレスレットだけは、絶対に渡したくない。


「……もう、やめて!」


 桜は二人へ叫ぶ。


「私はあなたたちと戦いたいわけじゃない!」


「だろうな」


 椿が大太刀を肩に担ぐ。


「でもな。戦いたくなくても戦わなきゃならねぇ時ってのはあるんだよ!」


 再び、椿が迫る。


 巨大な刃が桜へ振り下ろされた。


(怖い……!)


 逃げたい。


 助けてほしい。


 何でもいいから、この状況から逃げ出したい。


≪……情けないわね≫


「……え?」


 突然、頭の奥で女の声が響いた。


≪逃げてばかり。そんなあなたが私を使おうとしているの?≫


「だ、誰……?」


≪母親とは違う気配がすると思ったら。まさか何も知らない子供だったなんてね≫


 桜の視線が、自分の手首へ落ちる。


 淡い桜色のブレスレットが、かすかに光っていた。


「あなたが……?」


≪私の名前は桔梗。そう呼びなさい≫


「桔梗……」


≪それで。あなたは何のために私を使うつもり?≫


 何のために。


 その言葉に、桜は答えられなかった。


 自分を守るため?


 逃げるため?


 違う。


 桜はブレスレットを強く握り締める。


「……取られたくない」


 震える声で呟いた。


「これは、お母さんが残してくれたものだから」


 椿の大太刀が迫る。


「だから……誰にも奪わせたくない!」


 その瞬間、ブレスレットが強く光った。


 光は桜の右手へと集まり、細く長い形を作っていく。


 次の瞬間。


 桜の手には、一振りの刀が握られていた。


 澄んだ銀色の刀身。


 鍔には花弁を広げた桜の花があしらわれ、淡い薄桃色の柄は、不思議なほど桜の手になじんだ。


 まるで最初から、この手に握られるために存在していたかのように。


「……え?」


「おいおい……!」


 椿の顔が一気に明るくなる。


「マジで顕現させやがった!」


「椿、少し落ち着きなさい」


「落ち着いてられるかよ!」


 椿は嬉しそうに大太刀を握り直す。


「いいねぇ! だったらもう少し見せてみろよ!」


「え、ちょっと待っ――」


 椿が地面を蹴る。


 桜は慌てて刀を構えた。


 キィィンッ!


 金属音と共に、桜の両腕へ凄まじい衝撃が走る。


「うわっ……!」


「おお! 受け止めたじゃねぇか!」


「何なんですか、この人……!」


 桜は必死に刀を握る。


 しかし、戦い方を知らない。


 どう振ればいいのかも分からない。


 椿の一撃を受けるたび、身体が大きく揺れる。


≪だから言ったでしょう≫


 桔梗の声が響く。


≪私はあなたの武器じゃない≫


「そんなこと言われても……!」


 一瞬の迷い。


 その隙を、椿は見逃さなかった。


「甘い!」


 大太刀が桜の刀を弾き飛ばす。


「きゃっ!」


 手の中から刀が離れ、淡い光と共に消えていく。


 次の瞬間、椿の姿が目の前に迫った。


「まだ終わりじゃねぇぞ!」


「椿! やりすぎ――」


 小梅の声。


 そして。


 大きな衝撃が桜の身体を襲った。


 視界が大きく揺れる。


 身体が宙に浮く感覚。


「……っ」


 何かを言おうとした。


 けれど、声は出なかった。


≪……本当に無茶をする子ね≫


 遠くで、桔梗の声が聞こえた気がした。


 次第に視界が暗くなっていく。


「お、おい……。ちょっとやりすぎたか……?」


 椿の声が遠くに聞こえる。


 その声を最後に。


 桜の意識は、深い闇の中へと沈んでいった。

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