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仲良くなりたい -1-


「よ、良かったら敬語やめませんか!?」


 それはなんの脈絡もない提案だった。


 ユザミさんと街を見て回り、部屋に戻ってから数時間。


 現在の時刻は午後九時。食事や風呂など諸々を済ませ、三〇一号室でゆっくりしていた中、ユザミさんからの提案。


「リト様は普段敬語を使われていないと思いますし、その……距離感を感じてて」


「……なるほど」


 目上や初対面の人に敬語を使うようにしているだけで、セシア達に接している時の僕が普段通りだ。敬語で不便に思うことはないけど、ユザミさんから距離を縮めようとしてくれているのなら僕としても嬉しい。


 個人的にユザミさんはイルフみたいに敬語が基本だと思っていたから、友達口調がどんな感じなのか気になるのもある。


「分かりました。じゃあ今からお互いに敬語はなしで」


「は、はい!」


 そういえばセシア達と出会った頃、最初は僕だけが敬語だったな。ツッコみを入れたりしてたら自然に友達口調だったし、おちゃらけた雰囲気じゃないと敬語を取るのは難しかったかもしれない。


 ユザミさんは真面目な人だから、そう考えるとこうして決めれたのは良いことだ


「……」

「……」


 が、敬語が基本だったから敬語を取って話すとなると、これまた難しい。


「名前も……リト、って呼んでいいです——いい、かな?」


「あはは」


 慣れていないのが伝わってくる。今までずっと敬語だったなら、すぐに友達口調というのも難しいか。


「わ、笑わないでくださ……で、ね? よ?」


「ははっ、全部疑問形になってる」


「~~~っ」


 顔を赤らめ、ジト目で睨みつけてくる。


 睨みつけるというのも普段通りならあり得なかったことだから、気持ち的な意味で友達に近づけている気がする。


「じゃあ僕はユザミって呼んでもいい?」


「は——う、うん! そう呼んでくれると、嬉しい」


 敬語だと礼儀正しく、真面目で、お淑やかな印象があったけど友達口調になるだけでかなり変わる。


 なんというか、可愛さを感じる。しっかりしないといけないという意識が薄れているのか、頬を緩ませたり首を少し傾げたり。


 僕が今、感じているのはギャップ萌えだ。自分でもギャップに心をときめかせているのが分かる。


「リト、は……これからどうする?」


「これから……十時からちょっと用事があって出かけるつもり」


「その後は戻ってくる……?」


 戻ってくる、とは部屋のことだろう。十時ともなれば就寝時間であってもおかしくないわけで。


 果たしてこれはどういう意味なのだろう? 十時以降も交流を深める目的なだけか、同じ部屋で寝るという意味なのか。いや、さすがに後者は考えすぎか。


「他の人と寝てるなら大丈夫、です」


 ……まさか、後者だとは。恥じらいを見せて敬語に戻っている様子から察するに、同じ部屋で寝ることのお誘い。


 出会って数日、さっきまで敬語だったのに今日から同じ部屋で寝る。あまりにも急展開な気がするけど、セシア達とも一週間経たずに寝泊まり当番で相部屋だった。


 スキルの影響でそういう面での抵抗が薄れているのか、単純に交流を深めようとしてくれているのか。


 どの道、しばらくセシア達と相部屋は解消されているし、問題ない。



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