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個性的な部下たち

お待たせしました。思った以上に部下のキャラが濃くなったので1話丸々紹介回です。

 魔王城から出た俺は、ライム様に先導されながら、いつもの闘技場まで向かっていた。その道中、ライム様は潜入捜査で得た人間軍の情報を俺に教えてくれた。


「先日まで私は擬態能力を使って人間界に潜入しておりました。そこで集めてきた情報によると、人間軍の先鋒は殲滅将軍ラブ・ハートが務めるそうです。ラブ・ハートについて分かっていることは、彼が極度の魔族嫌いだということと、彼がオネエだということ。そして、恩恵持ちの人間だということですね。よかったですね。かなりの大物ですよ?」


「いや、その情報のどこにもいい要素はないんですけれど⋯⋯」


 そうは言ったものの、事前に戦う相手の情報が手に入っているのはかなり嬉しい。流石魔王軍の諜報活動を一身に引き受けるライム様だ、仕事が早い。


「私としては貴方が殲滅される様を見るのも乙だとは思うのですが⋯⋯。流石に私個人の感情で魔王軍が初っぱなから敗北するわけにはいきませんしね。貴方の下につきたいという変わり者を掻き集めて何とか部隊を作りました。褒めてください」


「部隊を預けてくださるのは素直に嬉しいのですが⋯⋯なんか俺に当たり強くないですか?」


「気のせいです。ええ。決して、ぽっと出の癖に魔王様に気に入られ興味を持たれていることに嫉妬しているわけではありませんので勘違いしないでください」


「え、俺魔王様に気に入られているんですか!? 嬉しいなぁ~」


「チッ!! そういうところですよ!! そういうところ!!」


 無遠慮に舌打ちをしこちらを睨み付けるライム様を見ると、四天王に任命された日のことを思い出す。あの時も確か、思わず胸に視線を向けてしまった俺に舌打ちをしていた。最近は色んな人と友好的な関係を築けていると自負しているので、こういう反応は新鮮だ。かといってあまり嫌な気もしないのは、ライム様が美人だからだろう。


 時々ライム様に足を踏みつけられたりなど色々あったが、何とか無事闘技場までたどり着くことが出来た。すると、何故か闘技場の入り口でククルが仁王立ちで待ち構えていた。


「ククル、お前なんでここに居るんだ? まさか⋯⋯」


「そう、そのまさかだよ。私が1人で待つような女だと思ってるの? 私の居場所はシルバ君の隣。それは戦場でだって変わらないんだから」


 ククルの姿を見た瞬間頭をよぎった悪い予感が当たってしまった。得意げに胸を張るククルはとても可愛いが、戦場に連れて行くつもりはない。何とか諦めて貰わないといけないだろう。


「いや、確かにお前が側に居るのは心強いけれどさ。戦場じゃ何があるか分からないんだぞ?」


「ククルさんは、自分から志願して貴方の隊の副長になられました。もう決まってしまったことなので、貴方に却下する権限はありませんよ? 残念でしたね」


「そういうこと! それに、何かあってもシルバ君が守ってくれるんでしょ?」


 ⋯⋯全く、俺の妻はずるい。上目遣いでそんなことを言われたら、もうダメだと言うことなど出来るはずがない。


 ライム様が舌打ちする音が聞こえてきたが、そんなことは気にせずに、俺とククルはたまらず口づけを交わしていた。


「クソ、なんで私がこいつらのイチャイチャに付き合わなければならないのよ。ねえ、そろそろやめてくれない? 早く仕事を終わらせて魔王城へ戻りたいのよ」


 ライム様は最早口調をただすことすらやめて俺に苛つきをぶつけてきた。まあ、今回ばかりは俺が悪い。これ以上ライム様を怒らせないためにも、俺はククルと手を繋ぎ、部隊の待つ闘技場の中へと入る。

 

 闘技場に足を踏み入れた途端、大勢の視線が一斉に俺に向くのを感じた。思ったよりも数が多い。ざっと見た感じだと300人くらいだろうか? 俺と同じゴブリン族が圧倒的に多いが、オーク族やドワーフ族も混じっている。


 四天王として具体的な活動をしたことはないが、ここでしょっちゅうグレアと格闘訓練をしたりしているせいで、顔と名前は割と知られている方だ。そのせいか、向けられる視線のほとんどが好意的なモノだった。中には、尊敬の眼差しでこちらを見てくる者まで居て、逆に居心地が悪い。


「さあ、既に知っている者も多いとは思いますが、彼こそが今日からあなた方の指揮官となるシルバです。それでは四天王シルバ、彼らに向けて何か言ってあげてください」


 いや、挨拶とか何も用意していないんだけれど!? これはライム様の嫌がらせだろう。動揺する俺を見て、ニヤリと口角を上げたのが横目で見えた。クソ、胸がデカくなかったら今頃蹴り飛ばしているところだ。


 そして、目の前には期待した様子の魔族がずらりと並んでいる。そんな彼らに、今更「すいません、何も用意してませんでした」などとはとてもじゃないが言える雰囲気ではない。俺は、右手に伝わるククルの温もりに勇気を貰いながら、ゆっくりと彼らに向けて自分の思いを伝えていくことにした。


「えー、まずは、俺なんかの部隊に所属することを決めてくれてありがとう。正直、こんなに多くの魔族が集まるとは思っていなかったから、驚いた」


 ここで一旦口を閉じ、全体を見渡す。全員に向けて喋っているのだということを伝えるためだ。既に緊張は解けていた。後に続く言葉は、自然と口からすらすらと飛び出していく。


「俺は、他の四天王と比べたら弱い。それは疑い用のない事実だ。それでも、ここに居る皆を守ることくらいなら出来ると思う。俺と共に戦ってくれると決めた君たちは、既に俺にとっては守るべき大切な仲間だ。だから⋯⋯安心して、俺についてきてくれ!!」


 左腕を高く掲げ、そう宣言すると、目の前の彼らも腕を上げて応えてくれた。うおおおおお!! と歓声が響き渡る。俺の思いに皆が応えてくれたことが嬉しくて、胸がじぃんと熱くなる。


 そんな中で、2人の魔族が俺の前にさっと進み出て跪いた。1人は俺と同じゴブリン。もう1人は、種族こそ分からないが、眼鏡をかけた細身な女性の魔族だ。


「さっきの演説、オイラ最高に感動したっス!! 改めて自己紹介させていただきまっス!! オイラ、部隊長に任命されたゴブリン族の『チャラ』という者っス!! よろしくお願いするっス!!」


 チャラは、茶色のトサカヘアーが特徴的なゴブリンだった。ただ、特徴的なのは髪型くらいで、他は普通のゴブリンとあまり変わらない。体型も下っ腹がぽっこりと飛び出たゴブリン標準スタイルで、正直俺は彼が部隊長とはあまり思えなかった。


 まあ、そうは言っても俺と同じゴブリン族が部隊長なのは喜ばしいことだ。何となく親近感も覚え、俺が「よろしく」と手を差し出すと、チャラは何故か怯えたように頭を地面にこすりつける。


「ひいぃぃ!!? おおお、オイラなんかがシルバ様の手を取るなんて恐れ多いッスぅ!!」


「いや、同じゴブリンなんだし大袈裟だよ」


「シルバ様はオイラたちとは全然違うっスよぉ!! まず、シルバ様めっさ筋肉質じゃないですか!! ゴブリンなのになんでそんなスタイリッシュなんスか!? しかもその白銀の髪の毛!! クソ格好いい!! 男でも見惚れる程ッス!!」


「ええ⋯⋯」


 確かに、普段から身体を鍛えているおかげで他のゴブリンに比べたら筋肉はついていると思うが、チャラが言うほどではないと思う。それに、この髪の毛も生まれつきだし、そもそもこの髪の毛の色から名付けられたわけなので特に自慢に思ったことはない。


 ⋯⋯まあ、隣で力強く頷いているククルを見ると、褒められて悪い気はしないな。よし、こいつには後で酒でもおごってやろう。


 もう1人、眼鏡をかけた女魔族の方は、俺とチャラが話している間ずっと黙って空気と化していたが、チャラとの会話が一段落ついたところでその口を開いた。なかなか空気の読める女性らしい。


「シルバ様、わたくしの方も自己紹介よろしいでしょうか?」


「ああ、もちろんだ」


「わたくしの名前は『ムエ』。この隊の軍師を任されました雌豚でございます。どんな無茶ぶりでも悦んでお受け致しますので、是非ボロ雑巾の如くこき使ってくださいませ」


「ああ、もちろ⋯⋯んん?」


 なんか途中でちょっとおかしな単語が混じっていた気がする。思わず聞き返し、そして後悔する。


 先程まで知的な雰囲気を醸し出していたムエは、今やその雰囲気は見る影もなく、興奮したように息を荒げ、自らの身体を悩ましげに抱きしめていた。


「ああ!! その目!! とてもよいですわ!! 『急に何頭おかしなことを言ってるんだこの雌豚』。そう言いたげな目をしていますわね!!」


「いや、そんなこと思ってないんだけれど⋯⋯」


「ええ、分かりますわ。『そもそも雌豚という割にガリガリじゃねえか』と思っていらっしゃるのでしょう? それもそのはず、わたくしはオーク族でありながらこの体型を維持しております。それもこれも、豊かな体型が好まれるオーク族においてやせ型とは蔑まれる対象である故に!! さらにさらにぃ!? 聞くところによれば我が大将は大きな胸の女性が好みと!! それならばわたくしはきっと蔑まれるはずでございましてぇ!!」


 や、ヤバい。この軍師、キャラ濃すぎるんだけれど⋯⋯。俺こんな濃い部下を指揮しないといけないの? なんか一気に自信なくなってきたんだけれど。


「⋯⋯一応言っておきますが、彼女はこれでも優秀な軍師なのですよ。それは私が保証します」


 ライム様の視線も何となく同情的に見えるのは俺の気のせいじゃないだろう。ライム様に同情されるとか、ムエはどれ程ヤバい奴なのだろうか。ますます心配だ。


「安心してくださいませご主人様。わたくしは被虐趣味故に敵方が嫌がることは分かるつもりでございます。何故なら、わたくしは常日頃自分がされて興奮することを考えております故!!」


 すっかりムエによって呑まれてしまった場の空気をどう修正するべきか。ククルと顔を見合わせてみるもすぐには答えは出てこなかった。


 しかしながら、その後ムエによって出された策は確かにかなり悪辣かつ有効なモノであり、以降俺たちはその策を実践するために訓練に励むことになったのであった。



 

 


次回、いよいよ開戦です。

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