表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/54

第四十三話 孤児院に帰ろう

 ダンジョンから出ると日は完全に暮れており、薄闇が上空を覆っていた。ルマン大森林の鬱蒼とした森林はサキの全力攻撃で吹き飛ばされたため、星明かりが降り注いでいた。


「今、明るくしますのっ」


 サクラの魔法が発動すれば、上空にふよふよと浮かぶ光る球体が現れれば、辺りは照明弾を打ちあげたように周囲を照らす。


「何もないですのっ」

「全力攻撃を放ったからね」


 障壁が張られたダンジョン以外は、衝撃波で根こそぎ吹き飛んだからね。


「障壁が張られなかったらと、想像すると恐ろしいですのっ」


 サクラは体をブルブルッと体を震わせながら口にする。


「うん。障壁が張られたおかげでサクラにも会えたしね」

「そうですのっ!!」


 サクラが頬を染めて抱きついてきたで、華麗に翻して交わす。


「むぅ…。減るもんじゃないですのっ!」


 サクラは口を尖らせで文句を言うけどしょうがない。本能的に身の危険を感じるからだ。


「わたしの冷静さが減ります。もう、早く街へ戻りますよ!」


 わたしはそう言って歩き出す。サクラはしょぼくれながらもサキについてくる。




 街の外壁に沿って篝火が燃え、ダングルフが冒険者を率いて集まっていたが、領主の不在が影響しているのか、甲冑を着こんだ騎士の姿は見られない。


 そして、サキの姿を見つけた冒険者たちは野太い雄叫びを上げる。なぜ、雄叫びを上げたのか意味が分からず、サキは首を傾げるもダングルフの方に歩み近づいた。


「この冒険者の群集は何ですか?」


 わたしはそう言って、冒険者の方に視線を向ける。


「ルマン大森林が消滅したのに、いくら待ってもおまえさんが戻ってこんから念のためにと、配置したのじゃ」


 それを聞いて、魔法付与された武器を持たない冒険者を配置したって、意味ないんじゃないかなと思ったが。


「ご主人様に対しておまえとは何ですのっ! 大和国王の君主に対して失礼ですのっ!!」


 サクラが、わたしの事をおまえと呼んだダングルフへ大声を上げてしかりつけた。それを聞いた冒険者はざわつきだし、ダングルフは慌てたように、わたしへ向かって口を開く。


「ご無礼をお許しください。サキ陛下。そして、その女史を紹介して欲しいのじゃ…欲しいです。」

「わたしの冒険者仲間であり、大和連邦国の宰相を務めているサクラです。それとわたしの呼び名は今まで通りで良いですよ。サクラも良いですね」


 サクラを紹介しつつ、わたしへの態度を戻すように伝える。そして、腕を組んだままのサクラを見つめた。


「ご…ご主人様がそう望まれるのでしたら、何も言えませんのっ」


 サクラが耳をパタリと下げてしまったので、わたしが頭を撫でれば耳はピコピコと嬉しそうに動かす。


「わ…分かったのじゃ。して、指名依頼はどうなったのじゃ?」

「…ダンジョンは健在です。しかし、最下層まで進んでも魔物の姿は見受けられず、教会騎士団の亡骸もありませんでした」

「ふむ…。リッチの脅威はないと判断してもよさそうじゃな」


 ダングルフは頷き、ざわついたままの冒険者たちへ解散するように指示する。

 わたしも疲れているので帰りますねとダングルフに伝えて、孤児院へ向かって歩き出す。


 孤児院に向かっている最中、サクラがわたしに質問してくる。


「ご主人様のお屋敷はどこですのっ?」

「屋敷? 孤児院の一室を借りていますけど?」

「そんなのは、ご主人様に相応しくありませんのっ!!」


 サクラは怒って非難するが、間違っている。


「サクラ良く聞いて。孤児院は神父無き教会です。そして、この世界に遣わしてくれて、サクラにも会わせてくれた神の像を祭る場所ですよ」


 神への感謝はないのですかと付け加えれば、サクラは先ほどの発言をひどく恥じた。

 サクラは耳をペタリと垂らしている。それを見て、わたしは孤児院の現状を説明する。


「――。わたしは、神様へ感謝するだけではなく孤児院を大切にしています。サクラも手伝ってくれますか」

「もちろんですのっ!!」


 サクラは耳をピンっと立てて、力強く言ってくれた。それに、精霊を使役できるハイエルフのサクラが手伝ってくれれば、色々と出来ることが広がるのだ。


 精霊が手伝ってくれれば、農地の雑草取りも、作物の管理や収穫までしてもらえるのだ。それらを考えれば、自然と笑顔になってしまう。


「お腹も空きましたし、早く孤児院へ帰りましょう」

「はいですのっ」


 こうして2人は夕飯の事を話しながら孤児院へ向かうのであった。

読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ