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第十八話 領主からの招待状 その4

 大きな玄関扉の前には、威圧的な門番が立っていた。


「ここは、グルヌイユ辺境伯邸だ。子供が立ち寄る場所ではない。即刻立ち去るように」

「招待状を頂いたのですが、帰った方が良いですか」


 わたしが招待状を見せると、門番はコロッと態度を一変させて「すぐに、案内を呼びますのでお待ちください」と言って屋敷の中へ入って行った。


 しばらく待っていると、白髪をオールバックした渋いおじい様が出てきた。挨拶すれば、おじい様は筆頭執事だそうだ。


「お待ちいたしておりました。旦那様がお待ちです」


 招待状の返事を出さずに直接来たことについては触れられなかった。わたしは応接室へと案内された。




 応接室へ到着すると、すぐに紅茶とお茶受けが用意された。


「旦那様を呼んできますので、お待ちください」


 わたしは進められた席へ座り、さっそく紅茶とお茶受けを頂く。


 用意された紅茶は砂糖なしのストレートティーで、香りは良いが渋みが強く、お茶受けは粉砂糖を振りかけたボソボソするクッキーだった。


 ……貴族のお茶受けでもこのレベルなのか……。


 貴族の館なら美味しい物がだされると思っていたが、実際にだされた物は美味しくなかった。ションボリしているとドアが開き、アブラガエルがグヘェッと汚らしく笑って、わたしを上から下まで隅々まで見る。


「ほう、こやつが……」


 ぞわわっと、足から頭へ鳥肌が立つような気色悪い視線に晒されて、わたしは身構える。


「ほうほう。竜を倒したのは女だと聞いていたが、幼子ではないか。だが、将来が楽しみではあるな」


 汚らしく笑ったままアブラガエルが、わたしの対面へ座る。もう雷落として帰りたい。


「では、竜を差し出せ」

「御幾らで買い取りますか?」

「何を言っておるか。我が領の竜なら我の物と決まっておるだろう」


 ぐふぇっぐふぇっと気持悪い笑い声を上げながら、アブラガエルが早く差し出せを言わんばかりに手を招く。無料で渡すわけないじゃん。


「お断りします。わたしはこの国に所属していませんので、強要されるなら街から出て行きます」

「強情な子供だな。この国に所属してないなら特別に、わしの近衛騎士にしてやるから竜を差し出せ」


 ……このアブラガエル話がかみ合わないな……。


「何が特別なのですか。あなたに仕える気なんてないですよ」


 はぁ、と溜息をつきながら返事をすれば、わたしに出されたお茶を見つめながら、ぐふぇっぐふぇっと笑いながらアブラガエルが口にする。


「我が儘な子供だ。だが、睡眠薬をたっぷり入れたお茶を飲ませたので、薬が効いてから奴隷契約してやる」


 ……行き成り薬を盛るって最低! 鎧に状態異常無効化の付与魔法があるから効かないけどね!!


「このような仕打ちをするのは、ベリエ王国の貴族では当たり前なのですか?」

「ふん。貴族が平民をどのように扱おうが問題はないな」


 ……ベリエ王国の貴族がこのガマガエルト同じ思考なら反乱が起きそうだけど。


「そうですか。ですが、言われるがままには、なりませんよ」

「薬が効けば問題はない。」

「その薬はいつになったら効くのでしょうね?」


 わたしがフフフと笑うと、アブラガエルの気持ち悪い笑みが消えて焦りの表情へ変わる。


「その余裕、出された紅茶を飲まなかったのか!?」

「頂きましたよ。渋みが強かったのは薬の所為ですかね?」

「飲んだのに何故効かない!」


 わたしが、説明するのも面倒だし、生理的に受け付けないから雷落として帰ろうかな。と、思った瞬間にドアが勢いよく開かれた。なんか前にもあったよね。


「グルヌイユ辺境伯。其方を国家反逆罪として処罰する!」


 大声を上げ、ドアから現れたのは、マルクスだった。


「はて。どのような反逆でしょう」


 アブラガエルは、行き成り現れたマルクスに驚きつつも平常心を保とう必死な様子だ。わたしは、言ったのにもかかわらず登場した、マルクスを軽く睨む。が、わたしに目を合わせようとしない。


「他国の君主に向かっての傍若無人な行いだ」

「そのような御方とは、お会いしておりませぬが?」

「其方の目の前に居るだろう」


 驚愕を目にあらわしながらアブラガエルは、わたしを見つめる。まじまじと見つめられて心底気味が悪い。


「このような子供が君主ですか? 御冗談はやめてください」


 アブラガエルの薄ら笑顔に向かって、マルクスは眉を上げて問いかける。


「確証はなくとも、欠損した肉体を瞬時に癒し、魔物の群れを瞬時に殲滅し、単独で巨竜を討伐できる者と争いたいか?」

「……だが、確証がなければ…平民であれば貴族の命令は絶対だ!」


 わたしの行動を間近で見ていたマルクスは、君主であろうとなかろうとも敵には回りたくないらしい。子供だと思って侮っていたアブラガエルは信じたくないのか顔を青くしつつも否定しているが、そんなことはどうでもいいよ。


「あの。既にこの男から睡眠薬を盛られて薬が効いたところで奴隷契約を無理やりしようとしていましたので、大義名分は得ましたよ?」


 薬を盛られた時点で報復フラグが立っている。わたしの発現にマルクスは目を見開くが、判断基準が間違っているのかなと首を傾げて質問する。


「ベリエ王国では薬を盛られても敵対行動とはならないのですか?」

「敵対行動に当たる。だが、この男は我の権限で爵位を剥奪するので国家戦争は許してほしい」

「王子の権限で剥奪できるのですか? まぁ、国として敵対しないのであれば、わたしは平和主義なのでそれでいいですよ」


 マルクスが「……平和主義者?」と、小さく呟いたが聞こえないふりをした。自ら喧嘩売りになんかしないよ。アブラガエルは、爵位剥奪と言われから俯き頭を軽く振りながらブツブツと言っている。


「ですが、敵対行動した者については報復させて頂きますね!」


 わたしは、にっこりとほほ笑みならが、あえて詠唱をして魔法を思い描く『主よ 我の願いを聞き届け 害意持つ者に神の裁きを 主に捧げるのは我の魔力 我が敵に神撃を』魔法が発動すれば、建物内にも関わらず落雷が落ちる。


 死なない適度に弱めた雷撃を受けた、アブラガエルと筆頭執事は気を失う。落雷の音は複数したけど、睡眠薬を盛った者にも落ちたのかもしれない。


「主がわたしの願いを叶えてくれました。雷撃を受けても生きていますので、そちらの国の方で捌いておいてくださいね」


 わたしの言葉を聞いたマルクスは無言のまま頷く。処分結果について報告すると言われたけど正直興味がない。


「わざわざ報告されなくてもいいですよ。では、わたしは出店の準備をしないとなので失礼しますね」


 出店とは何だと、マルクスが呟いたので、子供たちが運営する軽食屋ですよと、伝えてその場を後にした。

読んでいただきありがとうございます。

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