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第十一話 魔物の氾濫 その2

 マップ頼りに討伐隊が居ると思われる場所へ向かっていれば、野営地に着いた。

 あたりを見渡しても、甲冑をガシャガシャ鳴らしながら巡回する騎士たちだけで、冒険者の姿は見られなかった。


 とりあえず着たものの、どうしようと首を傾げていると、声が掛かる。


「子供がなぜ、ここに居る」


 声がした方へ振り向くと、鏡のように磨かれた甲冑を着た男が、怪しんだ目でサキを見ていた。


「ダングルフから指名依頼を頼まれてきました」


 ……単に魔物の群れを討伐してくれと頼まれただけであって、依頼達成条件や報酬などを記載された依頼書も見てないし、受領のサインもしてないからね。


「冒険者ギルド長からの指名依頼だと!?」


 男は信じられないといった面持ちでサキを見つめた。


 ……うん、そうだよね。指名依頼される幼女なんて珍しいよね。


「だが、其方は子供だ。我と共に討伐司令部へ来るように」

「わかりました」


 ……司令部? わたし、部隊指揮したことなんてないよ?


 了承するなり翻した男のあとをついて行き、一際大きい天幕に入ると、甲冑を着こんだ男たちが机の上に広げられた地図を眺めていたが、顔を上げるなり右手を胸に当てて敬礼する。


「「「マルクス団長」」」


 男の名は、マルクスらしい。目以外は冑で覆われており、金色の目であるとしかわからないけど。


「討伐状況を報告しろ」


 マルクスが命令するなり、部下と思われる騎士たちから、次々と報告されていく。


「魔物のレベルが高く。騎士団の精鋭部隊は壊滅。高ランク冒険者によって前線を維持している状態です」

「騎士団で動ける者は、負傷者を回収し、冒険者へ撤退指示させています」

「撤退準備が整い次第、街へ帰還し籠城戦へ移行します」


「我が精鋭騎士団が冒険者に劣り、撤退だと?」


 騎士たちは悔しそうに俯き、マルクスは「嘆かわしい」と、呟く。


 ……騎士団が壊滅状態で、冒険者で食い止めている状態で籠城戦?


 ジリ貧の討伐部隊では街まで撤退しても、壁を突破される可能性もあるし、魔物に農地が荒らされたら美味しい料理から遠のいてしまう。

 マップを確認すると討伐隊は野営地に向かってきており、最前線では孤立している人たちを確認できた。


「マルクスさん、孤立している人達はどうするのですか?」

「救援に出せる人材は残ってない」


 マルクスは苦虫を噛みしめた表情で、みすてる決断を言葉にする。


 ……でも、このまま撤退しても討伐できる可能性は低いし、魔物に農地を荒らされたら困るのよね。


「そうですか、では、わたしは単独で孤立している人を救出してきますね」

「何を言いだすのだ。其方は子供だ!」

「「「そうだ!それになぜ、子供がここに居る!?」」」


 マルクスは、信じられないと目を見開き。騎士たちからも困惑の声があがる。


「わたしはダングルフから魔物討伐を依頼された者ですが?」

「だ、だが、其方は子供だ! 野営地での後衛任務であろう!」

「でも、撤退したら農地を荒らされる可能性があるじゃないですか!」

「……其方は何を言っておる?」


 この状態で農地を心配するサキを理解できない、マルクスや騎士団たちは困惑した顔で黙り込むが、マップを見れば撤退と共に、魔物の群れが迫ってきており、農地を心配するサキには時間が惜しい。


 わたしは、ストレージから布が垂れ下がる簡易脱衣所を取り出しては、その中に入るなり布の隙間から顔を出してお願いする。


「今から着替えるので、覗いちゃだめですよ!」

「「「「……」」」」


 状況を理解できない騎士団は、口をパクパクしてその場で硬直している。


 ……この装備も懐かしいな。国家戦争振りだよね。


 サキが装備するは、銀色のティアラ、蒼い銀色の鎧に、孤児院のスカプラリオをぶら下げ、純白の外套。


 魔銀製のティアラは、惜しげも無く美しくカットされた魔石を、ふんだんに使っている。

 鎧は白く煌き、夜戦には向かないが付与された魔法数は所有している鎧の中で一番多い。

 外套には、大和連邦国の竜と翼、サクラが描かれた盾、王冠などが組み合わされた紋章を刺繍で施されている。

 腰に差した剣は、抜けば薄暗い霧を帯びて、敵を斬れば強化魔法を吸収する。


 着替え終えて、簡易脱衣所をストレージに収納すれば、国家戦争へ赴く装備を身に着けたサキの姿を見てマルクスが声を上げる。


「その装備…其方は何者だ!?」

「冒険者ですよ?」


 指名依頼を頼まれているのだから冒険者でしょ? 何を言っているのか、わからないと首を傾げながら答えた。



わたしはバサリと外套を翻して、外へと向かう。

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