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眼覚めた悪夢 妖精

二話が限界でした。すいません。

 何かが弾ける音と、爆音が同時に轟いた。爆風から逃げることが出来ず、動かない腕の変わりに顔を伏せてやり過ごす。咳き込み、顔を上げる。轟々と、赤が揺らめいていた。

 ・・・・・・・・・エステルが、死んだ。

 悪夢(オッセッスィオーネ)達に一矢報いると言って、自爆した。

 いくら、ゲームで死亡フラグが多いからって、現実までそれをやらなくてもいいと思う。いや、それは私の願望か。ゲーム云々ではなく、悪夢がいる時点で死亡フラグは回避できない。する方法は――――悪夢を倒すこと。

 でも、果たしてそれは可能なんだろうか? 立ち込める黒煙から、無傷ではないが大したダメージもなく現れた暗闇と悪魔を見て、無謀なことだと実感する。

 アレを倒せるなんて、不可能でしかない。どんな無理ゲーだと、失笑した。


「相変わらず、この世界の住人は無駄なことが好きだ」

 呆れながら、暗闇が骨を剥き出しにして血を流す両腕を見下ろす。エステルが命がけで与えた傷も、瞬く間に癒されて無かったことにされた。

「ヴェント」

 暗闇が悪魔の名を呼ぶ。

「その抉れた腹を、姫の器に見せるな」

「もう遅いよ。ほら、姫の器がこっちを見ている」

「ああ、ああ。あんなに顔を青ざめて・・・。ヴェント、早く傷を治せ」

「命令するな、テネブローレ」

 舌打ちをした悪夢の身体から、真黒な翼が現れた。

 あれは魔都・伏魔殿(パンデモーニオ)に住む魔族の象徴たる翼。それを悪夢が持っていると言うことは、暗闇同様に魔族を器としていると言うことで・・・。魔都・伏魔殿はすでに、悪夢によって壊滅させられているかもしれない事実に、身体から力が抜けた。

 もし、それが本当なら悪魔の器は誰だ? 仲間になる魔族を思い出して、唾を飲み込んだ。けど、違う。だって彼女は女で、悪夢はどうみても男。

 女の身体を器に使うとは思えない。


 脳裏に浮かんだ、濃い緑の長髪の、胸元に薔薇の刺青を持つ豊麗な身体をしたレナトゥス・ギルムの姿を消しさる。


 思考を巡らせている間に、悪夢は腹部の傷口を塞いだようでボロ布に相応しい服を脱いだ。翼を出したまま上半身を曝し、にたりと口角をつりあげて笑う。

「しかしまぁ、自爆なんて意味のないことをどうしてやるのか、僕には理解できないな」

 それは違う! 叫びたいのに、声が出ない。

「え? 何、姫の器もそう思うって?」

 口を動かす私に、悪魔が都合のいい解釈をした。首を横に振っても、悪魔は「そうか、無駄死にか。姫の器も中々言うな」なんて、勝手なことを言葉にする。

 エステルが、勝算のないことをするはずがない。ゲームの知識だし、短い付き合いだから確かなことは言えないけど、機械人形たる彼女が無謀なことをするとは思えない。それにゲームだとあの自爆はオルフェ達を救うための物。

 だから何かあると、信じたくない神様に縋ってしまう。祈ってしまった。

 神様なんて本当、無能だ。実在するなら、悪夢を何とかしろ。世界を救え。見捨てるな、放置するな、傍観はやめろ。


 お願いだから・・・・・・オルフェ達を救って。

 祈りは――――届かないと解っている。


 奇跡を起こすのは人間だ。神様ではない。


 だけど、私は眼の前の事実に泣きたくなるほど、馬鹿にした神様に感謝した。

「どうして」

 暗闇が瞠目した。

「興味深いから、全員を解剖しよう」

 悪魔が眼を細め、斧槍を構える。


 先程負った怪我が嘘のように無傷で、その場に立って悪夢達を睨みつけるオルフェ達。

 エステルが、何かしたのかもしれない。そう考えるがの妥当なんだけど、どうやったらオルフェ達の傷を治したのかが解らない。機械王がエステルに何か、回復系のプログラムでもインストールしたんだろうか。

 ああ、いや。それよりも今は―――――無事な姿に、涙が止まらなくて困る。

 俯いて顔を隠すことも、両手で覆うことも出来ずに、私はオルフェ達をただただ、見続けた。生きている。生きていた。その事実に、涙が流れ続ける。

 オルフェが折れた剣を捨て、無手の構えをとった。

「さっきはどうも。・・・おかげで、愉快な気分だ」

 アーシェが両手を突き出し、水の神霊術(アルカナ)にて防御壁を展開させる。

「女の子を引きずるなんて、最低ですねー。そんな輩に、ルキアちゃんは渡しません」

 レーヴェが右手を首にあて、こきりと音を鳴らす。

「ルキアを泣かせた代償を、支払ってもらおうか」

 ロイドがエステルの銃を拾い、両手で構えた。

「エステルの死は、無駄じゃない。無謀でも――ない!」

 ロゼットがエステルがいた場所に、黙祷を捧げる。

「どうか、安らかに」

 シメロンが煙草を咥え、紫煙を燻らせる。

「さっきの礼は、受けてもらうぞ」

 それぞれが、決意と覚悟を込めて悪夢達と対峙する。

 暗闇と悪魔はその姿に愉快そうに笑って、嗤って、表情を消した。暗闇は相手をするのも馬鹿らしいと影に二振りの刀を戻し、悪魔は自殺志願者だと嘲る。


「タダでは死なない」

 そのオルフェの言葉に、複数ある死亡フラグの一つが脳裏に蘇った。

 五体不満足で血溜まりに倒れ、虚ろな眼で空に手を伸ばす死亡スチル。Game Overの文字と共に現れたそれに、熱が消えたように身体が冷えた。

 駄目だ。その思いで首を横に振っても、オルフェには届かない。

「せいぜい、楽しませてくれ」

 悪魔が薄らと微笑み、斧槍を横に薙いだ。それだけで斧槍に黒炎が纏わり、周囲を燃やしつくす。

「ゴミらしく、な」

 駈け出した悪魔に、オルフェ達が警戒を強めた。

 瞬間――――安らかな旋律が響いてくる。

 旋律はオルフェ達の身体を包み、一瞬だけ強く輝くとその存在を消した。その現象に悪魔が足を止め、怪訝にオルフェ達を窺う。反対に、正体に気づいたらしいロゼットが歓喜に声を上げた。

「無事だったのね、シクスト!!」

 ロゼットの声に返すように、琴弾の音色が聞こえてくる。


 私が知る、シクストは一人しかいない。愛称でそう呼ばれる彼は琥珀に近い髪をした、屈強な肉体を持つ職業・吟遊詩人の有翼人。――シクストゥス・バルディティ。

 仲間になるのが難しい彼が使ったのは、おそらく三ターンだけ物理攻撃を無効化するスキル――スリア。


「面倒なことを」

 使われたスキルを解析したのか、暗闇が悪態をついた。周囲に視線を巡らせ、影を使って使用したシクステゥスを探している。そして見つけたのか、ぱちんと指を鳴らした。

 ありとあらゆる場所の影が踊り、無数の刃と化した。

 影は死角へと動き、何かと争う音をさせる。羽ばたく音が聞こえた。凄まじいスピードで上空へと飛ぶ、一つの存在。間違いない、シクステゥスだ。

「鳥が鼠のまねごとか」

 嘲笑し、そのまま影を操ってシクステゥスを狙う。

 非戦闘員の彼に攻撃の術はない。故に、宙を逃げ回るしか出来ない。ロゼットもそれを解っているのか、ひたすらに逃走を呼び掛けている。

「余計なことを・・・。でも、ま。永続効果じゃないなら、手はいくらでもあるしね」

 斧槍を消し、悪魔は口角をつりあげた。

「解剖出来ないのは惜しいけど、消し炭にしよう」

 機械神(デウス・エクス・マキナ)で見た、あの大きな黒い炎。

 先程まで使っていたのとはけた違いの威力を感じて、悪寒が背中を駆けあがってくる。結界術で護らないと、と解っているのに私の声は未だに封じられたまま。何も出来ない無力感に苛まれる。

 オルフェ達も感じ取ったのだろう。ありったけの力で、使えるだけの防御の神霊術を展開させている。シメロンも、空間転移でオルフェ達を逃がす準備をしていた。

 でもそれじゃあ駄目だ。それで防げるほど、逃げられるほど――――悪夢は甘くない。


「さぁ」

 悪魔が歌う様に言葉を紡ぐ。

「甘美な声で鳴け」

 そして炎が―――――放たれた。




 衝撃は、なかった。

 瞠目するオルフェ達とは違い、悪魔は面倒くさそうに舌打ちをして意思を持ったように形を変える炎を手元に戻した。暗闇が近づき、喉を鳴らして笑う。

「ああ、ああ。なんて喜劇だ」

 暗闇が演技かかった動作で、声高らかに告げる。


「風は暗闇の中を自在に駆け、暗闇と共に妖精を呼び寄せた」


 それは、黙示録(アポカリッセ)の一文。

 そしてそれが意味するところは――次なる悪夢の眼覚め。

 オルフェ達に戦慄がはしる。二人にさえ敵わないのに別の悪夢、それも妖精と呼ばれるファータが現れるんだ。万が一も、勝てるはずがない。

 死ぬ覚悟よりも、ここは生きる覚悟をすべきだ。そう訴えたいけど、私の口からは音は出ない。それがもどかしくて、悔しくて、苛立って仕方がなかった。


 炎が膨れ上がり、形を人のそれに返る。子供の体型から成人に変わり、口らしき部分が炎を吸い込んだ。ボンっと、爆ぜる音がソレの内部から聞こえた。

「・・・・・・・・・」

 炎を食って姿を成したそれは、褐色の肌をした青年だった。

 地面に降り立った青年は血で汚れた帽子を拾い、躊躇いもなく被って顔を隠す。炎で作り上げた服を着て、妖精と言う名を汚す存在が仲間の元へと近づいていく。

 その姿に、ロゼットが悪態をついた。

「最悪ね」

 舌打ちをして、オルフェ達を見てから私を見た。申し訳なさそうなその瞳に、ロゼットが逃走を考えていることを知る。首を横に振れば、悔しげに顔をしかめられた。

 ここで戦うのは、正しい選択ではない。

 逃げ切ることが出来るか解らないけれど、逃げることが正解だ。

 今のオルフェ達が悪夢に勝てるとは思えない。ゲームでも結局、悪夢を倒せなかった。変わりに、ノアとシメロンが命を犠牲にして封じ込めたのだから。

 結局は、龍皇と同じ方法をとった。

 でも、それが世界を救う唯一の方法だから。仕方ないと言えば、仕方ない。


 後ろめたさを隠すように、ロゼットがオルフェの腕を掴んだ。唐突のことに瞬くオルフェに、ロゼットは他の仲間の顔を見てから話す。

「逃げるわよ」

「ルキアを置いていけるか」

「ここにいても、無駄死にするだけだって気づきなさい!」

「だが・・・」

 渋るオルフェに、ロゼットが諭すように告げる。

「少なくとも、そう簡単にルキアに手を出さないでしょう」

「・・・・・・しかし」

「ぐだぐだと煩い! 弱い自分が悪いの。悔しかったら、強くなってみなさい!!」

 その言葉に、オルフェだけではなくレーヴェもロイドも沈黙した。アーシェは揺れる瞳で私を見て、ぐっと歯を噛みしめる。

 声が出ないと解っていながら、私は口を動かした。アーシェが、ロゼットが、唇の動きを読み取れることを祈って。

「に、げ・・・て。ルキアちゃん」

 アーシェが読み取ってくれた。そのことが嬉しくて、何度も同じ言葉を繰り返す。アーシェが泣きだした。ロゼットが眼に涙を溜めながら、気丈に振る舞ってオルフェ達に逃げる旨を告げる。

 渋々とだが頷いたオルフェ達に、私はほっとした。けど――――シメロンだけは、頑なに頷かなかった。

 じっと、静かな眼で私を注視したまま。微動だすらしない。


「あー・・・・・・・・・何だろう、この状況」

 のんびりとした声が、ふいに耳に届いた。

「眼覚めて最初に見たのが、男の怒った顔って最悪なんだけど」

 やれやれと首を横に振って、妖精は溜息をついた。

「ああでも、姫に似た子に逢えたのは嬉しいな。ねぇ、テオドール、ヴェント。この子は・・・・・・姫の器か」

 疑問ではなく、確信を持った問いかけに暗闇と悪魔は無言で頷いた。それに妖精は満面の笑みを浮かべ、軽い足取りで私に向かって歩いてくる。妖精が歩いた場所が、炎で燃えた。

 その炎が一つ、一つ、妖精の感情を表すように踊りだす。テンポよく、リズミカルに存在を主張する炎は、妖精が嬉しいと思っているからか? 私にとっては、最悪でしかない。

 轟っと、妖精とは異なる炎が妖精の行く手を阻む。

 炎が来た先を見れば、スキルを発動させたシメロンがいる。これはブリュンヒルドか。妖精に対して効力のない技を、何故? 疑問に思ったことを、変わりに尋ねる声がある。

「俺に炎とは、技の無駄使いだね」

 妖精だ。

 からからと笑って、妖精は進行を阻む炎に手を触れた。そして顔を近づけ、口を大きく開けると美味しそうに炎を食しだす。

「もぐもぐ、俺にとっては、ん、ごちそうだ」

「ああ、知っている」

 食べ続ける妖精に、シメロンが別のスキルを発動しようとした。それをロゼットが身体を張って止める。

「何考えてんのよ、馬鹿!」

「邪魔だ、退け」

「ここで無駄に命を散らせたいの! 馬鹿なの、阿呆なの、死ぬの!?」

(ルキア)のためなら、死ぬ」

「こ・・・の」

 ロゼットが怒りに身体を振わせ、ヘイムダルを使ったシメロンの腹部に渾身の一撃をお見舞いした。油断していたシメロンは眼を丸くし、腹部を押さえて地面に膝をつく。


 ヘイムダルを放たれた悪夢は、軽い動作でそのスキルを消滅させた。ゲームでもよく使っていた、混沌と呼んでいたスキル。

 ありとあるゆる神霊術を、戦略技能(タクティクス・スキル)を無効化する最早、チート技。多くのユーザーに絶望を与えたそれを、カウンターとして行った悪夢達は冷笑してオルフェ達の高度を見ている。それは、何時でも殺せると言う余裕の証拠。意思表示。


「ええい、シクスト! まずはアンタが先に逃げて!!

 ロゼットは未だ、影に追われて上空を逃げ惑うシクステゥスに向かって叫んだ。彼は返答することなく、その場から隼を連想させる速度で離脱した。

 悪魔が残念そうに、肩を竦める。

「不様に逃げるのもまた、ゴミらしい」

 笑って告げた言葉とは裏腹に、表情は怖いほどに冷ややかだ。

 暗闇が一歩、前に出る。反応してオルフェ達が警戒するが、それを気にかける様子もない。放たれた雷の神霊術や火の神霊術も影を使って回避し、のんびりと歩を進める。そして、唐突に足を止めた。

「逃げるなら逃げろ」

 告げられた言葉に、オルフェ達が戸惑った。

 妖精が楽しげに笑って、足を暗闇の方へ向けて歩きだした。暗闇の肩に腕を乗せ、からかうように喋る。

「何、助けるの? ここで殺した方が、優しいと思うのに。テネブローレったら酷いわねー。姫が知ったら、悲しむんじゃなぁい?」

「黙れ」

 肩に乗る妖精の腕を払い、暗闇は視線をオルフェ達から私へと移した。その眼に、隠しきれない狂気が見える。


「そいつらを殺すのは姫の器だ。ここで殺しては、意味がない。姫が眼覚めない。それは駄目だ。姫を蘇らせるために、そいつらは姫の器に殺されなければならない」


 だから、この場から逃がす。そう告げる暗闇に、一切の慈悲は見られない。

 オルフェ達に逃げろと言ったのも、下手に攻撃されて手加減が難しいから。それでオルフェ達を殺しては、意味がない。そう言いたいんだろう。

 姫を蘇らせるには、姫の器である私の心を壊さなければならない。――――オルフェ達を殺せば、確かに私の心は壊れるだろう。

 暗闇は、それを求めているのだ。いや、暗闇だけではなく、悪夢全員が。


「なーるほど。相変わらず、テネブローレは姫一筋だねー」

「君もだろうが」

「そりゃ、そうだ」

 真剣な声で同意した妖精は、不敵な笑みを浮かべてオルフェ達を見た。

「ほら、逃げなよ。不様に逃げて、姫の器に恨まれろ。負の感情を抱かせろ。そして――――殺されろよ」

 ぞっとするほどの冷たい声で告げた妖精に、オルフェ達は何も言わない。

 逃げることに負い目を感じているからか。だとしたら、気にしなくていい。そんなことよりも、今は生き延びて欲しい。そう思うのに、オルフェ達はその場から動こうとしない。

 シメロンがロゼットを押しのけ、前に出た。

「っ」

 けれど、何かを言う前にシメロンの身体は前に倒れ、そのまま起きることがない。まさか悪夢が何かしたのかとそちらに眼を向けるが、彼らも突然のことに瞬いていた。

 悪夢は関係ない・・・? なら、どうしてシメロンは倒れたんだ?


 困惑するオルフェ達に、ロゼットが倒れたシメロンを指差して告げる。

「今のうちに逃げるわよ。幸い、あっちも逃げろって言ってることだしね!!」

「いや、それよりも・・・これはどう言うことだ」

 レーヴェの問いに、ロゼットが苛立ったように答える。

「上を見る!」

 言葉に従い、上を見れば逃げたはずのシクステゥスに抱えられた青い長髪の女性がいる。光加減で色を変えるその髪。遠目で解らないが、華奢で色白な清楚な印象を与える彼女はまさか・・・。


 否、この場面でどうして、レーヴェの嫁候補であるアニマ・レンガルトが現れる?!


 だが、アニマの存在でシメロンが倒れた訳も容易に悟った。十中八九、アニマのスキルである子守唄によって、強制的に睡眠状態にされたのだろう。

 ロゼットも同じことを叫び、オルフェにシメロンを抱えるように命じて我先にと逃げ出した。アーシェがちらりと私を見てから、前を見て迷うことなく走りだす。オルフェやレーヴェ、ロイドも私を見てからその場から駆けだした。

 悪夢達が、不様だと笑う。滑稽だと、罵った。その言葉に、血が出るほどに手を握り締める。敵前逃亡を選んだオルフェ達を、侮辱されたのが腹立たしい。


「さて」

 オルフェ達の姿が完全に見えなくなった頃に、暗闇がそう呟いた。くるりと視線を私に向け、悪魔と妖精を伴って私に近づいてくる。逃げることは――――出来ない。

「行こうか」

 伸ばされた手を、払う術もない。


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