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再び

R15なのかもしれない、と思ってちょっと変えました。これってR15・・・かな?

 温泉が眼の前に在るのに、入ることが出来ない。

 エルフと有翼人の王に逢うのが先だって解っているけど・・・。温泉街らしき場所を歩きながら、私はがっくりと項垂れていた。隣を歩くアーシェも力なく、肩を落としている。そうだよね、入りたいよね、温泉。

 ロゼットが言った、後でに期待しよう。


 そうそう、そのロゼットだけど・・・。先程のエルフ王おじいちゃん発言に対して、誰も何も言わなかった。興味関心が薄いらしく、オルフェが「どうでもいい」と実に簡潔に告げていた。

 ロゼットも予め、予想したいたのかあっさりと涙を引っ込め、「嘘泣きに動じないとか、ありえない」って文句を言っていたなー。君、オルフェと恋愛フラグをたてたくないくせに、そう言うことはやるのね。少し、呆れた。

 真実、ロゼットがエルフ王の血縁者なのかどうかは、オルフェ達には心底、どうでもいいと言うのがよく解った。いや、どうでもよくないんだけどね。

 王様の血縁者に、非礼や無礼が多かったことを考えると戦々恐々だけどさ。


 それはともかく。


「お久しぶりです、ごきげんよう」

 眼の前に突如として現れたエステルに、どう反応を返せばいいんだろう。

 最後に見た時よりもやけにボロボロで、露出した肌が傷だらけなんだけど。アーシェが心配して、水の神霊術(アルカナ)をかけようとした。が、それをやんわりと断ってエステルがのほほんと笑う。

「こんな所で逢うなんて、奇遇ですね」

「奇遇も何も、機械王の命令で来たんでしょ?」

「これも何かの縁、私も一緒に連れて行ってください」

 華麗にロイドの言葉を無視し、エステルは私の手を掴んで微笑んだ。何故に私に聞く。オルフェに・・・いや、ロイドに聞いて。

 私は二人のじゃれあ・・・ごほん、話を聞いているから。

「駄目ですか?」

「別に・・・いいけど」

 悲しげな顔で、下から見上げるように顔を覗きこまれたら駄目だ。くそう、美形って何をしても絵になる。と言うか、捨てられた子犬のような眼は駄目だって。これに弱いんだから、私。

 承諾した私に、エステルが嬉しそうに笑った。気のせいか、周りに花が浮かんでいるような・・・。あ、現実に舞っている。どう言う原理で現れた?!

 ロイドが何とも、奇妙な者を見る眼でエステルを見ていた。やめて、未来の嫁候補にそんな眼を向けないで。

 そんな視線など気にしていないのか、エステルは私の手を掴んだまま、意気揚々に歩きだした。シメロンが、嫌そうに顔をしかめたけど・・・・・・・・・これぐらい、許せよ。

「さぁ! それでは参りましょう」

 どこに行くつもりなのか、私達が来た道を戻っていく。もしもし、エステルさん。そっちには食べ物関係のお店しかないよ。ロイドが慌ててエステルの腕を掴み、必死に方向転換させている。

 頑張れ、未来の夫。嫁候補のことは任せた。


 他人任せ、万歳。

 失敬、本音がもれた。





 なんてことを思った罰だろうか。

 だとしたら神様、私はアンタに呪いをかける。無能にも程があるだろうが。と悪態をつきながら、眼の前に前触れもなく現れた暗闇(テネブローレ)に私達全員が身体を強張らせた。

 建物の影からすっと現れた暗闇は、周囲にいるエルフや有翼人を瞬く間に殺して辺り一面を血の海に変えた。それを満足そうに見てから、暗闇は私を認識すると薄らと笑って。

「さぁ、姫の器。私達(おれ)がいるべき場所へ、共に行こう」

 血色の悪い手を伸ばし、やけに甘い声で私へと囁いた。


 生き残ったエルフや有翼人が現状を理解し、悲鳴を上げて恐慌状態で逃げる姿を暗闇は静かに見送った。

 おかしい、と思ったのは即座に戦闘態勢に入ったオルフェ達だ。怪訝に暗闇を凝視し、そしてまったく動かない理由を聞こえてきた悲鳴によって知ることになる。

「逃げるしか能のない、ゴミ虫が。不様に死ぬ姿は見るに堪えないな」

 くつくつと喉を鳴らして笑う、青年の声。断続的に響く断末魔に、これを起こしているのがその青年だと理解できる。だが、あれは誰だ? オルフェ達も知らないその存在に、 私とロゼットはまさかと顔を青ざめさせた。

 ロゼットが、引きつった声で名前を呼ぶ。

「・・・悪魔(ヴェント)

 身体を操ることなく、自らの手で命を刈り取る青年は機械神(デウス・エクス・マキナ)で見た時とは異なる姿をしていた。悪夢は自在に姿を変えられることを思い出せば、当然か。

 しかし――――現状は、最悪の一言だ。

 一人でも厄介な悪夢(オッセッスィオーネ)が二人も現れ、逃走することすら出来ない。

「見学は、終わったか?」

「終わったよね。楽しそうに、ソイツらと回っていたようだし」

「ずるい、ずるい。私達(おれ)を放って、そんな奴らと楽しそうにするなんて」

「だけど、それもこれまで」

「そう、そう。これで終わり」

「姫の器は僕達と共に行く。さぁ、手を取れ」

「それ以外の選択なんて、ありはしない」


 暗闇と悪魔が交互に話、不敵に笑った。

 その間にも、逃げ惑うエルフと有翼人達を殺していく。暗闇は影を操り、悪魔は黒炎を操って次々と死体を積み上げていく。元の色が解らないほどに、建物が赤く染まる。

「ゴミは消えたか」

「いやいや、残ったゴミがいる。ほら、姫の器の近くに」

 くすくすと笑う悪魔が、冷やかな視線をオルフェ達に向けた。

「力の差も解らず、無謀にも得物を向けるか。笑える、笑えるな」

 喉を鳴らして、暗闇が笑った。影を操り、最後のエルフの四肢を散らせる。一瞬にして絶たれた命に、悲鳴はなかった。

 暗闇がゆらりと、身体を動かしてこちらに近づいてくる。

 ロイドが威嚇射撃をするも、意に介した様子がない。

「穿て、狩人の牙」

 銃口を暗闇に固定し、引き金を三度引いた。

 戦略技能(タクティクス・スキル)――魔弾を発動させた。

 無数の弾が天上より現れ、闇の付属攻撃の銃撃が暗闇を襲う。しかし、予想通り暗闇は軽やかな足取りで容易に避けてしまう。

 それにロイドが悔しがる素振りを見せず、後ろに跳躍する代わりにオルフェとレーヴェが前に出てきた。抜刀の体勢をとったオルフェはそのまま剣技スキルの一閃を繰り出し、暗闇が身体を捻って避けた所をレーヴェが追撃する。


「死に抗うな」

 回避不能の即死効果のついた剣技スキルを発動させ、レーヴェの大剣が暗闇の身体を突き刺す。大剣を刺したまま暗闇の身体を後ろに蹴り飛ばし、壁に固定した。即座に、アーシェがスキルを使用する。

「零度の世界に堕ちて」

 空気中の水分を集めて絶対零度に凍らせ、対象を凍死させる氷結スキル――エーギル。

 暗闇の身体をレーヴェの大剣ごと即座に氷結させ、周囲まで凍らせたスキルを見て、悪魔が楽しげに笑った。

「中々面白いものが見れたけど・・・それだけか?」

 悪魔がちらりと暗闇を見て、すぐに視線をオルフェ達に戻した。その表情はやはり、余裕そのもので。この状況を見てもなんら動じていない。

 ・・・悪夢(オッセッシィオーネ)が簡単に殺せたら、龍皇も封印なんてまどろっこしい手は使わない。

 その証拠に、暗闇が何事もなかったように氷を壊し、大剣を抜き、悠然と地面に足をつけた。服についた埃を払い、緩慢に悪魔の傍に近づいていく。

「前と、違う」

 オルフェの言う通り、前は身体を損なったことで暗闇はその場から姿を消した。だと言うのに、今回は血を流すどころか身体に傷一つついていない。

 ロゼットが舌打ちをし、オルフェ達の前に躍り出た。

「私の踊りは高いわよ」

 踊りによって味方の攻撃力・防御力を上昇させる補助スキル――鼓舞を発動させ、オルフェ達に檄を飛ばした。


「悪夢なんだから、これぐらいでうろたえるんじゃない! 今ので無理なら、さらに攻撃回数を増やせばいいだけの話でしょう!!」

「結果は変わらないと思うけど」

「煩いわよ!」

 噛みつかんばかりに怒鳴って、ロゼットは息を吐きだした。幾分か冷静さを取り戻したのか、射抜く眼で暗闇を凝視する。

「その身体・・・。やけに再生能力が高いわね。まさかとは思うけど、エルフ王の身体――なんて言わないわよね?」

 衝撃がはしったのは、私と悪夢を除いた全員。

 まさかと思い、考えないようにしていたけれども。私はありえないと、否定を口にするロイド達とは逆に口を閉ざした。

「エルフは自然治癒能力が高く、ちょっとの傷ならすぐに再生させてなかったことにする。エルフ王はそれが他のエルフよりも並はずれて高く、不死身と称しても間違いがないほどだったわ・・・」

「そう言えば、前の時もエルフの身体を・・・器にしていた」

「どうりで最近、同族の数が行方不明になる事件が多いはずよ」

 ロゼットが忌々しそうに舌打ちをして、憎悪をこめた眼で悪夢達を睨みつけた。


「エルフの身体、勝手に使ってんじゃないわよ」

 殺意を押し殺した声で、冷やかにロゼットは告げた。

「死人のくせに」

 その言葉に、悪夢達が僅かに反応を示した。


 意味が解らないオルフェ達に構わず、ロゼットがシメロンの名を叫んだ。

「ルキアを連れて、どこか遠くにでも逃げてなさい! 邪魔!!」

「言われなくても」

 シメロンが私を抱きかかえ、空間転移でこの場から離脱を図る。

 歪み、裂けた空間。

「逃げるなら、姫の器を置いていけ。生贄」

 そこに飛び込もうとした瞬間を見計らって、悪魔が黒炎を放った。炎は豹の形をとり、唸り声をあげてシメロンに襲いかかる。シメロンは咄嗟に私を放り投げ、防御態勢をとったシメロンを救ったのは、エステルの銃だった。

 エステルは白と黒の二丁銃を構え、油断なく炎の豹を見据える。大きく息を吸い込んだ。

「轟け、震え、大地よ喰らえ」

 地面を陥没させ、大地の槍で持って対象を刺し、閉じ込める大地スキル――フリスト。

 炎の豹ではなく、対象を悪夢達にしたそのスキルに興をつかれたのか、暗闇も悪魔も慌ててその場から飛び去った。土煙が上がる中、銃声が四度聞こえる。そして響いた、獣の断末魔。

「跳弾から逃げることは無理です!」

 エステルは土煙が晴れるのを待たず、次のスキルを発動させる。


 風の付属攻撃を持つ、不可視の銃撃スキル――トリックスター。

 引き金を何度も引き、空になった弾薬を捨てて新たに装填してまた引き金を引く。それを何度も続け、回避する場所を失くす。都合よく、土煙が晴れた。

 エステルが二丁銃に魔力を込め、弾薬が尽きるまで引き金を引き続けた。

 薬莢が地面に転がり、硝煙が上がる。

「ぼさっとしていないで、追撃してください!!」

 怒鳴られたオルフェ達が駆けだし、レーヴェが土の神霊術(アルカナ)でオルフェ達の防御力を上げた。アーシェが水の神霊術で、永続的な回復をかける。

 オルフェが地面を蹴った。

「壊れろ」

 オルフェが持つ剣が、赤黒く色を変えて生きているように脈打った。

狂化することで攻撃力を上げ、HPを犠牲に連続攻撃を行う剣技スキル――ダーインスレイヴ。

 理性をなくした眼で悪夢達を見やり、オルフェは怒涛の勢いで範囲攻撃を行う。それでも、悪夢達にはダメージらしきダメージを与えていない。未だに――余裕だ。

 その証拠に、シメロンが空間転移をするのを影や炎の豹で何度も阻んでいる。応戦するシメロンは非戦闘員故に、深手ではないが傷を負っていた。

 

 ロイドがグレイプニル、ノルンとスキルを使う。

 レーヴェが大剣を回収し、前衛に復帰した。

 アーシェが水の神霊術で仲間を癒す。

 ロゼットが再度、鼓舞にしてサポートする。

 エステルがトリックスターを使った。


 私は、何をしているんだ。

 戦闘区域ではない場所で、戦う姿をただ見ているだけ。結界術も使わず、傍観している。私のすぐ傍で、シメロンが戦っているのに。私の意思と反して、身体が動かない。物理的な拘束は見当たらないのに。何故と思うよりも、シメロンの悲鳴が聞こえて思考が霧散した。

 シメロンの腕に炎の豹が噛みつき、熱でもって肌を焼いている。力任せに炎の豹を地面に叩き付け、シメロンが空間転移でその場から逃げ出す。

現れたのは――――――悪夢達の背後。

 ボロボロの身体で、忌々しそうな顔で悪夢達を見てスキル――ヘイムダルを放った。


「残念」

 ヘイムダルが直撃する寸前で、悪魔が不敵に笑った。

「遊びは終わりだ」

 暗闇が、指を鳴らした。


 何があったのか、解らない。

 言えることはただ一つ――――悪夢は殺せない。

 放たれたはずのヘイムダルは姿を消し、戦っていたオルフェ達が力なく地面に倒れている。その身体から、真新しい血が流れ続けて・・・。顔から血の気が引いた。

「―――――っ」

 今すぐ駆け寄りたいのに、身体がぴくりとも動いてくれない。

 エステルの指がピクリと動き、シメロンの呻き声が聞こえた。それ以外は、聞こえない。でも、僅かに上下する身体から生きていることは解った。それに安堵は、出来ない。

 悪夢達がのんびりと歩を進め、何を思ったのか暗闇が仰向けで倒れるオルフェの前で足を止めた。無造作に足を上げ、力任せに身体を踏みつけた。骨が折れる音が聞こえ、オルフェが苦悶の悲鳴を上げる。

「ゴミはゴミらしく、不様に死んでいろ」

 冷やかに告げて、暗闇がオルフェの顔を蹴り飛ばす。次いでとばかりに腹部を踏みつけ、喀血したオルフェをせせら笑って見ている。

「いいな、これは。アイツが喜びそうな――器だ」

 悪魔がアーシェの顔を見て、にたりと笑う。

「ついでに、持っていこうか。アイツに貸しを作るのも、悪くはない」

 うつ伏せで倒れるアーシェの右腕を掴み、そのまま引きずって私に近づいてくる。傷口から流れ続ける血が、ただでさえ赤い地面をさらに染め上げた。


 暗闇がレーヴェの身体をなぶる様に、傷口を狙って蹴りを繰り出す。悪魔が銃を持つロイドの手を狙い、骨が折れても執拗に踏み続けた。――――飽きたように、次の獲物に向かう。

 暗闇がロゼットの髪を無造作に掴み、手加減なく頭を何度も地面に叩き付けた。悪魔がエステルの右腕を楽しそうに千切り、機械人形だと言うことに失望して黒い炎で両足を燃やした。


 どうして私は、何も行動しないんだろうか。

 結界術を使えば、オルフェ達があんな風な眼に遭うことはなかったのに。動けないからなんて、言い訳にもならない。「かごめ」と声に出せば、結界術を簡単に展開できるのに。

 なんで言葉が、喉から出てこないんだ!


「困惑しているね、姫の器」

 アーシェを引きずったまま、悪魔が告げる。

「それも当然だな」

 シメロンに近づき、首に手をかける暗闇。シメロンが意識を取り戻し、必死に抵抗する姿を楽しげに笑って見ていた。手に力をさらに込め、そして悪戯に緩める。必死に呼吸するシメロンを、暗闇が頭を殴って気絶させた。

 暗闇が立ちあがり、私を見て笑った。

「声を封じれば、力を使うことが出来ないのは当然だろう?」

「逃げられないように、身体の力を奪うのも当然だ」

 歌うように告げた悪夢達の言葉に、愕然とする。

 一体、いつ、そんなことをしたのか。――なんて、考えるだけ無駄だろう。

 相手は悪夢だ、時間なんて・・・関係ないんだろう。

 今までこの手を使わなかったことの方が、ありえないんだ。そして今、この場で使ったと言うことは、本格的に私を姫の器として連れ去るつもりで。

 どうしようもなく、身体が震えた。

 吐き出す息が荒く、冷や汗が滝のように流れる。

 助けてと縋る相手は――――いない。


 暗闇がシメロンから離れ、私に近づいてくる。ゆっくりとした歩調。それが殊更、恐怖を倍増させた。

「さぁ、姫の器」

 暗闇が、腕を伸ばす。

「一緒に行こう。そして――――永劫に、生き続けよう」


 銃声が響いた。

「させません!!」


 両足を失くしたエステルが、左腕で銃を撃ったようだ。千切られた右腕からスパークがはしり、機械部分が見える。

「その方は主様による、最優先守護対象です。如何なる者も、私が動いている間は触れることを許しません」

 身体中から火花が散り、今にも壊れそうなのにエステルは倒れた体勢で何度も引き金を引いた。当たらないと解っていても、何度も、何度でも。馬鹿のように銃弾を放つ。

 暗闇が飽きたおもちゃを見る眼で、エステルを一瞥する。

廃棄処分(スクラップ)が」

 言って、暗闇が影から二つの刀を生み出しながらエステルに近づく。

 悪魔も何を思ったのか、アーシェを放してエステルに近づいて行った。その手に、斧槍を持って。

記憶媒体(コアメモリー)すら残さず、闇に消えろ」

「わざわざ、死期を早めるなんて悪趣味だな」

 不快を表す暗闇と、作り物めいた笑みを浮かべる悪魔。

 両者から殺気を向けられているはずのエステルが、穏やかに笑って私を見た。左手に持っていた銃を落とし、手を頭部に近づける。

 嫌な予感がした。

 あれは、ゲームで見た・・・・・・エステルの自爆スチルの場面に似ている。

 ありえない。だって、あれは・・・ロイドの好感度が高い代わりに選択とルートミス、一定以下の勝利回数によって起こる死亡フラグだ。

 好感度も、選択もルートも、何一つ発生していない状況なのに何で!


 これがゲームじゃなくて、現実だからだ。やけに冷静な思考が、私に告げた。


「一矢、報いるつもりです」

 台詞まで、ゲームと同じ・・・。

 エステルが銃の形に似せた指で、頭を撃つ仕草をした。ああ、カウントダウンが始まってしまう。

 それを知らない悪夢達が、エステルの身体を切り裂いた。バラバラになる、エステルの身体。宙を浮く首が、無機質に私を見つめる。責めているのとは違う、困ったような顔。そう見るのは、私の被害妄想だろうか。

 エステルの首が、地面に落ちた。


そして――――――周囲を巻き込んで爆ぜた。


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