想定外の状況 2
お気に入り、ありがとうございます。未熟者ですが、どうかよろしくお願いします。
予定通り、更新できました!
――キャラ崩壊、怖い・・・。
どうしてこうなった。
昔のピセルはもっとこう・・・・・・穏やかで優しい感じがしたんだけど。記憶が美化したのかな?
小さい頃は皆、ドラマCD通りの性格だったのになー。ゲームでもそのまんまの性格・・・に、少しスパイスが加わったような感じだったな。
スパイスが加わりすぎると、キャラ崩壊を起こすのか。
本当、どうしてこうなった。謎すぎる。
謎と言えば、もう一つ。
「もう大丈夫。私が貴方を守るわ。・・・家族だもの、当然よ」
って、ピセルを必死に止めた時に言われた台詞、ゲームにもあったな。私に、じゃなくてオルフェに言っていたけど。
流石はオルフェの嫁候補の中で一番、強く、逞しく、しっかり者の頼れる姐御肌。台詞がカッコいいって、女子高校生の私が悶えていたな。
女子高校生の私につられて、うっかりとときめいてしまった。
私、ソッチの趣味はないはずなのに・・・。
これは絶対、ゲームの台詞を言われたからだ。女子高校生の私がその言葉に反応し、かつて抱いた感情が蘇ったに違いない。
まったく、変な所でゲームの設定を使わないで欲しい。
危うく、ソッチの趣味だったのかと自分を疑いかけたよ。
・・・・・・・あ、でもゲームとはちょっと違ったな。
スチルで見たのは一点の曇りのない瞳で、やけに真剣なピセルだったけれど、さっきのは、その、・・・背後に黒い何かを背負っていたな。声も怒気が混じっていて・・・怖かった、怖かったよ。
思いだして涙が出てきそうだ。
「・・・・・・・・」
同情の眼差しをくれるメイドさんから新しい紅茶を淹れてもらい、ちびちびと舐めるように飲む。
あー・・・、紅茶が美味しい。
「諜報部からの情報だが、他国でも雪の呪が発病しているそうだ。まったく、六つの悪夢でも眼覚める予兆か?」
「ふ、ふふふふふふふ不吉なことを言わないでくれ!! あああああああ、あ、悪夢なんて、ただでさえ夢見が悪いのにぃぃぃ」
「いえ、そっちの悪夢ではなくて・・・。まぁ、いっか」
完全にプライベートモードになったカリスは砕けた口調で、さらりと情報を漏洩する。それを弱気に戻ったラルフレアが変に受け取り、ロイドがツッコミをいれようとして諦めた。
いや、ロイド。諦めないで、修正しよう。恥ずかしい思いをラルフレアがするから。ああ、もう。紅茶を飲みながらそんな生温かい視線を向けない。
ふいに、ラルフレアが何かを思い出したように呟いた。
「あ、そ、そそそそそ、そう言えば雪の呪に罹った彼らは、ど、どどどうなった?」
・・・おい、自国の民のことを忘れるな。雪の呪に罹った人間のことを、あっさりと忘れてくれるな!!
ほら、メイドさんが額に手を当てて、呆れたように首を横に振っているよ! ロイドだって、頬を引きつらせて乾いた笑みを浮かべているじゃないか!!
君も罹るかもしれない病のことを、忘れないでっ。
「それは、俺よりピセルに聞いた方が早いぞ」
カリステゥスは肩を竦め、新しく茶うけにだされたクッキーを一枚つまみ上げた。大きな口を開け、クッキーを一口で食べると、咀嚼しながらそう告げる。
行儀が悪いよ、カリステゥス。
アーシェが腰に両手をあて、行儀の悪さを窘めだした。・・・お母さんか。
そしてそれを見るテオ。君は、温かい未来予想図でも脳内に描いているのか? 顔が真っ赤だし、天にも上りそうなほど顔が緩んでいるけど?
白けた眼でテオを一瞥してから、私はラルフレアの背後に立つピセルを見上げた。気のせいか、隣にいるカリステゥスの脇腹を肘鉄したように見える。
まぁ、いいや。カリステゥスが痛みに悶えているようだけど、無視しよう。
「街の人間、どうなったんだ?」
私の左側の席に座ったオルフェが、私の肩口に顎を乗せながら口を開いた。顎が肩に刺さって、地味に痛い。抗議のため、オルフェの額を軽く小突いた。
「そう・・・ね」
ピセルはオルフェを一瞥し、ラルフレアに視線を向けた。その表情に、先程の怒りは見受けられない。
よかった、落ち着いたみたいだとほっと安堵した。
「こちらで雪の呪に罹った人間は皆、王冠病院に集結しました。今のところ、記述された通りの症状が出ています」
「体力・免疫力が著しく低下し、体温を奪う不思議な奇病。記述通りか」
「はい。それ以外の症状は一切、見受けられませんでした」
レーヴェの言葉にピセルは頷き、何故か、そう、本当に何故か妙に良い笑顔で次の言葉を口にした。
「彼らは皆、禍が災厄を呼び寄せたと喚いていました。・・・煩いので、医者に命じて薬を注射して頂きました」
ピセル・・・ピセルさん。
笑顔で毒を吐かないで。怖い台詞は止めて。
ほら、ラルフレアが恐怖に震えているから。怯えた視線をピセルに向けていることに気づいて。可哀想なほどに青ざめて、ソファにへばり付いているから!
よくやったって言わないで、オルフェ!! ああ、レーヴェも称賛しないで!!! って、ロイドも無言で拍手をしないっ。
アーシェがピセルに近づき、輝かしい瞳を向けて微笑んだ。
「素晴らしいです、ピセル姉さん!!」
「ふふふ、ありがとう」
褒められることじゃない・・・よね?
アーシェ、アーシェさん。よく考えて言葉を発して。ピセルも満更でもなさそうに微笑まないで。その笑顔は綺麗だけど!!
「ピ、ピピピピセル・・・」
ラルフレアが不安げにピセルを見た。
そうだよね、そうだよね。心配だよね、自国の騎士が民に煩いからって注射を打つなんて。一体、なんの注射を打ったのか、気になるよね。
――とりあえず、毒薬じゃないとは思う。
毒薬だったら、さっきあんなに急いで街の人間を滅殺しようとしないはずだし。 なら、何の薬を注射したんだろう?
・・・・・・・・・睡眠薬? 過剰摂取は死に至ります!!!
「大丈夫です。投与したのは睡眠薬ですので。死にません」
睡眠薬だった!!
「そ、そそそそっか・・・なななならいいや」
いやいやいやいや、ちょっとまて! よくない、よくないから!! カリステゥスも笑ってないで、注意しろよ。いや、煽るな。ピセル達を煽る発言しないでぇぇぇぇええぇ!!
もう嫌だ・・・。
これ、キャラ崩壊どころの話じゃない。
表情筋を変えなかったメイドさんすら、頬を引きつらせて青ざめていたのが印象的だ。
「どういたしますか?」
傍観していて、口を一切出さなかったテオが、唐突に言葉を切りだした。主語のない台詞に、私を含めて全員が首を傾げる。
「他国でも雪の呪に罹った者がいると言うことは、この国にとっても不利益。打破しようにも解決策がない今、どのように行動いたしますか?」
「あ、そう言うこと」
ラルフレアは合点が言ったように、頷いた。ちらりと私を見てから、口を開く。
「彼女が作ってくれた結界はどうも、雪の呪すら防ぐ代物らしくて」
へ?
私は信じられない言葉を聞いた気がして、ラルフレアを思わず凝視した。
・・・気のせいだよね? 私の作った結界が、雪の呪を防いだって。
「とりあえずは、雪の呪に罹る人間が増えることはないからね」
気のせいじゃなかった!!
え、嘘。私が作った結界ってそんなに凄いの?! そんな馬鹿な!! あんな、よく解らなくて適当に力を込めただけの代物が、雪の呪を防ぐってどう言うことさ!!!
ありえない、ありえなすぎるっ。
「まず、現状維持に専念しようと思う・・・。レーヴェはどう考える?」
私はまた、口調と性格が一変したラルフレアからレーヴェに視線を映した。
「そうですね」
レーヴェは考える仕草をした後、さらりと言葉を口にした。
「それで当面はいいと思います。しばらくしたら他国と協力体制を取り、雪の呪に対してなんらかの対策を練る必要があるでしょうが」
「対策って言っても・・・。いっそ、元凶を何とかしてみる?」
ラルフレアの言葉に、私は一筋の光明を見た気がした。
お願いだから、その言葉に頷いて。そして旅に出て。
ね? 本当、後生だから、せめてここだけはゲーム通りにしようよ。君達が動かないと、世界滅亡フラグが立つから。
雪の呪が発症した今、冗談抜きで、滅亡へのカウントダウンが始まっているの。
六つの悪夢を何とかしないと、真面目に世界滅亡するから!!
どうか、どうかお願いします。
元凶を倒して、世界を救っておくれ。
それが君達、主人公に課せられた使命なんだから。
世界滅亡フラグを、折り曲げて!!
期待を込めてレーヴェを、そしてオルフェを見て私は祈るように眼を閉じた。
「元凶が何か解らないので、放っておきましょう」
いや、駄目でしょう!!
胸中で叫んで、私は深く項垂れた。頭が痛い。
ああ・・・・・・。世界、終わった。
どうしてこうも、予定通りにならないんだろう。熱くなった眼がしらを押さえながら、私は考える。
色々な要因を考えるけれど、一番、可能性が高いのはやはり――。
「死亡フラグ回避」
小さな声で、誰にも聞こえないように呟く。
「あれか? 私が死亡フラグを折ったから・・・」
こんなにも、ゲームからかけ離れたのかもしれない。
眼を開けて、口元を手で覆い隠す。動揺を悟られないように、顔を俯かせたまま声をさらに潜めた。
「私の・・・せい」
一概には言いきれないけれど、関与はしているのかもしれない。そう思うと、怖くなった。恐怖に震えそうになる身体を叱咤し、眼を閉じて自嘲する。
冷静になれよ、私。
馬鹿馬鹿しいと、一笑しろ。
だってそうでしょう?
小娘一人が、世界に干渉出来る力を持っているはずがない。現に、私には何の力もない。転生特典もなければ、チート能力すらない。
あるのはこの世界でマイナーと呼ばれる、結界術だけ。
だから――私のせいじゃない。
眼を開けて、口元から手をどける。
レーヴェ達兄弟の会話に、オルフェ達も加わっているようだ。
それを聞き流しながら、私は一つ息をついた。
所々、耳が拾う単語にはどうしても世界を救う的台詞はない。あるのはこの国の未来と、現状についてのみ。
テオが具体的な例を上げ、カリステゥスが策を練る。それにロイドが加わって、ピセルが防衛面について口を開く。そこにアーシェが衛生関係のことを話し、ラルフレアが検討しながらレーヴェに意見を求めている。
そんな会話――。
私はもう一度息をついて、天井を見上げた。
豪華な電灯と、花の模様をあしらった天井板が見える。
「本当、どうしよう。――――世界、終わっちゃう?」
私の素敵老後が・・・、布団の上で老衰計画が頓挫の危機だ。
明日も一話、更新できたらいいな・・・。




