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兆しの刻-ざわめく世界『霊力』

※「芽吹きの刻」編(改訂版)を経て、ここからは新たな物語が始まります。

『霊力』


白帝城が、品良くマリンが入れてくれたお茶を、まず香りを楽しみ、それからゆっくり口にする。

「本当にマリンのお茶は素晴らしいですね。」

カップを持ったままで、マリンに笑顔で話しかけた。

「恐れ入ります。」

美形代表メンズの笑顔はなかなか破壊力があると思うが、マリンは動じる様子なく、スンとしている。

「是非、マヤにご教授してもらいたい。」

その言葉に、マヤ少年はピッと背筋を正しマリンに頭を下げる。

「マリンさん、宜しくお願いします!」

マリンは直ぐに返事をせずに、主人である雫へ視線を向けた。

雫はお茶に興味はない様子でぽやっとしてるが、マリンの視線に気が付くと、何も言わずに小さく頷く。

「主のご意向であるなら、この件、承りました。」

スンとしたままで答える。

アレだ、マリンさんツン強めなんだな…。


私は天使と雫の間に座っていた。

本当は天使の膝の上に行きたいが、

素敵な真っ白のドレスが毛だらけになったら…と思うと躊躇してしまう。


「さて、話しの続きになるが…。」

白帝城がカップをソーサーに戻しながら話し始めた。

「輪が猫になった経緯は、精霊の加護の影響によるもので、向こうの世界では人であった。…と宰相殿には私から報告しておく。構わないか?」

「加護…と、いうより精霊そのものになってるのでは…?」

天使が小首を傾げて、私を見る。

そして手を伸ばし、背中にある小さな羽根をつまむように触った。

ちょっと、くすぐったい。


「猫には、羽根などありませんし、こうして触られてる感覚もあるみたい…先程は、羽根が身体以上の大きさに変化して…飛んでましたよね?」

「まぁ、猫は飛ばないな。」

天使が頭を撫でてくれてるのに。

魔剣が腰を浮かせて、私を持ち上げて自分の膝の上に降ろした。何か、魔剣は私にちょっかい出すの多くないか?さては、魔剣は猫好きだな…。


「精霊説は、かなり有効…」

雫が、ぽやっとしたまま呟く。

「有効とは?」

「ん…かなり、葉力…じゃないな、霊力が感じられるから…。」

雫が、淡青の瞳で私をじっと見つめてくる。

「霊力ねぇ…。何か、ありそうな感じはするけどなぁ。俺は雫ほど感覚が鋭くないから、よく分からん。」

九尾がお手あげポーズをすると、魔剣が同意して頷いた。


「その…葉力とか霊力とか、よく分からないのだけど?」

私は、話しの腰を折そうで申し訳ないなぁ…でも、聞かないと意味不明なまま進んでしまうしな…と、葛藤しながら尋ねてみる。

「あ〜、そりゃ、知らないよなぁ。」

と九尾が説明をしてくれた。


「葉力」全ての民が個人差があるが、必ず持って生まれてくる能力。

葉力を利用した魔道具なども数多く存在している。

今居る、東斜塔のエレベーターもそのうちのひとつだが、もっと生活に密着した物もあるらしい。


白帝城の広範囲結界や、魔剣の攻撃特化能力、天使の回復術、雫のライブラリー能力等は、特殊能力個体として、国に登録認定され保護下に入り、国へ従事する事が義務づけられる。


その際に、国からコードネームが与えられる。固有名から、系統があかるみになって、親族が犯罪に巻き込まれる恐れがあるから…だそうだ。


「霊力」神、精霊が力を行使するために使われる能力。稀に、株でも持って生まれてくるが、大抵が神の加護、精霊の加護が備わっている。

神憑り、巫女など、呼び方そのものは多岐にわたり、その力は、まさに奇跡に他ならないとされている。


しかし、その能力を自在に操れる者は皆無であり、霊力そのものよりも加護がある事が重視されているようだ。それは、信仰の対象として成り得るからで、衰退の一途を辿る教会関係者が躍起になって探しているらしい。


「え…私、信仰されちゃうの?」

九尾の話を聞いて、思わず不安になって来た。

「猫信仰…w」

九尾がニヤっと笑いながら

「魔剣、猫信仰の信徒になりそうw」

「…なんでオレが、信徒になる。」

「猫、好き。だろ?」

九尾に言われて、膝の上で香箱座りする私を見下ろす。私は見上げてたので、バチっと目が合った。


「…ふん」

ぺいっ!と手で払われて、膝から降ろされた。ちょ、酷くない?自分で膝に乗せたクセに…と、憤慨すると

「魔剣様は大人気ないですね。」

会話に参加せず、背景に徹していたマリンが口を出してきた。

雫以外が、ぎょっとして皆がマリンに注視する。

「失礼しました。」

マリンが、スンとしたまま述べると

また背景に徹してしまう。


マリンさん、私の味方してくれるんだな…きっと猫好きなんだろう。

「信仰はともかく。雫の言う通り霊力持ち、加護有りだとすると…確かに教会は黙って居ないだろう。」

白帝城が話しを戻してくれたが、

天使が不安そうに表情を曇らせてしまった。

「それは、困りましたね…。」

「ん…加護の影響じゃなくて、術が不完全とするのが、合理的解決…」

「雫は、それで良いのか?」

白帝城が雫に尋ねる。

「…良くはない。けど、仕方ない…教会が関わってくるのは避けたい。此処も一枚岩ではないし…教会関係者の内通者が居ても不思議じゃないから…。」


雫にしては棘がある物言いだな…

魔剣の足元に座って、雫を見上げてそう思ってると、視線を感じて…魔剣と目が合った。

魔剣は何も言わず、自分の膝をポンと叩く。

呼ぶなら、降ろすなよなっ!

…行くけどさっ。

ジャンプして、膝に飛び乗った。


それを見てた九尾が、ニヤニヤしながら話す。

「雫は教会嫌いなだけだから、気にしなくていいよ。でも、そうか…羽根は霊力でデカくなって飛べると考えると自然か…」

「なるほど…では、雫の意見の『術が不完全』では、羽根の説明が出来ませんね。」

白帝城が困った顔をして、考える人ポーズになる。


「説明する必要性…ない。」

雫がボソっと呟く。

「それもそうだな…そういうモノで済ませれば良い。」

魔剣が雫の呟きを肯定する。

…てか、モノ扱いしないで欲しい。


白帝城の眉根が、嫌そうに寄ってしまった。…真面目さんなんだな。

「私に嘘を吐けと?」

「白帝城は本当に真面目って言うか、硬いよなぁ〜。おっさんへの報告、俺が行こうか?俺なら、いくらでもはぐらかせると思うしさぁ。」

九尾が、ちょっと呆れたように言うが、決してバカにしてる風では無い。

宰相さんって、アストロさんでしょ?

おっさん呼ばわりして、大丈夫なのかな…。

「俺も倒れたりしたから、挨拶に行かなきゃならないし…身体も楽になったしな。ついでに報告すれば、白帝城も楽だろ〜?」

「…すまん。」

白帝城が、九尾に軽く頭を下げる。

「気にすんなって。」

九尾は爽やかにニカっと笑った。


読んでくださり、ありがとうございました。

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