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女子の井戸端会議を検証するための、男子の井戸端会議

「俺は昨日の部活の時に七海の妹だっていう女子に聞かれた」

「やっぱり、そうか」

「歳の離れた妹がいるのは知っていたけど、今3年だったとはね、しかもバスケ部ときた」

「で?」

「でって?」

「何を話した?」

「何って?」

「面倒なことを話すなよ、女子生徒のお喋りのネタになるのはごめんだ」

実習3日目の放課後、もう日が暮れ始めているころに俺が部活から戻ってくると隼人が実習生の控え室でちゃっかり椅子に座って待っていた。といっても俺を待っていたというより、俺が指導案つくりで参考にしたいと思って職員室で探した文献を隼人が持っていたようで、そのことを知って持ってきてくれたようだ。俺は隼人の向かいの椅子に座った。おそらく隼人はそれを渡すだけのつもりだったようだが、俺が汗まみれで戻ってきたことで少し驚いて“面倒な部活”の話から、女子生徒の俺たちの個人情報についての話に流れた。

「別に聞かれたことに答えただけだ」

「何を聞かれた?」

「同じクラスだったのかって、だからそうだった、って答えた」

「それだけ?」

「うん、他には七海のことを教えてくれた」

「庄野のこと?」

「専門卒業して、今はスポーツクラブで事務員兼インストラクターをして働いているって」

「らしいな」

「知ってたのか?」

「ああ、去年の給食委員会を担当して、その時に庄野葵が給食委員で、その時かな」

「ふーん」

「同級生の今を教えられても・・・・・・って思うよ、俺に何を言って欲しいのか・・・・・・」

「そうだな、知れば懐かしいと思わなくもないけど・・・・・・・」

「圭太にとっては懐かしいのか?」

「まぁ保育園でオムツをしていた頃からの同級生だしね、でも・・・・・・・あえて知りたいとは思わないな、その情報が自分の人生を豊かにする情報とは思えないし」

「人生を豊かにする情報か、うまい言い方だな」

庄野七海、彼女と俺は保育園から中2まで同じクラス・同じ部活、つまりは生まれてから義務教育終了までほぼ一緒だったことになる。隼人は小学校からだが、中学卒業まで彼女とは一緒のクラスだった。どちらにとっても幼なじみという存在だ。七海は美人とか、成績優秀とか、そんな女子ではなく、強いていえばしっかり者だ。

「確か、庄野は推薦で小山高校だったよな?あの時、小山高校の一般推薦を受けて合格したのがあいつだけだったから、えらい鼻高々だったな」

隼人はあきれたような笑いを浮かべ、興味ないといいながら、やはり同じクラスだっただけに具体的に思い出せるらしい。

「たかが小山高校で、鼻高かよ、七海らしいな」

「だろ、あの高校だったら一般入試の成績はオール3程度で大丈夫だろうし、まぁ推薦は少し基準が上がるけど、生徒会だの、部活だの、結局学習活動以外での評価が重視される推薦の基準だとああいう要領の良い女子にはお得だな」

「俺たちのクラスで男子が一人戸川高校に推薦で合格したよな、あいつは納得だよな、成績も人物評価もダントツのクラス1だったし、まぁ都立トップ校合格は当然だよな、まぁ推薦は要領が良いか、抜群の成績か、はたまた両立か、どれにしても俺には全く無理な受験だったな」

俺は少し自虐的な言い方をした。

「庄野は推薦合格組の中で特に狂喜乱舞だったからな、クラスでも若干ひんしゅく気味だったぜ」

「まぁあいつにとっては人生最高の出来事だったんじゃねーの」

隼人に合わせたように、俺は自分でも心の狭い言い方だなぁと思いながらも言ってしまった。

「でも、その最高の学歴が今の職業のために絶対に必要だったのかって思わないか?」

隼人は俺さらに同意を求めて俺に聞いてきた。

「そうだよなぁ、・・・・・・」

“コン、コン”

職員室からの仕切りになっているパーテーションをノックする音がして、本田先生が顔をヒョイと顔を出した。

「あ、ごめん、話中だった?」

「いいえ、大丈夫です。吉田先生、じゃあ」

「あ、ありがとう鵜飼先生」

隼人は本田先生に軽くお辞儀をして控え室から出て行った。

「やっぱり、邪魔したかな?」

「いいえ、全く」

「だったら良かった。職場体験のことなんだけど、副校長から聞いてる?」

「はい、何を実習するかを担当の先生達と決めて欲しいといわれています」

2年生の1学期に実施される職場体験、これは生徒にとっては少し大人の気分を味わう機会だ。

「ああ、じゃあよかった。仕切りは4組と1組の担任が担当になっていて、でも1組の大石先生は学年主任で他の業務が多いから、そうなると1組副担の鵜飼先生が実際はメインで担当になるんだけど、彼の場合は非常勤だから主担当をしてもらうことはできなくて、4組の担任つまり僕と副担が主担当になるから」

「そうなんですね・・・・・・」

「まだ具体的に吉田先生になにをしてもらうかって、決めている訳ではないけど、昨年度の記録をとりあえず読んでおいて」

「はい、わかりました」

「今、鵜飼先生が昨年の記録を持っているから、彼も初めてだしね。鵜飼先生が読み終わったら回してもらうよ、何を担当するかは、話し合って決める予定だから」

「よろしくお願いします」

「それと、うーん、無理にとは言わないけど、若手だけで飲み会を時々やるんだよ、吉田先生はそういうのに参加するのは大丈夫?」

俺は決して社交家ではない、でも楽しいのは嫌いじゃなくて、断る理由がなければ誘ってもらった会には大抵は参加をする。

「僕も行っていいんですか?」

「もちろんだよ、参加する先生はみんな若手だから実習のことなんかも聞けるし、鵜飼先生にも声をかけてるから、日程が決まったら連絡するから、よろしく」

そう言って本田先生は帰っていき、僕はパーテーションに『着替え中』の張り紙をして帰り支度を始めた。


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