第183話 熱闘? 激闘? 〈勇者軍〉VS〈魔王軍〉!
――師匠たちに誘ってもらって、高稲の〈嵐運動・斬〉にやってきて、一番最初にやったのは……。
そう、チーム分け!
今日は、師匠がリーダーの〈勇者軍〉と、リアニキがリーダーの〈魔王軍〉に分かれて勝負するって決まってたからな!
戦力のバランスを取るためってことで、オレと凛太郎、衛兄ちゃんとイタダキ兄ちゃんが、それぞれグーパーで分かれて――。
〈勇者軍〉……師匠、オレ、衛兄ちゃん。
〈魔王軍〉……リアニキ、凛太郎、イタダキ兄ちゃん。
……っていうチームになった!
まあ、リアニキには悪いけど――ヒーローのオレが、〈魔王軍〉に入るワケにはいかねーからさ!
ちなみにテンは、ペット禁止だから、ポケットの中に隠して連れてきたけど……。
さすがに戦力外なんだよなー。
凛太郎みたいに、『声』が聞こえるヤツがいたら困るから――って、基本的には黙ってるようにしてるから、アドバイスとかも期待出来ねーし。
……まあでも、どんな勝負でも、テンを利用するとかヒキョーだろーしな!
せっかく兄ちゃんたちと遊びに来たんだし、正々堂々と勝負だ!
「よっし、凛太郎!
オレのヒーローパワーを見せてやるぜっ!」
「……ん。相手にとって不足なし」
――んで、最初の勝負は……。
やっぱり〈嵐運動・斬〉に来たらまずコレ――ってことで、ボーリングに決まった!
「じゃ、ルールは……2レーンに分かれて、それぞれのチーム3人の合計得点で競う――ってことでいいよね?
とりあえずは2ゲーム、それで決着がつかなかったらもう1ゲーム延長で」
「おうよ!……あと、もちろん負けたチームはペナルティな!
まずこの1戦目は……。
そうだな、ちょうど良い時間だし、勝った方の昼メシ代おごりで!
――おっと、小学生のお前らは、負担200円でいいぜ。
さすがに、普通にオレたちと同じ負担はツラいだろーし……でもだからって、完全に免除――ってのも、勝負として燃えねーだろ?」
へへっ、イタダキ兄ちゃん、分かってるな……!
そうそう、負けてもノーダメージとかじゃ、やっぱつまんねーもんな、オレらも!
……ってわけで始まった、ボーリング勝負は……。
「……むっ……。
容易に見えて、狙った通りに投げるというのも意外に難しいものだな……」
ボーリングは初めてだっていうリアニキが、初っ端にガターを連発してくれたお陰で、しばらくはオレたちが優勢だったけど……。
「――っしゃああ! 行ったぜ3連続ストライク!
おい見たか、裕真ああ!」
「公共の場で吠えるな、ダッキー」
「ダッキーじゃねえ、ターキーだっつーの!」
ボウリングは得意だっていうイタダキ兄ちゃんが、ずっとスッゲー勢いで……。
しかも、コツを掴んだリアニキも、半分越えたあたりからスナイパーみてーな精度になってきてスペア連発。
ついでに……。
「……必殺、アダムスキーボール」
「――って、なにそれっ!?」
スピード無くてゆっくりなのに、スゲー回転かかってるのか、当たったピンを弾き飛ばすヘンな魔球でキッチリ点を稼ぐ凛太郎。
UFOボールって聞いたことあるけど、それの改良版なのかな……。
とにかく、さすが凛太郎……なんかスゲー!
――なーんて感じで、向こうは3人とも、めっちゃ絶好調だったから……。
オレたち〈勇者軍〉もギリギリまで食い下がったけど、結局2連敗で負けが決定しちまった……。
「ちっっくしょぉぉ〜……っ!
俺が、あの最後の一投、キチンとスペアに出来ていればぁ……ッ!」
頭を抱える師匠。
……そう、師匠は最後、逆転がかかった大事な場面で……〈魔王軍〉の精神攻撃に屈してミスしちまったんだ!
なんか、投げる直前に、
「え! マジで鈴守が!? そんなことっ?」
「うむ、亜里奈によればな、なんと――」
「……軍曹も言ってた」
――って、〈魔王軍〉がヒソヒソやるのに動揺しちゃって……。
「てっめぇらぁ〜……!
あそこで鈴守の名前出すとか、ヒキョー過ぎるだろ!」
「「「 魔王軍だからな? 」」」
悔しがる師匠に、打ち合わせてたみたいにリアニキ3人の声が重なった。
……で、結局オレたち〈勇者軍〉のおごりになった(『おんじょー』とかで、メニューは全員あんまり高くないホットドッグだった)昼メシを挟んで――。
メシ食ったばっかりだから、あんまり身体使わないヤツ……ってことで、第2戦はゲーセンスペースで格ゲー対戦勝負!
今度の負けペナルティは、ジュースとスイーツのおごり。
……で、選ばれたゲームは……。
宇宙から現れた邪神に世界が滅ぼされかけてるのに、それとはゼンゼン関係ナシで、世界最強を決める格闘大会が開かれてるっていう、ナゾなストーリーの3D格ゲー……。
――〈別件〜BEKKEN〜〉だ!
そのストーリーもブッ飛んでるし、キャラも、普通の格闘家以外に、ナゾの悪魔とか、異次元忍者とか、人型ロボットとか、グリズリーやレッサーパンダまで出てくる、色んな意味でスゲえゲームなんだけど……。
ゲームとしてはちゃーんと作ってあって……おもしれーんだよな!
シリーズも7作ぐらい出てたと思うし!
「ほほう……〈別件3.5〉か……。
ちょい古いが、このぐらいが一番面白いんだよな……!」
師匠が、手の骨を鳴らしながらニヤリと笑ってる……!
うおお、これは……スッゲー得意ってことだな!
でもオレも、〈別件〉はケッコー得意なんだ!
それに、衛兄ちゃんも――。
「僕の異次元忍術を見せるときが来たみたいだね……!」
――そう!
キワモノっぽい異次元忍者を使うと、スッゲー強ぇんだぜ!
「ふむ……このシリーズは、余も何度か養父上の相手をさせてもらったことがある……。
経験だけではいかんともしがたい差というものを見せつけてやるぞ、勇者よ」
「へっへっへ、衛ぅ……2D格ゲーじゃ結構負け越してるが、これは3D……!
頂点たる妙技を味わわせてやるぜ……!」
「……必殺、ガチャプレイ」
〈魔王軍〉チームもなんかスゲーやる気だし、これは今回も激戦になるぜ……!
――って、思ったら。
「ぬう……っ!?
まさかこの上さらに、見たこともない動きの技が続々と……!?」
「甘いなハイリア。2Dと違って、3D格闘は技の派生が多いからな、運動神経が良くても初見じゃどーにもならんことが多い……経験こそが確かなチカラなのさ!
しかも、俺の功夫ポリスは五形拳使い……構えが多けりゃ技も多い!」
師匠がリアニキを――
「お、おい、ちょ、衛っ! 待……待て待て待て〜!
なんだその絶妙のタイミングで10連コンボとか! 普通に鬼かお前!」
「ふふん。普通じゃないよ? なんせ異次元忍者だからね?」
衛兄ちゃんがイタダキ兄ちゃんを――
圧倒的な強さで押し切って……。
結構あっさり、オレたち〈勇者軍〉の勝利が決定した!
――え? オレ? オレは……。
「……必殺、ガチャプレイ。ガチャガチャ」
「え、ちょ――なにソレ!?
いっぺん浮いたら落ちて来ないぐらいコンボ繋がるガチャプレイってなにソレ!?」
……凛太郎のガチャプレイ(?)に、ボッコボコにやられちまった……。
そんなわけで、昼メシんときと同じく、フードコートでジュースとスイーツをおごってもらって……。
今度は、スポーツコートへ。
「まあ、せっかくちょうど3人ずついるんだ……やっぱこれだろ!」
――ってわけで決まった3戦目は……そう、バスケだ! 3on3!
へへ……実はオレ、5年の頃、市立体育館のバスケ教室に通ってたんだよね!
……まあ、凛太郎もいっしょに――なんだけどさ!
で、オレはドリブルとかシュートなら自信あるんだけど、凛太郎はパスがメッチャ上手いんだよなー。
「……時間的に、これが今日の最終決戦になりそうだな……ペナルティはどうする?」
「じゃあ、ラーメンぐらいいっとく?
どうせなら、駅近くの〈龍乃進〉でどう?」
衛兄ちゃんの提案に、兄ちゃんたち4人はニヤッと不敵に笑いながら視線をぶつけ合って……。
「「「「 決まりだ 」」」」
ルールは、コートの使用制限時間ギリギリまでの点数勝負。
3on3だから、ゴールが決まるか、攻撃側がボールを取られたら攻守交代だ。
コイントスで、オレたち〈勇者軍〉の先制に決まって……ゲーム開始!
「……こうやって、真っ向勝負ってのも……ホント、久しぶりに感じるよな?」
「フ……そこまで昔のことではないはずだが、な。
――さあ勇者よ、この魔王を抜けるか?」
師匠とリアニキが、スッゲー楽しそうな表情で……ぶつかり合う。
うおお〜……っ!
2人とも、バスケのスキルが――っつーより、なんか、迫力がスゲえ……!
さっすが、ホンモノの勇者と魔王……!
「へっ……ハイリア、俺が変わり者の勇者って知ってるだろ――っと!」
師匠が、ゴールに視線を向けた――と思ったら、脇に外れるようなパスを出す。
そっちは誰もいない――ハズだったけど。
そう来るのが分かってたみたいに、イタダキ兄ちゃんを振り切った衛兄ちゃんが走り込んでて……パスをキャッチ。
「裕真っ!」
あ、これ……!
呼んでるのは師匠だけど――衛兄ちゃんの意識が向いてるのは、オレだ!
オレは確信をもって、前進する師匠の陰に隠れるように逆サイドから中央に切り込んで――衛兄ちゃんからのパスを受ける。
で……すぐさま、そこからシュート!
「ほう、来るか……!」
――と、見せかけて……。
ブロックに立ちはだかったリアニキの股下を抜くパス!
「ナイス武尊!」
「――させんっ!」
オレのパスを受けながら、師匠はゴールに向かってジャンプ。
同じく、身体をひねりながら飛んで手を伸ばすリアニキを避けて――。
空中で逆の手にボールを持ち替えての、フックショット!
ギリギリ、リアニキの手を飛び越えたボールは……そのままゴールに!
「――っしゃあ!」
……やったぜ、まずは先制点!
オレたちは誰からともなく手を叩き合う!
……スッゲーな、オレたち、ホントに〈勇者軍〉って感じだ!
息ピッタリ!
「フッ……やってくれる……!
だが、そうでなければ面白くない――次はこちらだ、行くぞ!」
「へへ、おうよ!」
「……いつでも」
攻守交代、向こうのチームは……凛太郎のボールで始まった。
「へへっ、凛太郎……ワリぃけど、いきなり奪らせてもらうぜっ!」
……で、前に立ち塞がるのはオレだ。
凛太郎、パスはウマいけど、ドリブルとかはそれほどじゃねーからな……!
抜かせねーぞ……!
ジリジリと追い込むオレ。
――と、いきなり凛太郎がコート外の方を見たと思うと……。
「あ、軍曹」
「――ぅえっ!?」
思わず釣られてそっちを見て――瞬間でダマされたって分かったけど、もう遅かった!
凛太郎のふわっとしたパスが、イタダキ兄ちゃんの方へ飛ぶ。
「うわ――っとと!」
マークに付いてる衛兄ちゃんより、イタダキ兄ちゃんの方が背が高いからなんとか通ったけど……。
そんなイタダキ兄ちゃんが、ジャンプしながらで何とか取れたぐらいのパス。
……だから、イタダキ兄ちゃんは衛兄ちゃんにピッタリ張り付かれて、身動き出来なくなってる。
凛太郎にしちゃ、なんか雑なパスだったな……とか思ってたら。
「――頂点なパス!」
いきなり、ゴールとイタダキ兄ちゃんたちとの間に走り込みながら――。
そんなことを言って、凛太郎は指で高々と上を指す。
「お――おうよ! 頂点なパスっ!」
その言葉に鋭く反応したイタダキ兄ちゃんが、その場から、衛兄ちゃんを飛び越えるだけの、パスとも言えないようなパスを出す。
あ、でも――!
師匠とリアニキはお互いにゴール下で競り合ってるから取りに行けないし、オレは……出遅れてる!
……しまった、凛太郎は初めっからコレを狙ってたんだ!
イタダキ兄ちゃんに、動きづらくなるようなパスを出したのも、衛兄ちゃんを引きつけるためで――!
でも、山なりのボールだから、ジャンプして着地するときに追いつける――って思ったら。
凛太郎は、ジャンプして触れたボールを……キャッチせず、そのまま、手首のスナップだけで、ゴールの方にさらに高く上げてしまう。
それに合わせて――!
「……見事だ、凛太郎!」
「させっか――!」
思い切り高く飛び上がるリアニキ。
続けて飛んだ師匠も、必死に手を伸ばすけど――届かなくて。
空中のボールをそのままゴールに叩き付ける、リアニキの豪快なダンクが決まった!
――ってか、ダンクって!
すっげぇ〜、かぁっけぇ〜……っ!
「どハデなマネしてくれやがって……!
けど、相手が強いほど燃えてくるのが勇者ってモンだろ!
――行くぜ、反撃! 我らがラーメンのために!」
「「 おおーっ! 」」
……それから――。
オレたちの戦いは、一進一退。
時間ギリギリまでねばったけど……。
結局、同点のまま決着はつかなくて――。
――で、帰り道、駅近くのラーメン屋〈龍乃進〉。
「……ったく、あそこでギャラリーのねーちゃんたちがキャーキャー騒がなきゃ、オレのあのシュートも決まってたのによお……!」
「明らかに気を取られてたもんねえ、イタダキ。
――どう考えたって、おねーさんたちのお目当てはハイリアなのにさー」
「いや、武尊と凛太郎も、カワイイとか言われてたぞ?
つまり、どーでもいい扱いは俺たち3人だけってわけだ。
――ま、俺は鈴守がいてくれれば充分だからいいけどな!」
「「 死すべしリア充 」」
「――っておい!
お前ら、なに俺のチャーシュー勝手にかっさらってやがる!」
「ふむ……余も、亜里奈がいれば充分なのだ。
――ゆえに勇者よ、我がチャーシューを1枚下賜してやろう」
「ぅおいコラ! チャーシュー1枚で亜里奈のこと認めろ、みたいに言ってんじゃねーぞ!
――もらうけどな! そして認めねーけどな!」
「……ラーメン、うまし」
「おう! これ食えなきゃ、晩メシまでに腹ペコで死ぬとこだったよな!」
オレと凛太郎の分のお金は、兄ちゃんたちが出してくれたけど――。
それ以外は、誰のおごりってわけでもなく……。
みんなでワイワイと、ラーメンを食って帰ったんだ。
――でも、勝負は勝負……。
最後別れるとき、『今度、あらためて決着つける!』……ってなったけどな!
「へへへ……あ~、今日はすっげー楽しかったなあ!
次の勝負ってのも楽しみだし!」
《……まったく、男子というのは……。
おぬしの母君の持ってるマンガの通り、ガキんちょばっかりなんじゃのう〜……》