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4度目も勇者!?  作者: 八刀皿 日音
13章 さらに〈勇者〉が増えたら、それこそ勇者は悪役しかない
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第168話 激突! 魔法少女センパイ VS 後輩魔法少女!



「……お前は……!」


「ただいま、お父さん。

 でも……積もる話は、また後でね」




 新しく現れた、ウチとは違う『いかにも』な魔法少女――〈魔法王女(マギアレギナ)ハルモニア〉って名乗った、その三毛猫を連れた女の子は……。


 サカン将軍を『お父さん』って呼んだかと思うと、ウチとクローナハトに……ううん、ウチと、真っ直ぐに視線を合わせる。



 つまり、この子はやっぱり――〈救国魔導団(きゅうこくまどうだん)〉の一員……!



「本当は、クローリヒトに一番興味があったんだけど。

 あなたも……会ってみたかったんだよ、シルキーベル」



「……わたしに?」



「うん、そう。

 世界に災いを為せる――そんなチカラを持っている存在は、いっそ滅ぼすのが一番だ、って……そんな極端な主義の、あなたに」



 ハルモニアは、虹色に輝く籠手をはめた右手で、ウチを指差す。



「そんなのは間違ってるって教えて……懲らしめるためにね」



「わたしだって……そうすることが絶対に正しいなんて思ってません。

 無為な争いをせずにすむなら、そうしたい」



「本心からそう思うなら……退けばいいんじゃないの?」




「……そうかも知れません。

 でも……つい先日わたしは、幸いにも被害は出なかったとはいえ、強い〈呪〉のチカラが悪意をもって振るわれれば、どれだけ危険か――それを肌で感じました。


 だから……守りたい人たちを、守り抜くために。


 わたしは、最悪、そうしなければならないという可能性を……捨てるわけにはいきません。見切るわけにはいきません。

 ――今は……まだ」




「……そっか」



 ハルモニアは小さく首を横に振って……肩に乗る、蝶ネクタイをした――多分、使い魔とかそんな感じの三毛猫の喉を、指でいじってあげる。



「うむっふぅ、良きかな良きかな。ワガハイ、ゴロゴロ言いまくり」


「だから、そこは普通にゴロゴロ鳴いてればいいんだって」



 なんか可愛い見た目に反してカッコイイ声(こういうのイケボて言うたらええんかな)で応じる三毛猫に、呆れたようにツッコむハルモニア。



 でも……改めてウチへ向ける視線は――厳しい。




「自分の大切なもののために、っていう信念には共感出来るけど。

 ――ううん、でも……だからこそ、なのかな。


 もしかしたら、とも思ったけど……。


 やっぱり、わたしたちは相容れないみたいだね」




 ハルモニアが纏う霊力みたいなものが……高まって……!



 思わずウチも、〈織舌(シゼツ)〉を構え直す。




「――お父さん。クローナハトの方、お願いしていい?」


「ああ。もとより、そのつもりだった。

 こちらは任せなさい」



 ハルモニアの呼びかけに応じて……よりも早く、本人が言うてたみたいに将軍は、もうクローナハトと向き合ってた。



「ふむ……ハルモニアとやら、お前にも興味はあったのだがな」



 泰然自若……まさにその言葉通りの落ち着き振りのクローナハトは、チラリと少しだけ首を回して、ハルモニアの方を見る。


 でも……それを遮ろうとするみたいに、ばばっと将軍が動いた。



「くく、クローナハト君っ!?

 いい、今の! きょきょ、興味があるとは、いったい――!」



「あ〜……お父さん?

 強さとか、戦い方の話だから。そういうんじゃないから。

 ――状況、考えてくれる?」



 なんかしどろもどろになってた将軍の肩を、ハルモニアが、大きなタメ息混じりに叩く。



「お、おお……?

 そ、そうか、そうだな。うむ、すまん……」



 ハッと我に返ったみたいな将軍は、ハルモニアに一言謝って、居住まいを正してた。



 あ〜……これは……将軍が何を考えたんかは、ウチでも分かった。



 ――って言うか……。


 ウチもちょっと、お父さん思い出してもうたな……。



 ………………。



 お父さん、ウチが男の子とお付き合いしてるって知ったら、どうするんやろ……?



 ――って、あかんあかん!

 そんなん考えてる場合ちゃうし!



 ウチがふと、そんな横道にそれたこと考えてるうちに――



「――――っ!」



 将軍とクローナハトは、いきなり、同時に。


 同じ方向に大きく跳躍して、素早くこの場から離れながら――目には見えへんチカラをぶつけ合って、火花を散らし始める。



 ……将軍がこんだけ離れてくれたら、ハルモニアの脇を抜けて、一気に、向こうで静かにうずくまりながら〈霊脈(れいみゃく)〉の汚染を進めてる、虎型の魔獣を狙えそうやけど……。



「――そうはさせないよ?」



 そんなウチの考えを見透かしたみたいに、ハルモニアが立ち塞がった。



 そうして――。



「さて、じゃあ行くよ、キャリコ――〈執行(エクゼクト)〉!」


「ふむぅ……お呼びとあらば、かな。ワガハイ、応じまくり!」



 キャリコって呼ばれた三毛猫が毛を逆立てると、そこから小さな光の玉が浮き上がって……それを掴んだハルモニアは、右手の籠手に――はめ込んだ?


 すると、籠手が白く輝いて……。



「――〈力ある(トゲ)、マギアスタ〉!」



 ハルモニアの右手の中に、光とともにシンプルな形をした槍が現れる。



「さあ……まずは、小手調べ!」


「――ッ!」



 言うや否や、飛びかかってくるハルモニア。


 ――大上段から振り下ろされた槍を、ウチは織舌で受け止める。



 その力は、決して弱くはないけど……強過ぎる、いうほどでもない。



「――カネヒラ!」


「いい、いえす御意〜っ!」



 ウチの呼びかけに、カネヒラが横合いからハルモニアの不意を突こうとするけど――。



「キャリコも働く!」


「むぅ、致し方ない……ホント、ワガハイ、仕事しまくり」



 三毛猫が、カネヒラに立ちはだかるみたいに宙に飛び出して……。

 その長いシッポの一撃で、カネヒラを弾き返した!



「おお、おのれェ、この化け猫めが〜!」


「このラブリー寄りのダンディズムが分かりまくらないとは。

 所詮は、落ちまくり武者?」



 1体と1匹は、そのまま、刀とシッポの打ち合いになって……。


 一方、ウチとハルモニアも、そっちをいちいち気にしてられへんぐらいに、互いの武器を何合も激しく打ち合わせる。



「思ってたよりも……ちゃんと強いんだね」


「……そっちこそ。こんな接近戦をするなんて思いませんでした」



 ――お互いに使ってるのは長柄の武器で、力や速さも同じぐらい。


 全体的に拮抗してる――感じやけど。



 落ち着いて見れば……ハルモニアは、動きに(あら)が多い。



 実戦経験は積んでるみたいやけど、多分、ちゃんとした武術とかは修めてないん(ちゃ)うかな。



 やから――。

 ウチが優位に立つとすれば、突くのはその部分で……!



 ――敢えてスキを見せて、向こうが突きを繰り出してくるよう誘う。



「……そこっ!」



 計算通り、空を裂いて襲ってきた槍。


 ウチはそれを、巻き込み、絡め取るような軌道で織舌を振るって――。



 そのまま、外側に弾き飛ばす。



「――あっ!?」



 完全に予想外やったんやろう、その勢いに抗えず、槍を手放すハルモニア。


 そこへ、ウチは踏み込みながら――織舌の反対側を振りだして。



 この間、〈呪疫(ジュエキ)〉に取り憑かれた、亜里奈(ありな)ちゃんたちの担任の先生相手にやったみたいに……ハルモニアのガラ空きの脇腹に、寸止めで、集中させた霊力だけを叩き付ける。



「――くっ……!」



 衝撃をやわらげるために、自分から逆側に跳びつつ……さらに着地と同時にバク転で距離を開けるハルモニア。


 ウチも、不用意な追撃は控えて、その間に構えを取り直す。



 ハルモニアは……本気で余裕があるんか、自分を鼓舞するためか……それは分からへんけど、不敵に微笑んでた。



「……さすが、『魔法少女』としてセンパイなだけはあるよね。

 歳は……うん、わたしより下……みたいだけど」



「…………」



 ……多分、ホンマは同い年ぐらいちゃうかなあ、って思うんやけど……。



 ムキになって実年齢バラすほどウチもアホと違うから、そこは黙ってる。


 ――正体なんて、どこからバレるか分からへんし。



 ……でも、クローリヒトもそうやけど、ウチってそんなに子供っぽいんかなあ……。


 高校生にもなって魔法少女なんかやってるわけない、ってことなんかなあ……。



 それを言うなら、このハルモニアも、高校生ぐらいやと思うんやけどなあ……。



 ――って言うか、さっきの言い方。

 向こうは、つい最近になってこのチカラを身に付けた、いうこと……?



「じゃあ、センパイ魔法少女に敬意を表して……ここからは本気でいくよ!

 ――お願い、〈炎狼フラマルプス〉!」



 何かを呼びながら、腰に提げた、ポーチみたいなものをポンと叩くハルモニア。


 そしたら――その中から、赤い光の玉が飛び出して。



「……〈執行(エクゼクト)〉!」



 それを掴み取ると……さっきみたいに籠手にはめ込んだ。



 途端、真っ白だった長い髪が、そして籠手が、今度は赤く燃えるように輝いて――同時に、彼女の足下からいきなり噴き上がった炎が、小さな馬ぐらいの大きさのオオカミを形取る。



「……イイ子だね、フラマルプス――よろしくね」



 ハルモニアは、赤々と燃える炎のオオカミを、労るみたいにポンと叩くと……颯爽とその背中に飛び乗った。

 そうして掲げた右手に――また炎が渦を巻いて集まって、今度は……。



「〈燃ゆる飛槌、ウォラレ・フェラレ〉!」



 ……って、え、なに、なんなんアレ……!



 今度は槍やなくて、なんか――ごっついハンマーになった……!?


 しかも……ただでっかいだけやなくて……。



 叩くための頭の部分、反対側から、ジェット噴射みたいに火が出てるんやけど……!



 ……え、ちょっと待って?


 あんな、叩くトコが直径30センチはありそうなハンマーを、さらにジェット噴射で加速させるって言うん!?



 ――なんなんソレ!?


 ウチよりよっぽどちゃんと『魔法少女』してる感じやのに、その魔法の方向性がむしろ、うちの脳筋のおばあちゃんといっしょやん!



 ……っていうか、織舌、受け止めたら折れたりせえへんやんな……?



 織舌を握る手に、汗がにじむ。


 動きが大きくなる分、見切りやすくはなるはずやけど……さっきの槍に比べたら、威力がどれだけ上がってるか……。



 ヘタしたら、一撃で終わるかも知れへん……!


 しっかり、気ぃ張っとかな……!




「さあ……行くよ、シルキーベル! 第2ラウンド!」




 ハルモニアが気勢を上げるのに応じるみたいに――。




 彼女の乗る炎のオオカミも、高々と、夜空に吼えた。






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― 新着の感想 ―
[一言] >叩くための頭の部分、反対側から、ジェット噴射みたいに火が出てるんやけど……! 河童長老さんに先言われたけど……ヴィータちゃんやないかい(;゜Д゜) これ、固めのシールド破壊するほど威力ある…
[良い点] ハンマーで魔法少女といえばリリカルなのはのヴィータちゃんだろ…と思ったけど誰もまだ書いてないだと…
[一言] キャリコのキャラに萌えまくり! そして換装武器カッケェ!!! これはオモチャ化したら、全国の親御さんの財布が大ダメージ受けるパターンのやつ……!
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