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4度目も勇者!?  作者: 八刀皿 日音
9章 万難排し、世界を守るが〈勇者〉の役目
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第104話 轟け魔法、吼えろ銃弾、唸れ聖剣!



 ――わたしの呼びかけに対し、アーサーが応じるのは早いものでした。



「……わかったよ軍曹。いや、なんだかよくわかんねーんだけど……。

 オレが手伝えるなら、なんだってやる!」


「うむ、イヤだと言ってもやらせるつもりだったがな!」



 わたしは聖剣ガヴァナードを喚び出すと――アーサーの前に突き立てます。



「……といっても、キサマにやってもらうことはたった一つだ。

 今まさに、わたしたちの周りを飛び回っている、あのトリ公がいるな?

 わたしが合図したら、その剣を使ってとにかく全力でヤツを斬れ。

 それだけでいい。

 キサマのカラッポヘッドでも理解出来る、お優し過ぎるミッションだろう?」



「――わ、分かった!」


「返事は――」


「イエシュ、マムッ!!」



 敬礼を返し、アーサーは聖剣を抜き取ります。


 応じるように――その刃が、淡く輝きました。



「ほう……まさかとは思ったが、本当に認められていたとはな」



 〈霊獣〉の攻撃を食い止めるために障壁を張ったまま、感心したようにつぶやくハイリア。


 当然のように、混乱しきりな顔で、アーサーはそちらを見返します。



「え、えっと……アリーナー……なん、だよな?」



「この身体はな。だが、余は違う。

 そこの聖霊――お前がいうところの軍曹を手伝うために、一時的に亜里奈(ありな)の身体を借りているだけだ。

 ……安心しろ、用が済めば亜里奈はいつも通り――今は眠っているだけだ」



「そ、そっか……」



 差し障りのない答えを返してから、ハイリアはわたしをチラリと見る――。


 いやむしろ、ギロリとニラみます。



 ……え~え~、分かってます、分かってますってば……。



 これだけ深く関わりを持ってしまった以上、あらためてアーサーの記憶をいじるのは、そのテの魔法が使えるハイリアでも不可能でしょうし――。


 あとでわたしが責任持って、それっぽい説明しときますよ、もう……。



 ええ、わたしの責任ですからね! こんちくしょう!




「さて、では……決め手の目処も立ったことだ、一気に行くぞ。

 ――聖霊、キサマはしばし時間を稼げ、いいな?」



「――って、なんであなたが仕切ってるんですか、まったくもう――!」



 わたしは、不満をその場に残しつつ、ハイリアが張る障壁から横合いに飛び出すと……。


 エアガンを連射して〈霊獣〉の気を引きます。



 その間に――。



「……(かぜ)(みや)(おし)吾弾(みちび)く王ならぬ王、(たけ)(たわむ)る、()(うた)う――」



 ハイリアは魔法の構築に入りました。



「ほれほれ、こっちですよー。

 あっちは見た目だけのエセ美少女ですからねー。だまされちゃいけませんよー。

 見た目も中身もぱーふぇくつなカンペキ美少女はこっちですよー。

 追いかけるならこっちですよー」



 そんな風に、愛想を振りまきつつ……。

 あえてチカラをロクに込めないBB弾をぺちぺちと撃ち込んで、〈霊獣〉を挑発するわたし。


 しかし、わたしのその渾身の釣りセリフに――。



 あろうことか〈霊獣〉は、ぷいっと、むしろハイリアの方に気を向けやがるじゃないですか!



「――ぅおい! なんだテメーその態度ッ!?

 中身までホンモノの美少女はこっちだっつってンだろーが! むしるぞッ!!」



「……軍曹、そーゆートコが悪いんじゃねーかなぁ……」


「――あぁんッ!?」



 ボソリ、と余計なことをぬかしやがったアーサーを、しっかりギロリとニラみ付けてやります。



 しかしそんなやり取りがまた目障りだったんでしょうか、〈霊獣〉の注意は再びわたしの方へ向きました……なんか複雑なことに。



 そして、わたしが「むしるぞ」なんて言ったからか――これまでの体当たりじゃなく、羽ばたきとともに、多量の羽根を矢のように飛ばしてくるじゃないですか。



「――軍曹!」


「喚くなジャリ坊! わたしがこんなモンに……!」



 襲い来る羽根を、華麗な銃撃でガンガン撃ち落としてやるわたし。



 ――フフン、まったく、楽勝ですね……!


 ゲーセンのガンシューの方がよっぽどムズかしいってんですよ……!



 ……とか、楽勝ぶっこいてたら……。




 ――カチンッ……!




「……あり?」



 軽やかな金属音とともに、我がワルサーPPKは沈黙してウンともスンとも――って。



「がっでむ! 残弾数えるの忘れてた!」



 なんとか再装填(リロード)を――とか考える間もなく、羽根の第二陣が襲いかかってきて……!



「こんにゃろ……! 聖霊ナメんなよ!!」



 とっさに、無詠唱の低級魔法で小さな光の刃をいくつか作り、それで斬り払いつつ……。


 なおも迫ってくるものは、エアガンの銃身で叩き落としていきます。



「――軍曹! 左だッ!!」


「え――」



 アーサーの声に、意識をそちらに向けると――。


 小癪なことに、羽根の攻撃を囮にして――〈霊獣〉は左側から突進をしかけてきてるじゃないですか!



 羽根の処理に気を取られていたわたしは、完全に反応が遅れて……!



「させっかあぁーーっ!!」



「…………へ?」



 そこへ割り込んで来たのは――アーサーの雄叫び。


 次いで、回避は間に合わないと、反射的に身を固くしたわたしの横を、光り輝くなにかがすっ飛んで行き――。


 それに危険を感じたらしく、〈霊獣〉はとっさに突進を中断、慌てた様子で軌道を変えて上空へ舞い戻りました。




 ……えーっと、今飛んでったやつ……なんか見覚えあったような――。




 ――って、どっからどー見てもガヴァナードじゃないですか!


 誰だブン投げたド阿呆は! いや一人しかいませんけども!




「ふう……なんとか間に合ったな、軍曹!」


「――だから、投げるなって言ってンだろーがこのクソガキ!!

 しかも、なんか良い笑顔してんじゃない、泣かすぞ!!!」



 わたしは、ひと仕事終えた感満載のアーサーを、キバを剥く勢いで怒鳴りつけながら……。


 どっかに飛んでったガヴァナードを、アーサーの目の前に召喚し直します。



 悪びれた様子もなく、「おー! 戻ってきた!」とかぬかしながら、再度聖剣を手に取るアーサー。



「――ハァ……。

 ま、まあ、でもその……助かりましたけど――」



「? 軍曹、今なんか言った?」


「るせー! 次にブン投げやがったら、ゼッタイ泣かすからな!!!」




「……まったく、時間稼ぎぐらいもうちょっと手際良くこなせんのか、キサマは……」




 心底呆れたように、そんなムカつくことをぬかしやがるハイリアは――。


 もう一つムカつくことに、すでにしっかりと魔法を完成させていました。




「――行くぞ。

 其の名、暴風(あらて)! 王の(こえ)、王の雅楽(うた)(みち)なる道――!

 〈風宮(ふうきゅう)常流(つながり)〉!」




 手の平を突き出すハイリア。



 合わせて――〈霊獣〉の周囲の空気が、そよ風を生み、突風となり、疾風と化し――。


 やがて一気にうねり、渦を巻き、圧倒的な『暴威』となって荒れ狂い始めます。



 それはまるで意志を持ち、捕らえた〈霊獣(エモノ)〉を――あるいはひねり潰し、あるいは引き裂き、あるいは切り刻み、あるいは噛み砕こうとするように……。


 徹底的に、ムチャクチャに蹂躙したあと――トドメとばかりに、屋上の床の上に叩き付けました。



「――よし、行け聖霊!」


「だから仕切るなって言ってンでしょーが!」



 文句と同時に、わたしはポニーテールの中から振り飛ばした弾倉(マガジン)で二挺拳銃を再装填。



 そして一気に、地に墜ちた〈霊獣〉に肉薄――。


 引き金にかけた指で銃をスピンさせながら両腕を交差、銃口を押し付け――。



「強制毒抜き(デトックス)だ、歯ぁ食いしばれーーーッ!!!」



 〈聖〉のチカラをありったけに込めた弾丸を、ゼロ距離から超連射で全弾ブチ込んでやります……!


 それによって、こびりついた汚れがガリガリと削れていくように――〈霊獣〉を侵食していた瘴気が、千々に霧散していきました。



 ですが……これで終わりにはなりません。


 最後にして最奥、命そのものを汚染している瘴気までは、これでは届かないのです。



 それを斬り祓い、そして同時に、こちらを主と認めさせるには――!




「アーサーーー!!!


 今だ、やれぇーーーッ!!!」




 叫ぶと同時に、わたしは横っ飛びに地面を転がって道を空けます。




「うぅりゃああああーーーーーッ!!!!」




 ――その瞬間を、しっかりと待ち構えていたんでしょう。



 わたしの言葉に即座に反応していたアーサーは、突進の勢いそのままに、跳躍――。




 思い切り振りかぶった聖剣で、その輝きで――大上段から、〈霊獣〉を叩き斬ります。




 ……一瞬、訪れる静寂。




 その後、悲鳴――というよりむしろ、瘴気のくびきを断ち切ったことへの感謝にも聞こえる、雄叫びのようなものを上げて……。


 〈霊獣〉は光の粒子と化し、一旦宙にほどけた後――。



 あらためて、ガヴァナードの中へ吸い込まれるように集まり……消え去りました。




「ぐ、軍曹、オレ……ちゃんとやれたのか?」



 当然、なにが起こっているのか理解出来てないアーサーが不安そうにこちらを振り返ってくるので……。


 服の汚れをはたきながら近寄ったわたしは――



「……まあまあだ。へっぽこ新兵(ルーキー)にしちゃ良くやった方だな!」



 口もとだけでニッと笑いつつ、サムズアップを贈ってやりました。




「……あ、でも……。

 聖剣ブン投げやがったから、懲罰房(ちょうばつぼう)送りな。お仕置き」


「げ、マジかよっ!?」




「――それはキサマもだがな、聖霊」




 アーサーを相手にいい気になっているわたしの後ろで――。


 ハイリアがアリナの声で……思い出したくないことを言ってきやがりました。




「亜里奈を気絶させたこと、どう言い訳するのか……しっかり考えておけよ?」




「……がっでむ!」






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― 新着の感想 ―
[一言] (;゜Д゜)聖剣は投げるモノではなぁ~~い!!(けーたいそうさかん(ォィ そして霊獣、ゲットだぜ( ´∀`)bグッ!
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