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 ──婚約者の紹介が一通り済んだ。


 真ん中の堂々貴族美女は中領地のまとめ役をしている大貴族のお嬢様、リルシンスカさん。なんとシュテハウルの5つ年上の許嫁。長い許嫁期間を経てこの度婚約に至ったらしい。


 右のクール系モデルは大領地の貴族のお嬢様でラニスさん。神殿で巫女修業をしていたところ、傷病者の手当てで出向していたコンラートが真面目な仕事ぶりを気に入り助手に指名、それをきっかけに交際が始まったらしい。


 そして左奥、見覚えのある胸部をした彼女はローナ。

 私とキッズ達がまだ魔王を倒す前。大領地に入ったくらいに常宿にしてた、ご飯の美味しい宿屋の美巨乳看板娘だ。

 なんとレックナートの一目惚れだという、こいつ街道の整備にかこつけて毎日会いに行って口説いていたそうだ。

「シズクに頼みがある。ローナの後見になってくれ、平民が妃になるのを良く思わない者達もシズクが推薦したとなれば何も言えないだろう、頼む!」

 レックナートが拝んできた。まじか、君そんな子だったっけ?

「父上と神殿長の説得はもう済んでいる」

 おいおい、行動はやくね?

「貴族としての知識や教養はラニスが行って、社交や振る舞いはリルシンスカ嬢が担当してくれるようになってるからさ、あとはどれだけ強力な後見を付けられるかなんだよね。その点シズクなら満点の後見人だから、ボクからもお願い。負担をかけないようフォローもするし名前を貸してくれるだけでもいいよ、でも良かったら彼女達と仲良くして欲しいな」

 コンラートもかなり用意周到だった。

 まあ仲良くするのは別にいいけど。

「シズクにも利のあることです。妃教育を一緒に受ければこの世界のどこでも嫁ぎ先に困りませんから、まあ嫁がれた先は困るでしょうけど」

 よし、シュテハウルを殺そう。

 と思ったらレックナートとコンラートが肘鉄を食らわせ、更にはシュテハウルの許嫁なはずのリルシンスカがヒールで足を踏んできた。

 悶絶するシュテハウル。

 ふむ、良いピンヒールだ。


 まあ、つまり。君らは私が無為に押し花作ってる間に青春真っ盛りだったというわけですね。

 置いてけぼりを食らった気分でちょっと拗ねていたら、か細い声で「あの」と声をかけられる。


「シズク様、どうか、どうかお願いします……!」

 声の主はローナさん、胸の前で手を合わせ必死にお願いしている。

 本来ならレックナートがゴーを出すまで彼女達は喋れない、シズクちゃん的にはそんな習慣クソ喰らえだけどこの貴族社会では礼儀に反する行動なのだ。

 下町ではなんでもない行動も貴族社会で生きていくなら直さなければまずいと思う……思うのだが……その、なんだ。

 ローナさんの美巨乳が拝む形で組まれた手に圧迫されて……ちょっと、凄いなこれ。

 みんなも時が止まってない?

「あ、うん。後見ね、いいよ」

 思わず口から出てたよね。

 もうこの乳で全部なんとかなるんじゃないだろうか。

「本当ですか!ありがとうございますっ」

 軽く了承してしまうと喜びのままローナさんに抱きつかれた。

 ちなみに彼女は立っていて私は椅子に座っていた。つまり、そう。

 彼女の美巨乳に夫予定のレックナートより先に顔を埋めてしまったのである。

 ドヤぁぁぁぁぁぁ。


 なんの自慢にもならんぞ。

 乳マジックで後見の話を受けてしまったのはまあしょうがない。

 全員が乳の迫力に飲まれていたし。

 シュテハウルだけは足を押さえ床で悶絶したままだったけど。


 レックナートが席に着くよう促し、再度お茶の準備がなされる。改めて自己紹介を済ませ歓談が行われた。


「さっきシュテルが言った妃教育だけど、一緒に受けるのは本当にいいことだと思うよ。シズクの意思が最優先されるとはいえこの世界の知識があるのと無いのでは生きやすさが違うだろうから」

 コンラートがお菓子を勧めてくるので大人しくいただきながら頷く。

「もうひとつ、シズクには言っておかないとならない事がある」

 レックナートが深刻そうな顔で切り出す。

 なんだよ、後見の次は何のおねだりだ。

 神さまはお前らキッズの婚約者紹介のあと、パッタリ手紙よこさなくなったぞ。


「その、シズクの外見年齢だが、この国の一般的容姿と比較するとどう大目に見ても10代前半にしか見えない」

 ああ、そうね、確かに。

 ローナが16歳、ラニスが15歳、リルシンスカが19歳だったね。さっき聞いた。

 誰もが私より大人っぽいもんな。


「しかも昨日確認してもらったが、シズクはその姿でもう成人だと、成長しないと言ったな。であれば実年齢と外見年齢の差異がありすぎる。そうすると、サイロニカでは……かなりマズイ」

 レックナートがきまり悪げに言い淀む。おい、さっきの勢いはどうした。

「レイク、続きはボクが」

「すまない……」

 レックナートからコンラートに選手交代。

 コホン、と咳払いしていつもの緩さを少しだけ潜めさせた。

「婚姻を司る神官として言わせて貰うよ。新郎新婦の著しい年齢差、特に女性が幼すぎる場合、神殿は結婚の許可を出さない」

 ふーん。人道的な話じゃないか。

「ただ、シズクの場合は特殊な例なので許可自体は下りるだろうね。ただし、数年経った時もシズクがほぼそのままの容姿ということは……」

 だいたい分かってきたけど、つまり?

「つまり、シズクの結婚相手は幼女趣味だと思われるね」

 ……ようじょって、幼女?

 お前らマジもんで言ってんの?


「このサイロニカは幼女趣味が一番軽蔑されるんだ」

「国外ならそこまで年の差に忌避はないし、隣の魔族の国なんかは外見年齢が曖昧な人が多いんだけどね」

「大柄で彫りの深い顔立ちが多いからどうしてもシズクは若く見えるんだ」

「悪いことじゃないよ?ただ、ちょっと実年齢との差がありすぎかなって」

 レックナートとコンラートが必死のフォローを入れる。だがそこでやはりあいつがぶちかます。

「つまり結婚は絶望的という事です!」

 ヒールのダメージから回復したらしいシュテハウルが叫ぶ、久々に見るキラキラした笑顔だった。──



「……あんなにキレ散らかしたの久々だったな」

 逃げるシュテハウルを追いかけ回して屋敷は半壊、庭に開けた大穴は噴水にしたと聞く。最終的にシュテハウルにはレックナートとコンラート、ラニスの三人がかりで回復を行なわれた。

 リルシンスカは結婚前に未亡人になるかと思ったと笑っていた。

 嫁たちとの顔合わせもそこそこに、半壊した屋敷から今の別邸にひとり放り込まれたのが二カ月前。

 嫁達の仮住まいとか教育環境を整えてから王都に呼ぶから!と言われ大人しく待ってるうちに一ヶ月経過し、私は29歳になった。


『たった一人、異世界で誕生日を迎えました』


 そう手紙を書いた。

 即日、驚きの速さで嫁同伴のキッズ達と久々見たイケ渋ペアがお祝いに訪れてはくれた。

 だがまた、もう少しだけ待ってくれと言われ、またひとりここに留め置かれた。

 それから今日で一ヶ月。

 もうキレそう。

 暗い眼を海に向け、もう勝手に出かけちゃおうかな……と思った時。


「シズク様、王都から帰還の準備が整ったと連絡がありました」

 待ちに待った連絡が届いたのだ。

 誕生祝いの時、イケ渋ペアにお見合い相手探してってこっそり囁いたアレはどうなったかな、楽しみだ。

 準備はすでに整えてある、その日のうちに別邸の側仕え達に盛大に見送られ。

 聖女シズク様、いざ王都に帰還である。


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