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真眼の魔技師と太古の魔導書  作者: 直岩
第一章 真眼の覚醒
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第14話 決意

 「で。どうするんだリーナは?」

 

 届けられた夕飯を食べながら、ベルクの事について話す。

 

 ちなみにフィニアも精霊ながら、食べることも出来るようで、今はもくもくと食べていた。

 

 「個人的には『特級』には執着心は無いのよ。だから欲しいというならあげたって良い。でもあんな力を持ったベルクを放っては置けないのも確かよ」

 

 あんな力。それはあの小さな箱を使った力の事だろうか。確かにリカ姉が驚く速度で魔法式を組んだり出来ていた。あの小さい箱はフィニアが入っていた箱に入っていたものだ。

 

 「なあ、フィニア」

 

 「あんふぇすか、ごひゅひんひゃま」

 

 いつの間にか、頬にいっぱい食べ物を詰め込んだフィニア。

 

 「ごめん、食事中に話しかけた俺が悪かった」

 

 「もぐもぐ……いえ。はい。何ですかご主人様?」

 

 「あ、えーと…フィニアの入っていた箱に小さい箱が入ってなかったか」

 

 これくらいの、と手で形を作って示す。

 

 「小さい箱ですか……私が箱に閉じ込められてからは、ご主人様が開けられるまで一度も出なかったですし、恐らくですがイルファウスト・ラグネイトが自ら入れたものかと思われます」

 

 「そうか……ほらフィニア、ご飯粒がついてるぞっと」

 

 隣に座るフィニアの、顔にはご飯粒が付いていたので、手でとった。

 

 「あ、そんなことをしてくださらなくても結構ですのに……ご主人様ったら」

 

 ちょっと顔を染めている。さすがに恥ずかしがっているのだろうか。

 

 「ねえ、レンくん、レンくん」


 「ん? おい、芽依。ご飯粒いっぱいついてるぞ。行儀悪いから早く取れっての」

 

 「あれ」

 

 なんか知らんけど向かい側の席から芽依が、ご飯粒を大量につけた顔を近づけて来た。

 

 芽依は、「なんか扱いが違うよリカさーん!!」とリカ姉の方へ。リカ姉は「ちょっ、わ、分かったから、ご飯粒ついた顔で抱きついてこないでーっ」と騒いでいる。

 

 「あ、あなた達は……」

 

 「リーナ、落ち着けって。それよりも箱についてだ」

 

 「元は貴方が原因のような気もするんのだけど……まあ、いいわ。じゃあ箱が何なのかは判らないのね?」

 

 「……推測でいいのであれば」

 

 フィニアは、エリアーナに判らないの?と、聞かれた事にちょっとムッとしたようだ。

 

 「ねえ。なんで彼女怒ってるのかしら……私何かしたの?」

 

 「俺が知るかっての。なあフィニア。怒らずにさ、推測でもいいから説明してくれると助かる」 

 「別に怒ってはいません。ただ、どこかエリアーナ様は……いえ、なんでもありません。それで箱についてですよね。推測でもいいのなら」

 

 「ああ、頼むよ」

 

 「まず、イルファウスト・ラグネイトは魔力は十分にありましたが、精霊である私に認められなかった事と、一部しか「読めなかった」事です」

 

 「フィニアが認めなかったのは…まあ、置いといても、一部ってのは?」


 「そうですね……ご主人様。私を「読んで」くださいませ」

 

 そう言ってフィニアは目を閉じる。仕方ないので、読む事にする。

 「読む」といっても実際に本を読むようにするわけではない。俺も目を閉じてフィニアに意識を集中させる。

 

 「いいぞフィニア。準備できた」

 

 「では。第一章 六〇頁 <灯火>の項目を、お読みください」

 

 「六〇頁っと、これか。じゃ読むぞ――<灯火>。灯火は魔素の移動によるエネルギーを利用して発動する、火属性の魔法の基礎である。魔法式・『火』に、下記に示す魔法式を制御式として組み合わせ威力、範囲、発動の場所、タイミングを指示する事で<灯火>となる――で、いいか?さすがに下の魔法式読むのは面倒なんだけど」

 

 「そこまでで結構です。ご主人様。イルファウスト・ラグネイトは魔法の説明までは理解出来ても、示される魔法式を読むことが出来ませんでした。それはつまり読めなかったと同義です。私が認めなかったのはそれが理由でもあります」

 

 「ま、待って。何よ『灯火』って?そんな魔法聞いたこと無いし.魔法式『火』ってそもそも何?初級魔法って『火球』じゃないの?」

 

 「そうね……私でも聞いたことが無いわ。個人のオリジナル魔法ならそんな名前が在りそうだけど、それは違うのよね?」

 

 エリアーナとリカ姉は、そんな事は聞いたことが無いといい、まだ覚え初めの芽依は、頭に?マークを浮かべている。

 

 「個人のオリジナル魔法とやらがどんな物かは理解しかねますが、恐らくは違うかと。ふむ……そうですね。ご主人様が許可を与えれば他の人にも私の一部を読むことが出来ますので、どうぞお試しください」

 

 「この共有ってところか…?んじゃ俺と手を繋いで、目を閉じて」

 

 そう言って手を繋いだのは、左手にリカ姉と芽依、右手にはエリアーナ。

 そんな俺を見てフィニアは半目になりつつ言ってくる。

 

 「モテモテですね、ご主人様?」

 

 「茶化すなっての。そんじゃいくぞー」

 

 今、開いている『灯火』の項目を共有化する。これでこの場にいる全員が見れる事になった。

 

 

 ――数分後、俺とフィニア以外の全員が、頭を押さえたり、ぐったりしている光景が広がっていた。

 

 「だ、大丈夫か皆?…どうしたんだ一体?」

 

 「あ、あんた良くこんなの見て平気な顔してられるわね……」

 

 「う~、頭が、頭が~」

 

 「ふふ、ああ、久しぶりに頭が痛くなるレベルの複雑な魔法式を見たわ……」

 

 「なあ、フィニア。これってどういう…」

 

 「恐らくは普段彼女等が目にしている魔法とは根本的に違うと思います。なので慣れていない頭で見た結果、混乱を起こしているのでしょうね」

 

 淡々と言うフィニア。これはこうなるのを予想してた感じか。

 

 「は~、やっぱりレンくんの見てたのって、普通の人とは違うものだったんだね」

 

 芽依が俺に感心するような視線を向けてくる。くすぐったいのでやめて欲しい。


 「申し上げておきますが、本来の魔法とはこう言うものです。今はどうかは知りませんが、私が作られた当時は、少なくとも魔法は限られた人にしか扱えないモノでした」

 

 「当時って一体いつなんだ?確か、イルファウスト・ラグネイトは千年前だったよな。じゃあそれよりも?」

 

 「二千年前です。かつて科学世界が繁栄し、同時に魔法も少しながら存在していた時代。その時に私は作られました」

 

 「二千年か……、じゃあ相当な年上…いえなんでも御座いません」

 

 「いくらご主人様でもそれ以上は許しませんよ?……それに私がこの姿になったのは、二千年ぶり。私が作られて以来です。そう。つまり私は年など取ってないのですから」

 

 それは強引というものでは…とは言えず、俺は黙ってうなずいた。

 

 「では脱線しましたが、話の続きです。今の魔法式を読めなかった彼は、私を読むことを諦め、読み取る装置を作ることにしたようです」

 

 「それがあの黒い箱…」

 

 「そうです。そしてその小さい箱は私の魔力を溜める為の装置だったかと思います」

 

 「確かにあの小さな箱は、凄い魔力を持ってたわ……まさか、千年分溜めているというの!?」

 

 「そうですね。千年かけて吸いとられた結果、私の魔力はほぼ空でしたから。……最近は魔力を感じることがありまして、度々頂いておりました。今思えば、あれはご主人様の魔力だったのですね。ありがとうございます」

 

 覚えの無いことでお礼を言われても困るんだが。まあ多分暴発した時に反応があったとか言ってたから、それだろうけど。

 

 

 「じゃあ、ベルクが持っていたのは魔力の固まりということ……?」

 

 「でも、凄い速さで魔法を発動してたから、それだけじゃないかもしれないわね」

 

 リカ姉は実際にその速度を目の前で見ているから間違いないだろう。

 

 「これも推測ですが、魔法の触媒だけでなく、魔法式の補助しての役割もあるのかと。魔力の方は有限ですが、なにせ千年分です。一度の戦闘で使いきるなど不可能でしょうね」

 

 「じゃあ、もしあの人とリーナが戦うことになったら……」

 

 「尽きることの無い魔力と演算装置による、発動にタイムラグの無い魔法。それらと戦うことになるわね」 

 

 芽依が心配そうにリカ姉は冷静に言う。

 

 「………」

 

 リーナはうつむいて肩を震わせている。やはり悔しいのだろうか、それとも悲しくて泣いているのだろうか。俺はそっと隣にいるエリアーナの頭を撫でようとした時、バッと、いきなり立ち上がった。

 

 俺が撫でようとしていた時にいきなり立ち上がるものだから、勢い良く俺の手と彼女の頭が当たった。

 

 「っ!? ~~い、痛いっ」

 

 「ああ、ごめん、いきなり立ち上がるから」

 

 「もうっ、あんたって人はっ!良いわよ、いきなり立ち上がった私も悪いし…うう」

 

 「お、おう。で、なんだ、いきなり立ち上がって?」

 

 「ねえ、レン。私決めたわ。――上等じゃない。尽きることの無い魔力?発動を補助する演算装置?そんなものは『特級魔技師』の私には一切通用しない事を教えてあげる ――そんで最後にグーで殴る!」

 

 私を裏切ったこと後悔させてあげる―と彼女は天井に拳を突き上げて高らかに宣言した。

 

 

 

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