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この物語における最終的な題意。


おかしい。

おかしい。

絶対に、おかしい。



大学近くにある大型チェーンの喫茶店の中で、充邦は内心頭を抱えていた。あくまでも内心、であって、外から見れば彼はただ本を読んで時間を潰している客にしか見えない。

1人で来店し、他に客はまばらであるにも関わらず、充邦が心の内外で真逆の行動をとっているのには訳があった。


「お客様、よろしければコーヒーのおかわりはいかがですか?」


静かな店内に、凛とした声が落とされる。うるさい訳ではなく、むしろ見事に調和していて、心地よい声だ。だがしかし、ここで充邦の心臓がはねた。


動揺を悟られないように静かに本から顔を上げ、声の主を見る。

焦げ茶のエプロンをつけた彼女は、長い髪を後ろでまとめ、化粧も薄く、いかにも清潔な出で立ちで充邦の方を向いていた。


「じゃあ、ブラックをもう一杯」


充邦は声が裏返らないようどうにかそれだけを言って、すぐに本に目を落とした。

しかし何度もいうようだが、彼の心臓はバクバクと跳ねている。頭の中では花畑が咲き誇り、喜びに震える自分の分身たちが輪になって踊っていた。


やったな、充邦!

ああ!

今日も話せたな!充邦!

ああ!

元気ウルトラマックスだぜ!充邦!

ああ!


愉快な充邦たちは、口々に讃えあう。

しばらくその歓喜を堪能した後、彼の思考はまた冒頭のセリフに戻る。


おかしい。

おかしい。

絶対に、おかしい。


と。



どうやら自分は、心地よい声をしていて、素朴ながら清廉で可愛らしい彼女に、恋、というものをしているらしい。

というのもそれは、こうして雑多な恋愛小説に手を出して読み漁りながら、自分に起こっている事象に、具体例をパターン化して当てはめた結果、昨日ようやく見出した仮定、なのだが。


仮定を出したはいいものの、いかにしてこの現象を恋と見なすだけの証拠を集めるべきか、わからないでいるのだった。


そもそも、恋愛小説においてもその証拠はしっかりと裏付けされたものとは言い難く、証明のためのサンプルさえ見当がつかない。



「お客様、コーヒーをお持ちしました。」


声を掛けられ慌てて顔をあげれば、やはり彼女が可愛らしい表情で微笑んでいて、またしばらく充邦の分身たちが脳内を笑いながら駆け回る事態となった。



おかしい。

おかしい。

絶対に、おかしい。


どうにかしてこれを恋だ、と言い切れるだけの根拠を見つけ出さなければ。


こうして、充邦の無謀とも言える挑戦が始まるのだった。

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