第一話 塾帰りの空に描かれた巨大魔法陣
夕闇が迫る京都の街は、いつも通りの穏やかな喧騒に包まれていた。
鳥居の朱色が街灯の光に浮かび上がり、帰宅ラッシュの車列がヘッドライトの光列をつくっている。学校の授業を終えた僕――小鳥遊優は、友人たちと共に京都タワーの近くにある学習塾へと向かって歩いていた。
「なー、あかね! また赤点取ったってマジかよ? 委員長のくせに!」
「うるさいわね翔! 赤点じゃない、ギリギリ平均点に届かなかっただけ! 総合格闘技の大会と剣道の遠征が重なってたの言い訳にさせてよー!」
前を歩く高橋翔が面白がりながら茶化し、陣内あかねがポニーテールを揺らして憤慨している。運動神経抜群で全国8位の格闘スキルを持つ彼女だが、勉強の成績だけは学年で下から2番目というポンコツぶりだ。
「まあまあ、ふたりとも。歩道なんだから大声出さないの。翔も煽らないの」
翔の隣で、呆れたように苦笑いを浮かべるのは常盤楓だ。ショートボブの髪を揺らしながら、彼女は付き合っている翔の袖をちょんと引っ張る。二人の自然な距離感に、周りの誰もが入る隙はない。
「ふふ、でもあかねちゃん、今日の塾の小テストの対策なら、私が教えてあげるからね?」
「ゆり……! 女神……やっぱりゆりは私の心の清涼剤だよ〜!」
咲野ゆりが優しく微笑むと、あかねが感涙しながら抱きついた。ゆりは料理上手で家庭的、誰もが惹かれるような温和な雰囲気を持っている。
「……ふぁあ……うるさい。まだ夕方……眠い……」
僕のすぐ後ろから、消え入りそうな声が聞こえた。
大きめのフードを深く被り、髪だけをのぞかせているのは古塚美緒だ。口に加えたぶどう味のキャンディをペロリと舐めながら、僕の制服の裾をぎゅっと掴んで離さない。まるで迷子にならないようにする幼子のような仕草だが、彼女の瞳は静かに僕だけを捉えていた。
「美緒、歩きながら寝たら危ないよ」
「……ん。優が引っ張ってくれれば……倒れない……」
そんな僕たちの様子を、少し離れた位置から上川涼が冷めた目で見つめていた。メガネを外した彼の素顔は驚くほど整っており、女子からの視線をやたらと集めているが、本人は手元の単語帳から目を離さない。
「おい優、美緒を甘やかすな。それと翔、騒ぐならせめて歩幅を合わせろ。塾の開始まであと十分しかない」
「相変わらず堅物だなあ、涼は!」
他愛のない、どこにでもある高校生の日常。
僕、小鳥遊優もまた、己の内に秘めた「全属性魔法」の力など使う機会もなく、この平和な街で『普通』の生徒として生きている――はずだった。
――ゴォオオオオオオン…………!!!
突然、地響きのような、重低音の衝撃波が京都の街を揺らした。
「な、なに!? 地震!?」
「いや、上だ! 上を見ろ!!」
翔の叫び声につられ、通行人たちが一斉に空を見上げる。
京都タワーの真上。青く澄んでいたはずの夕空が、まるでガラスが割れるかのように亀裂を走らせていた。
そして、その亀裂を中心に、見上げるのも恐ろしいほど巨大な「魔法陣」が広がり始めたのだ。
何百、何千の幾何学模様が重なり合い、眩い光を放ちながら空を塗りつぶしていく。日に日に大きくなることなど、この時の僕らは知る由もない。
「なんだよ……あの模様……映画の撮影か……!?」
「嘘でしょ……魔法陣……? そんなの、現実にあるわけ……」
涼の単語帳が手から滑り落ちる。あかねが構えを取り、ゆりが僕の腕にしがみつき、美緒が口のキャンディをガリッと噛み砕いた。
「――っ、みんな、僕の近くに寄れ!!」
僕が叫ぶのと同時、京都タワー上空の魔法陣から、圧倒的な光の柱が地上へと降り注いだ。
視界が真っ白に染まる。
激しい浮遊感と、空間が捻じ切れるような嵐の中で、僕たち7人の意識は深く、深い異世界のアストラルへと呑み込まれていったのだった。
はじめまして。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
授業中や通学中に頭の中でぐるぐる回っている「中二病すぎる妄想」が溢れ出しそうだったので、勢いに任せて全部ぶつけることにしました。
初めての投稿でドキドキしていますが、頭の中の妄想がこうして形になっていくのがすごく楽しいです!
塾帰りの平和な日常から一転、京都タワーの空に浮かぶ謎の巨大魔法陣……巻き込まれてしまった7人の運命がどうなっていくのか、ぜひ見守っていただけると嬉しいです。
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次回も全力で執筆していきますので、よろしくお願いします!




