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魔法は無料じゃないですよ?  作者: 魔女見習い
第一章 厄災の魔女
1/11

1:巨乳税に敗北

「お前、貧乳じゃないだろ」

「急になんですか……」


早朝の7時前くらいだろうか。あたりはまだ薄暗い。

突然の訪問者に眠い目をこすりながら私は生返事をする。


「”巨乳税の滞納“──3兆4600万50円、直ちに支払いを命ずる」


「…………ん?」


──ほどなくして意識が覚醒する。


扉の前には軍装ドレスを着た女性が複数人。

皆誰もが見上げるほどの背丈なのは、

ハイヒールを履いているからか、

私の背が低いだけか、

この際どうでもいい。



「──てあー!お役人の方々!」



「ゲビル・クニャージ。

バストサイズを日常的にCカップだと偽り、納めねばならない税金を払っていない。

常習性のある極めて卑劣な行為だ」


「あ、あス……スイ……」


淡々と響く声

私汗ダラダラ


「ま、リーダーは『支払いを命ずる』とは言いましたけど、ゲビル(あなた)に支払い能力なんてない。

よって今からこの部屋にある荷物、全て差し押さえます」


「うええええ!?差し押さえぇ?!

ま、マジですか?!えしかも今?!」


顔も洗ってないのに!


「封書は見たか?

折り返しの連絡がない場合、強制執行と書いてあっただろう?」


「ふ、ふっふ!」※封書と言いたい

「産まれそう?」

取り巻きに背中をさすられる私


「……馬鹿。虹色の、すぐに目に付く」


虹色の封筒……警告を示すカラーで一番ヤバいやつ。


「いや、分カラナイ。言ってるがよく意味が」


「貴様のスリーサイズはB:86 W:56 H:79。

身長は152cm体重は4ー」


「わーわー!!乙女のヒミツ!オトメの秘密!!ダメー!」


「最近またバストアップしただろ。そういう情報はここでは隠し通せないぞ」


ドキリ


「このトンデモナイ怠け者め。

滞納額約3兆円を稼いでくるまでそのツラ見せるな」



かくして私は借金を抱えホームレスになった。




♢♢♢♢♢



ヒュオオオ……


「……おおぅ、ヴァリスティルや……。

今日でお別れなんじゃ」

「……グオ」


家を失った私は、何十年ぶりと外に出た。


前回の記憶では外はこんなにも寒くなかったハズである。


「私はただ、仕事で精神をやられたからお家で療養してただけなのに。しかもギリギリの生活で。


な、の、に!


こんないたいけな女に借金3兆円を返すまで帰って来るなって!

うわあああん!国に捨てられたああ!!」

「……グ、グオ……」


スリスリ。



「……ヴァリスティル、お前は偉いなぁ

こんなにもカラダを冷たくしてるのに、自分の仕事を頑張ってる」

「……いや(スチール)だからこれが普通か」


身を寄せていたこの犬みたいなヤツはヴァリスティル。

バリスタとスチールを掛け合わして創られた幻想神族(クトゥルフ)である。



「私だってなあ、夜間哨戒班に配属さえされなければこんなにはなってなかった。


ここは私が生きるには辛過ぎるよ」


「ハァ……」



自宅を差し押さえられ、そのうえ返せる見込みもない借金を

さてどうしたものか。


「──復職希望の子かい?噂は聞いたよ」


声がした方へ視線を向ける。

誰もいないと思っていたのに声をかけられた、

その多少の同様と驚きを隠しながら。




「借金3兆円だって?ウケる笑」


振り返った先には私の家を奪った

憎き役人と同じ格好をした女性が立っていた。


この人、確か……。


「壮年術師のYさん」

「概念術師!!そんな老け込んでらんわ!」



概念術師──概念魔術という極めて稀な適性を持つ

通称:高級取り



「そんなリッチメンが私を嘲笑いに来たんですか?」

「おいおい、昔のお前はそんなに捻くれてなかったぜ?

新卒ピチピチ時代を思い出せ」


「……すぐに鬱になりましたよ」

「……それはすまなかった。

その詫びに私に出来ることあれば協力するぞ?」

「え?……そうだなぁ」


──あ、それなら、



「──え?借金を返すつもりか?」

「はい。巨乳税とか本当、馬鹿らしくてクソ国だと思ってますけど、暮らす環境は充実してますから」


「だからYさん、お金持ってそうな国に私を転送してください」



♢♢♢♢


魔女の国、儀式の間──の隣の部屋。



「いいか、私の概念魔術は一回5000万の価値がある」

「分かりましたって。何度も言わないでください」


今からやろうとしていること、それは近隣諸国への転移動。


それを可能にするのがこの扉。

この先はトイレなんだけど、トイレへの入口という既成概念を消費して、別の入口にしてしまおうという、極めて原理が不明な魔術である。



概念という世界のルールを書き換えるため、

この魔女の国からトイレが一つ消えるという訳だ。



「相変わらずトンデモ魔術ですね」

「一度消費した概念は二度と戻らない。不便も多いのさ」

「5000万のトイレが一個消えるだけです」

「ったく、私の魔術は戦略兵器に扱われるくらいなんだぞ?それをただの出稼ぎに使ったなんて知られたら私の首だって……」

「かわいい後輩のためだと思ってください」


なにやらブツブツと文句を言っているが、

何故か嬉しそうな表情を浮かべるYさん。

そうこうしてるうちに準備は完了したらしい。



「そんじゃ行くぜ──《私の掌握術(スローススペル)》」


概念術って大罪欲(マナディザイア)の派生だったのか。



移送換門(ゲート)

「うぉーう……」


扉の色が白から青へ移り変わる。

かと思えば直後、その隙間から光が漏れだす。

扉の向こうから聞こえる喧騒。


分からないが概念魔術は成功したのだろう。



「ありがとうございます。次は巨乳税の概念も消費しておいてください」

「概念としての蓄積が浅いのはちょっと難しいな」


この先私は、3兆円を超えるお金を稼いでここへ戻って来なければならない。


それは全て、自分の世界(いえ)を取り戻すため。


本当はもっと準備とかしたい派だが、こんな無一文ではそうは言ってられない。


「必要に迫られた状況ならやるしかない」



私はYさんに会釈をし、魔女の国へ別れを告げた──。


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