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【初心者安心パック】は歴代転生者アンケートから生まれました~いつの間にか聖女扱いされて困ってます~  作者: 紫陽花


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9/12

女子会

評価ありがとうございます。

執筆の励みになります。

楽しんで頂けていたら、幸いです!

 リズに教会の話を聞いて、落ち着かない気持ちでソワソワしていると、背後から弾んだ声が聞こえた。


「セリアちゃーん、みーつけた!」


 この声と共に、背後からギュッと抱きしめられる。

 ふわりとした甘い香りがして、頭には柔らかくも重たいものがのっかった。


「ローラおねーちゃん、重たいでしゅ」


 私は情けない声を上げた。

 後ろを振り向くと、抱きしめているのは予想通り、ランド・エッジのローラだった。

 そして、頭に乗っかっていたのは、ローラの大きな胸だったらしい。


 ローラの傍には、パーティーリーダのカイと、獣人のロイドが、笑顔で立っているのが見えた。


「ローラ、セリアちゃんが苦しいだろう」


 カイが笑いながら注意すると、ローラは「えー!」と声を上げ、ようやく私を解放してくれた。


「もう!リズもセリアちゃんもずるいわ!二人だけで仲良くおしゃべりしてたなんて!」


 ローラは頬を膨らませて騒ぎ出した。


「私も、セリアちゃんとお話したいわ。そうだ!今、そこで売っていたクラッカーを買ってきたの。一緒に食べましょう!ね、リズも!」

「それはいいわね。セリアちゃんは、まだ食べられるかしら?」


 リズはハーブティーを一口飲むと、穏やかに微笑んだ。


「お菓子は別腹でしゅよ!」


「決まりね!!」


 ローラがそう言うと、カイが少し離れた席を指さながら、


「俺たちは、ちょっと明日の予定を相談してくるよ」


 と、ロイドと二人で別のテーブルへ向かっていった。


「女の子だけになったわね!」

 ローラが楽しそうに言うと、少し離れた席から見ていたカイが

「女の子?女の子はセリアちゃんだけだろう」

 と呟くのがはっきりと、こちらまで聞こえてきた。

「カイ?あとで、ちょっと話し合いが必要ね」

 とローラの低い声が響く。

「ヒッ、なんにも言ってないよ。素敵な女性の集まりだなと思っただけだよ」

 と、カイの慌てる様子に、どこからともなく笑い声が聞こえてきた。


「もう、女子だけで楽しみましょう!」

 とローラが仕切り直しと言わんばかりに、手をパンと鳴らした。


 しかし、私はこの状況に興奮していた。

(え?女子だけ?これは、もしや前世でキラキラ女子がやってた憧れのシチュエーションでは?)


 興奮のあまり、プルプル震えていたようだ。

 リズが心配そうに、声をかけてくれる。

「セリアちゃん、どうしたの?お腹痛くなっちゃった?」


 リズが声をかけてくれた瞬間、私はバッを顔を上げた。

「じょ...」

「「じょ?」」

 リズとローラが聞き返す。


「女子会でしゅかぁぁーー!」

「「え?」」


 あまりの私の興奮の様子に、リズとローラだけではなく、食事処にいた周囲の人たちまでも、あっけにとられている。


「女子だけで、お菓子やお茶を飲みながら、おしゃべりをするという、女子会でしゅかーー!」

「そ、そうね。お茶会?いいえ。女子会ね。セ、セリアちゃん落ち着いて」


 リズが、私を落ち着かせようと、肩をポンポンと叩いてくれた。


「そうよ!女子会よ!誰が何を言おうと女子会よ!」

 なぜか、私と一緒になってローラも興奮している。


「セリアちゃん。女子会って、どんなことすればいいの?初心者に教えて!」


 ローラに言われて、ハッとする。

 なぜなら、私も1度も女子会をしたことのない初心者なのだ。

 前世の知識を思い出し、頭をフル回転させる。


「こ、恋バナです!女子会は恋バナをするのでしゅよ!!」


「「おぉー!」」

 なぜか、リズとローラは拍手をしていた。


 ローラが買ってきた、ディートムの町で一番ポピュラーな木の実を練りこんだクラッカーをテーブルに並べた。


「さて、はじめましゅよ。ローラおねーちゃん、好きな人はいるでしゅか?」

 女子会に参加しているのを周囲で見守っている男性は、「え?女子会って、そんな始まりかたするの?」と、不思議そうな顔をしている。


「いるわよ!もちろんいるわ!セリアちゃん、聞いてくれる!?」


 ローラは嬉しそうに身を乗り出し、目を輝かせた。


「私、王国の騎士団長様に夢中なの!もう、とにかくクールでかっこいいのよ!普段はちょっと無愛想で、私のことも全然相手にしてくれないんだけど...それがいいのよね!」

「そうね、まったく相手にされてないわね」


 ローラは騎士団長からあまり相手にされていないようだが、それがかえってローラの情熱に火をつけている様子だ。


「リズおねーちゃんは?好きな人いる?」


 次にセリアがリズに尋ねると、リズは静かに首を振った。


「私はまだ、誰かを特別に思ったことはないわ」


「えー!じゃあ、好きなタイプは?」


 リズは瞳を伏せ、真剣に考え始めた。

 食事処全体に、静寂が訪れる。

 セリアとローラだけでなく、離れたテーブルのカイとロイド、さらには周囲の男性客までが、固唾を飲んでリズの答えを待っている雰囲気が伝わってくる。


「...ごめんなさい。やっぱり、わからないわ」


 リズが困ったように答えると、食事処全体から「ちぇーっ」という、ため息に近い空気が漏れた。

「そっかー、じゃあ好きな人が出来たら、教えてね!」


 そして、ローラとリズの瞳が、今度はセリアに集中した。


「セリアちゃんは?セリアちゃんは、好きな人いるの?」

 セリアはクラッカーを飲み込むと、顔を真っ赤にして答えた。

「セリアが今気になっている人はね、大きなふわふわの耳に、鋭い眼差しの男性なの!」


 この言葉を聞いた瞬間、一斉にロイドを見てニヤニヤし始めた。

 ロイドのふわふわの耳にするどい眼差し、そして昨日のセリアの求婚騒動は、冒険者たちの酒のつまみのネタとして広がっていて、セリアが誰の話をしているか全員が分かっていた。


「でもね...年の差があるから、相手が受け入れてくれないのが、セリアの悩みなんだぁ」


 セリアは頬をぷうっと膨らませた。


「あと15年ぐらい待ってくれれば、ローラおねーちゃんみたいなナイスバディになって、悩殺できるのにー!」


 周囲の男性客たちは、肩を震わせて笑いをこらえ始めた。

 そんな様子にロイドは額に手を当て、深くため息をつくのだった。


 その後も、ローラとセリアは王都の流行りのドレスや、最新のお菓子の話題で楽しく話をした。

 リズは時折静かに微笑みながら二人の話を聞き、時折コメントを加える。


 すっかり夕暮れ時になると、ローラは立ち上がった。


「セリアちゃん、楽しかったわ!でも、明日は朝早くから町を出るから、私たち、これで部屋に戻って準備しなくちゃね」


 リズも立ち上がり、優しくセリアの頭を撫でた。


「また一緒に女子会しましょうね」


「うん!約束だよ!」


 別のテーブルで様子を見ていたカイとロイドも、こちらにやってきた。

「セリアちゃん、楽しかったよ。またな」

「セリアちゃん、お父さんを困らせすぎないようにね」

 ロイドはそういうと、父がいるキッチンのほうを見て、頭を下げた。


 Aランクパーティ『ランド・エッジ』のメンバーは、翌日に備えるため、それぞれの部屋へと戻っていった。


 彼らが去ると、私は皿や空になったハーブティーのカップを下げ、夕食の準備を手伝った。

 父の作る具沢山のシチューと、母のエリーナが焼く丸パンをみんなで食べて、賑やかな夕食を終えた。

 食事が終わると私は両親に挨拶をし、早めに自分の部屋へと戻った。



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