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【初心者安心パック】は歴代転生者アンケートから生まれました~いつの間にか聖女扱いされて困ってます~  作者: 紫陽花


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元気になりすぎた騎士たち

(私以外にも日本を知る者がいる……? なんで言い切ったんだろう……)


 手紙を読み終えた私は、じっと羊皮紙を見つめたまま頭の中を整理した。

 そういえば、五代目聖女といえばルミナ様だったはずだ。

 そしてルミナ様といえば、聖女の本にはユニコーンの聖獣と一緒だったと書いてあったはず。


『ルク、桜井蒼真さんっていう勇者を知ってる?』

『ああ、ソウマか。覚えてるで』


 肩の上のルクに念話を飛ばすと、あっさりと肯定の返事が返ってきた。


『この手紙は、蒼真さんが残したものなんだ。ここに蒼真さんが、私たちと同じ日本からきてる人がいるって書いてあったんだけど、何か知ってる?』

『せやな、賢者のリクも日本からきとったな。リクのことやないか?』

『それなら賢者のリクさんが日本人って書きそうだけどな……リクさん以外にも誰かいたのかな? ルミナ様のときに他に召喚された人はいなかった?』

『ワイが知る限りは、おらんかったな』


 勇者は誰に会ったのだろうか。

 日本を知る者がいるというのは、日本人のことではないのだろうか?


(もうちょっと分かりやすく書いてよ……)


 はぁ、と私は心の中で小さくため息をつく。


(それにしても良いこと書いてたのに、最後の一言で全部台無しじゃない?)


 視線を動かすと、そこには光を遮る上等な厚手の布がかけられ、すっかり存在を隠された例の写真集が保管されている。


(これ、写真集を受け取って処分してあげたほうがいいのかな? もし女性が見たら……考えるだけで怖いことが起こりそう……)


 その時にお屋敷で巻き起こるであろう恐ろしい大惨事を想像してしまい、私は思わずブルッと身震いした。



 手紙を見つめたまま完全に固まっていた私に、エリーゼが優しく声をかける。


「その手紙の文字は、異世界から召喚された勇者様の故郷のものですわ。残念ながら、私どもには読めないので何が書いてあるのか分からないのですよ」


 私はそっと羊皮紙を戻し、ペコリと頭を下げた。


「たくさん見せて頂き、ありがとうございます」

「邸内にはここだけではなく、他の部屋にも芸術品が置かれていたりしますのよ。もし気になったら、気軽に声をかけてくださいね」

「はい! お気遣いありがとうございます」


 エリーゼと部屋の前で別れ、私は案内してくれたメイドと一緒に、とりあえず自室へ戻ろうと廊下を歩き出した。


 部屋の扉が見えてきたときだった。

 背後から、やけに慌ただしい足音が響いてきた。



 ……パタ、パタ、パタパタ



「てーんーしーさーまぁぁ――――――!」



 振り返ると、お屋敷の筆頭魔道士であるルミナが、もの凄い勢いでこちらに向かって走ってきていた。

 すると、隣にいたメイドがサッと私の前に進み出た。

 彼女は自らの背中で私を完全に隠すように立ちふさがる。


「セリア様、お下がりください」


 その低く鋭い声は、まるで恐ろしい奇襲でも確認したかのようだった。


「天使様! おはようございます。朝から天使様に会えるなんて、なんて私は幸運なんでしょう!」

「ルミナ様、セリア様から離れてください」

「なぜですか? ご挨拶をしただけですよ。そちらこそ、天使様が見えないのでどいてください」

「セリア様を危険な目に遭わせるわけにはいきません」


 一歩も譲らないメイドの鉄壁のガードを前に、ルミナは彼女を説得することを早々に諦めたらしい。

 メイドの後ろからひょっこり顔を出している私に向かって、めげずに話しかけてきた。


「天使様! どちらに行かれるのですか? 私もご一緒します!」

「えーっと、部屋に戻るだけだよ」

「ご一緒します!」

「部屋に……」

「ご一緒します!」

「はぁ……」

「ご一緒します!」


 あまりの連呼に私が完全に白旗を揚げ、メイドに「とりあえず部屋に戻ろう」と提案する。

 メイドはルミナへの警戒心を解かないまま、結局三人で私の部屋へと戻ることになった。


「お邪魔しまーす!」


 ルミナは満面の笑みで私の部屋に入ると、そのまま私の向かいのソファーに座った。

 どうやら、居座る気のようだ。


 ルミナは、ふにゃりとした笑顔で私をじーっと見つめている。


「えーっと、辺境伯様に頼まれている件はいいのですか?」


 私の代わりに治癒魔法で騎士団員たちを治している「フリ」をする仕事は放置していいのか。

 そう遠回しに尋ねると、ルミナはチラッとメイドの方へ視線を向けた。


(あー、確かに極秘任務だもんね……)


 理由を察した私は、仕方なくメイドの方へ振り返った。


「えっと、ルミナ様とお話することがあるので、二人きりにしてもらえるかな」

「セリア様を狙う、こんな危険な人物と二人きりになるなんて、考え直してください!」


 メイドは顔を青くして、慌てている。


(ルミナ様は、一体なにをしたら、こんなに警戒されるの?)


「たぶん大丈夫です……」


 なぜかハッキリと大丈夫と言い切れない様子にルミナが驚愕する。


「天使様! 私が天使様を傷つけるなんて、ありえません! 安心してください! 私が守って差し上げます!」


 目をキラキラとさせ、何か使命感のようなものに燃えているルミナを見て不安が残るが、話が進まないので、メイドに部屋の外で待ってほしいとお願いする。


「何かあればいつでも声をかけてください」


 そう言い残し、メイドが静かに部屋を出ていく。



 パタン、と重いドアが閉まった瞬間――


「天使様、聞いてくださいよぉー!」


 机にすがりつくような勢いで、ルミナが涙声で愚痴をこぼし始める。


「昨日の朝までは、よかったんです。騎士たちも回復してるとはいえ、まだ精神的な疲れもあったのでしょう。大人しくしていました。その時に、天使様の奇跡についてたくさんお話を伺うことが出来て、私も楽しかったのです」

「う、うん」

「でも、昼食を食べたあとに一人の騎士が『暇だなー』って、ぼそっと呟いたんです」


 その瞬間、ルミナは恐ろしいものでも見たような、怯えた顔になった。


「その直後です」


 ルミナは騎士の声を再現するように、野太い声を出した。

「いーち! にー! さーん!」


「突然、腕立て伏せを始めた騎士の掛け声が救護室に響いたんです」


 小声で続ける。


「最初は一人だけだったんです……ですが、誰かが始めると止まりませんでした」


 ルミナがガクッと首を垂れる。


「一人、また一人、また一人……どんどん増えていくんです」

「え?」


 ルミナは、ガバッと顔を上げ大声で叫ぶ。


「救護室がトレーニング室になってるんですよ!」

「トレーニング室?」

「あのむさ苦しい男たちが、あちこちで汗をまき散らしてるんです! 助けてください!」


 泣きそうなルミナの顔がそこにはあった。


たくさんのリアクション、評価、ブックマークをありがとうございます。


感想も楽しく読ませていただいています。本当にありがとうございます。

感想への返信は本作の執筆以上に緊張してしまうため、少しずつお返事させていただきます。気長にお待ちいただけると幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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