歴代転生者アンケート第9位
【お詫び】
5話でサファイアブルーの瞳の色について詳細を書いたつもりでいましたが、抜けていました。
サファイヤブルーは聖魔法の適性がある者に現れる色となっております。
その一文を追加しております。申し訳ありません。
日の傾き始めた頃、私は遊んでくれた子供たちに笑顔で手を振り、家へと急いだ。
家に帰ると、ちょうど夕食時で、食事処は活気に満ちていた。
その日の夕方に町に到着したばかりの冒険者や商人が、食事を求めてテーブルを囲んでいる。
賑わう食事処の隅には、Aランクパーティ『ランド・エッジ』の姿もあった。
彼らは昼間とは違い、各々の武器を傍らに置いて、リラックスした様子で食事をしていた。
(よし、今だ!)
私は両親の手伝いを装い、食事処の様子を見ていた。
昼間は忙しさやロイドの耳への興奮で鑑定ができなかったが、今がチャンスだ。
カウンターの影から、ランド・エッジが脇に置いた武具を鑑定していく。
(カイお兄ちゃんの剣を鑑定!)
『鑑定結果:鋼の長剣、ランク:A、製作:トール・フレイム』
(ロイドお兄ちゃんの鎧を鑑定!)
『鑑定結果:獣人専用の鎧、ランク:A、製作:トール・フレイム』
(ローラお姉ちゃんの杖を鑑定!)
『鑑定結果:魔法杖、ランク:A、効果:魔力効率上昇、製作:A級ダンジョン』
(リズお姉ちゃんの弓を鑑定!)
『鑑定結果:エルフ族の弓、ランク:S、効果:風魔法付与、製作:不明』
(わあ、やっぱりすごいや!特にリズお姉ちゃんの弓はランクS!初めて鑑定したわ!)
ランクSという最高峰のアイテムを鑑定できたことに興奮するが、残念ながら鑑定スキルはレベルアップしなかった。
(それにしても、鑑定スキルのレベルが4になって、ランクと効果、製作について分かるようになったけど、リズお姉ちゃんの製作については表示されなかったのはなぜ?)
≪表示されない要因の1つとして、製作者が人族ではない可能性があります。鑑定スキルがカンストであるレベル10になると全て表示されるようになります≫
(レベル10?!まだまだ先だなぁ。それにしても、人ではない...?まさかね...)
それからも、カウンターから見える範囲でランド・エッジパーティーの装飾品や、ほかの冒険者や商人の持ち物も鑑定していく。
(やっぱり、Aランクパーティーって、すごいのね。装飾品もランクAが多いし、ダンジョンから手に入れたものも複数あったな)
冒険者たちや常連客で賑わっていた食事処も、夕食時を終えて少し落ち着きを取り戻し、家族三人で夕食を取る時間になった。
今日の夕食は、具沢山のスープと大きな丸パンだ。
私は目の前のスープを覗き込む。
スープには肉の切れ端や色々な種類の根菜がたっぷり入っている。
味付けは塩と少量のハーブだけで、素材の味が中心の素朴なものだ。
宿泊客からは「美味しいし、具も多くて満足できる」と好評だが、前世の記憶を持つ私としては、正直、薄いと感じる。
横に置かれたパンは、噛みごたえがあり、子どもにはそのままでは食べにくいほど固い。
パンはちぎってスープに浸し、柔らかくしてからでないと、食べられない。
(うーん、前世の記憶があると、食事の時間だけは地球が恋しくなるな)
≪セリア様が、もう少し大きくなられたら食事も改善されますよ≫
(え?どういうこと?改善って?)
しかし、質問しても、ナビはそれ以上は何も言わなかった。
気を取り直して、私は両親に今日の出来事を話すことにした。
「ママ、パパ、セリアね、今日はお外でいっぱい遊んだの!」
私は、満面の笑みで両親に報告する。
パパは、私の頭を撫でながら、
「そうか、外で遊べて良かったな。危ないことはなかったか?」
と、優しく聞いてくれた。
「うん!レンおにーちゃんたちと、追いかけっこしたり、お砂場で遊んだりしたの。セリアね、町の外には絶対に行かないって、ママと約束したから、ちゃんと町の中で遊んだよ」
私が町の子たちの名前を出し、約束を守ったことを強調すると、両親は顔を見合わせてホッと息をついた。
「公園楽しかったよ。今度、パパとママも一緒に行こうね」
両親の私を見る目が、心配から安堵へと変わっていくのを私は見逃さない。
「よかったわね、セリア。やっぱり、子供は外で遊ぶのが一番ね。明日も、遊びに行ってもいいからね」
母のエリーナが、目を細めて微笑んでくれた。
(これで、明日からも心置きなく外出出来るわね!)
私は、無事に外出許可を確実なものにできたことに満足し、スープに浸したパンを口に運んだ。
夜になると、両親からおやすみのキスをもらい、いつものようにベッドに入った。
両親が部屋を出て、ドアが閉まったのを確認する。
(ナビ、夕方に話してた提案って何かな?)
≪セリア様、外で鑑定スキルのレベルアップを始めるにあたり、一つ提案がございます≫
(はい!)
≪歴代転生者アンケート第9位「異世界怖すぎ、危険な魔物は避けて旅をしたかった。」との声により実装された『サーチ』の活用です≫
(サーチ?)
≪はい。現在、セリア様は鑑定スキルレベル6の習得を目指しておられますが、効率的にランクB以上のアイテムを見つけるには、あらかじめ目星をつけることが重要です。『サーチ』は、この情報収集を大幅に効率化します≫
(鑑定スキルとは違うの?)
≪『サーチ』は、自分の魔力を体外に薄く広げ、その範囲内に存在する特定の対象の位置や、セリア様が求める情報を捕捉するためのスキルです。鑑定スキルと異なり、魔力コントロールが必須となります≫
(鑑定みたいに詠唱だけでは上手くいかないってことね)
≪『サーチ』は魔力を体外に放出し、その際に一定の薄さを保って周囲に広げる必要があります。これは、将来的にセリア様が実際に魔法を使う際の、魔力コントロールの練習としても最適です≫
(カモフラージュに必要な鑑定レベル6へのアイテム探しと、魔法の練習を同時にできるってことね!さすがナビ!)
≪ただし、魔力を体外に放出するのは初めての試みです。万が一、魔力コントロールを誤った場合を考慮し、最初は必ずベッドの上で行ってください≫
「わかった!」
ナビの言葉に、私はベッドの中で静かに頷く。
≪まずは魔力を薄く、半径10メートル程度の範囲に広げるイメージです。詠唱は『サーチ』、それでは始めてください≫
私は深く息を吸い込み、魔力を集中させた。
「サーチ」
静かに唱えると、身体の内側から、私の魔力が溢れ出すように放出されていくのを感じた。
(あれ?薄くって言われたけど、なんかすごく出ちゃったかも...)
ナビの忠告を思い出したときには既に遅く、大量の魔力が、目に見えない波紋のように宿全体へと広がっていく。
その直後、視界が白く光ったような気がした。
そして、私の脳内には大量の情報が流れ込んできた。
その情報とは、半径10m以内にある、隣で眠る両親の姿、宿に宿泊している冒険者や商人の位置や持ち物、そして宿に使われている木材、釘まで、全ての情報が一気に流れ込んできた。
「ッ...うぅ...」
情報の奔流は、幼い私の脳には負担が大きすぎた。
頭が割れるような激しい痛みに襲われ、私はそのまま意識を保てなくなり、目を閉じた。
【お礼】
評価やリアクションをありがとうございます。
本当に読んでくれている方がいるのだと、実感して嬉しく思っています!




