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【初心者安心パック】は歴代転生者アンケートから生まれました~いつの間にか聖女扱いされて困ってます~  作者: 紫陽花


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6/12

歴代転生者アンケート第9位

【お詫び】

5話でサファイアブルーの瞳の色について詳細を書いたつもりでいましたが、抜けていました。

サファイヤブルーは聖魔法の適性がある者に現れる色となっております。

その一文を追加しております。申し訳ありません。

 日の傾き始めた頃、私は遊んでくれた子供たちに笑顔で手を振り、家へと急いだ。


 家に帰ると、ちょうど夕食時で、食事処は活気に満ちていた。

 その日の夕方に町に到着したばかりの冒険者や商人が、食事を求めてテーブルを囲んでいる。


 賑わう食事処の隅には、Aランクパーティ『ランド・エッジ』の姿もあった。

 彼らは昼間とは違い、各々の武器を傍らに置いて、リラックスした様子で食事をしていた。


(よし、今だ!)


 私は両親の手伝いを装い、食事処の様子を見ていた。

 昼間は忙しさやロイドの耳への興奮で鑑定ができなかったが、今がチャンスだ。

 カウンターの影から、ランド・エッジが脇に置いた武具を鑑定していく。


(カイお兄ちゃんの剣を鑑定!)

『鑑定結果:鋼の長剣、ランク:A、製作:トール・フレイム』

(ロイドお兄ちゃんの鎧を鑑定!)

『鑑定結果:獣人専用の鎧、ランク:A、製作:トール・フレイム』

(ローラお姉ちゃんの杖を鑑定!)

『鑑定結果:魔法杖、ランク:A、効果:魔力効率上昇、製作:A級ダンジョン』

(リズお姉ちゃんの弓を鑑定!)

『鑑定結果:エルフ族の弓、ランク:S、効果:風魔法付与、製作:不明』


(わあ、やっぱりすごいや!特にリズお姉ちゃんの弓はランクS!初めて鑑定したわ!)


 ランクSという最高峰のアイテムを鑑定できたことに興奮するが、残念ながら鑑定スキルはレベルアップしなかった。


(それにしても、鑑定スキルのレベルが4になって、ランクと効果、製作について分かるようになったけど、リズお姉ちゃんの製作については表示されなかったのはなぜ?)


≪表示されない要因の1つとして、製作者が人族ではない可能性があります。鑑定スキルがカンストであるレベル10になると全て表示されるようになります≫


(レベル10?!まだまだ先だなぁ。それにしても、人ではない...?まさかね...)


 それからも、カウンターから見える範囲でランド・エッジパーティーの装飾品や、ほかの冒険者や商人の持ち物も鑑定していく。


(やっぱり、Aランクパーティーって、すごいのね。装飾品もランクAが多いし、ダンジョンから手に入れたものも複数あったな)



 冒険者たちや常連客で賑わっていた食事処も、夕食時を終えて少し落ち着きを取り戻し、家族三人で夕食を取る時間になった。


 今日の夕食は、具沢山のスープと大きな丸パンだ。


 私は目の前のスープを覗き込む。

 スープには肉の切れ端や色々な種類の根菜がたっぷり入っている。

 味付けは塩と少量のハーブだけで、素材の味が中心の素朴なものだ。

 宿泊客からは「美味しいし、具も多くて満足できる」と好評だが、前世の記憶を持つ私としては、正直、薄いと感じる。


 横に置かれたパンは、噛みごたえがあり、子どもにはそのままでは食べにくいほど固い。

 パンはちぎってスープに浸し、柔らかくしてからでないと、食べられない。


(うーん、前世の記憶があると、食事の時間だけは地球が恋しくなるな)


≪セリア様が、もう少し大きくなられたら食事も改善されますよ≫


(え?どういうこと?改善って?)


 しかし、質問しても、ナビはそれ以上は何も言わなかった。

 気を取り直して、私は両親に今日の出来事を話すことにした。


「ママ、パパ、セリアね、今日はお外でいっぱい遊んだの!」


 私は、満面の笑みで両親に報告する。

 パパは、私の頭を撫でながら、

「そうか、外で遊べて良かったな。危ないことはなかったか?」

 と、優しく聞いてくれた。


「うん!レンおにーちゃんたちと、追いかけっこしたり、お砂場で遊んだりしたの。セリアね、町の外には絶対に行かないって、ママと約束したから、ちゃんと町の中で遊んだよ」


 私が町の子たちの名前を出し、約束を守ったことを強調すると、両親は顔を見合わせてホッと息をついた。


「公園楽しかったよ。今度、パパとママも一緒に行こうね」


 両親の私を見る目が、心配から安堵へと変わっていくのを私は見逃さない。


「よかったわね、セリア。やっぱり、子供は外で遊ぶのが一番ね。明日も、遊びに行ってもいいからね」

 母のエリーナが、目を細めて微笑んでくれた。


(これで、明日からも心置きなく外出出来るわね!)


 私は、無事に外出許可を確実なものにできたことに満足し、スープに浸したパンを口に運んだ。




 夜になると、両親からおやすみのキスをもらい、いつものようにベッドに入った。

 両親が部屋を出て、ドアが閉まったのを確認する。


(ナビ、夕方に話してた提案って何かな?)


≪セリア様、外で鑑定スキルのレベルアップを始めるにあたり、一つ提案がございます≫


(はい!)


≪歴代転生者アンケート第9位「異世界怖すぎ、危険な魔物は避けて旅をしたかった。」との声により実装された『サーチ』の活用です≫


(サーチ?)


≪はい。現在、セリア様は鑑定スキルレベル6の習得を目指しておられますが、効率的にランクB以上のアイテムを見つけるには、あらかじめ目星をつけることが重要です。『サーチ』は、この情報収集を大幅に効率化します≫


(鑑定スキルとは違うの?)


≪『サーチ』は、自分の魔力を体外に薄く広げ、その範囲内に存在する特定の対象の位置や、セリア様が求める情報を捕捉するためのスキルです。鑑定スキルと異なり、魔力コントロールが必須となります≫


(鑑定みたいに詠唱だけでは上手くいかないってことね)


≪『サーチ』は魔力を体外に放出し、その際に一定の薄さを保って周囲に広げる必要があります。これは、将来的にセリア様が実際に魔法を使う際の、魔力コントロールの練習としても最適です≫


(カモフラージュに必要な鑑定レベル6へのアイテム探しと、魔法の練習を同時にできるってことね!さすがナビ!)


≪ただし、魔力を体外に放出するのは初めての試みです。万が一、魔力コントロールを誤った場合を考慮し、最初は必ずベッドの上で行ってください≫


「わかった!」


 ナビの言葉に、私はベッドの中で静かに頷く。


≪まずは魔力を薄く、半径10メートル程度の範囲に広げるイメージです。詠唱は『サーチ』、それでは始めてください≫


 私は深く息を吸い込み、魔力を集中させた。


「サーチ」


 静かに唱えると、身体の内側から、私の魔力が溢れ出すように放出されていくのを感じた。


(あれ?薄くって言われたけど、なんかすごく出ちゃったかも...)


 ナビの忠告を思い出したときには既に遅く、大量の魔力が、目に見えない波紋のように宿全体へと広がっていく。


 その直後、視界が白く光ったような気がした。


 そして、私の脳内には大量の情報が流れ込んできた。

 その情報とは、半径10m以内にある、隣で眠る両親の姿、宿に宿泊している冒険者や商人の位置や持ち物、そして宿に使われている木材、釘まで、全ての情報が一気に流れ込んできた。


「ッ...うぅ...」


 情報の奔流は、幼い私の脳には負担が大きすぎた。

 頭が割れるような激しい痛みに襲われ、私はそのまま意識を保てなくなり、目を閉じた。




【お礼】

評価やリアクションをありがとうございます。

本当に読んでくれている方がいるのだと、実感して嬉しく思っています!

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