濃いサファイアブルーの瞳
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母が食事を運んできた。
「お待たせしました。オークのステーキは、ロイドさん……の分かしら?」
「そうだ。よく分かったな」
「獣人の方はお肉が好きだから、そうかなと思ったのよ」
母が「ふふっ」と笑顔をロイドに見せながら、オークのステーキをテーブルに置いた。
その様子を見ていた、パーティーリーダーのカイが、
「セリアちゃんは、お母さん似だな。瞳の色も似てるし、将来美人で間違いないな!」
と、私に笑顔を向けた。
「それにしてもセリアちゃんの瞳は、本当に濃いサファイアブルーね。ここまで濃い色は珍しいわね」
ローラに、ジッと瞳を見つめられる。
「聖女様の瞳の色と似ているわ」
エルフのリズもローラに同調するように答えた。
(えぇー! 聖女様と瞳の色似てるの?)
≪聖女様は、聖魔法の使い手ですので、濃いサファイアブルーの瞳をしています。セリア様の瞳が濃いサファイアブルーであるのも、聖魔法への適性があるためです≫
(たまに瞳を見て、将来楽しみだって言われてたのは、聖魔法の適性があるからだったの? 言い伝えでは、聖女様は銀髪にサファイアブルーの瞳を持って生まれてくるんだよね?)
≪はい、聖女は必ず銀髪にサファイアブルーの瞳を持って生まれます≫
まさか、瞳の色で聖魔法の適性があることまで分かってしまうとは思わなかった。
「リズおねーちゃんは聖女様見たことあるの?」
「百二十年ほど前かしら? 一度会ったことがあるわ」
(え? リズお姉ちゃんは、いくつなんだろう……? さすがエルフ……)
「そういえば、聖女様が誕生したって王都では噂になってるわ」
ローラの話では、すでに聖女が誕生しているらしい。
「公爵家の娘という話だし、正式に発表があったわけじゃないから、周りには言わないようにな!」
カイが「シィー」と、口元に指を一本立てる。
私も慌てて、両手で口元を押さえて、言わないよという意味を込めて首を縦に何度も振った。
その後は、食事の邪魔をしないように、受付やほかの宿泊客の注文を聞いたりして、いつも通りに手伝いをしていた。
しかし、ランド・エッジのテーブルの近くを通るときに聞こえる会話が気になった。
「やはり、辺境都市ディナに向かう冒険者が増えているな。魔物が増加しているという話は本当だ」
リーダーのカイが静かに言った。
「ああ、特にディナ周辺の森は、魔物が手強くなっていると聞く。ギルドの報酬が上がっているのもそのせいだろう。今回は報酬に釣られてディナの近くまで来たが、この調子だと、しばらくディナ周辺で稼げそうだ」
パーティーメンバーの意見に同調するように、エルフのリズが静かに頷いた。
魔物が増加しているという情報は、宿泊客の間でも時折話題になっていた。
「だが、暗い話ばかりではない。聖女様という希望もある。魔王が強くなると聖女が生まれるというのは、本当らしいな」
カイが先ほどより小さな声で話した。
(ナビ、魔王の力が強くなると、聖女様が生まれるって本当?)
≪はい、テラリスの歴史から、その可能性が非常に高いです。魔王が討伐されてから、百年〜百五十年程度で、魔物の強さが全体的に1ランクアップする現象が起きています。魔王が強くなると、勇者、賢者、聖女の中から一人以上が現れ、魔王を討伐するという歴史が繰り返されています≫
(一人ってこともあるの? 一人で、魔王に対抗できるの?)
≪一人しか現れない時は、かなり厳しい戦いになったようです≫
一人以上って何か隠されているような気がするけど、とりあえずは自分ができることからしておこう。
あの時、私が聖女を選択していたら、みんなの希望になったのかな? でも、それだときっと今のパパとママには会えなかったよね。
聖女は選ばなかったけど、私なりにみんなの力になれるように頑張ろう。
ランド・エッジが食事を終え、部屋へ戻るのを見送った後、私はテーブルを片付けている母に、今しかないと恐る恐る声をかけた。
「ママ、セリアね、お外で遊びたいな! お外でおにーちゃん、おねーちゃんたちと、いっぱい遊びたいの!」
母のエリーナは心配そうな顔をする。
「そうね、しっかりしてるから忘れがちだけど、まだ三歳だものね。手伝いは気にしないで、お外でたくさん遊んでいいのよ。だけど、町の外には絶対に出ないこと。そしてご飯の時間には戻ってきてね」
母は、あっさりと許可してくれた。
これも、普段の行いが良いからだろう。
その日の昼食後、私はさっそく宿の裏口から外へ出た。
初めての一人での外出だ。
宿から数分離れた場所にある小さな公園へ向かう。
公園には、近所に住む子供たち四人が遊んでいた。
茶髪の活発そうな男の子レン(七歳)、おさげの優しそうな女の子リーネ(六歳)、そばかすのあるお転婆な女の子ココ(五歳)、そして一番おとなしい男の子ヨシュア(六歳)だ。
みんなの元へ、よちよちと近づいていく。
「わあ、宿屋のセリアちゃんだ! 一人で来たの?」
私は、満面の笑みを向ける。
「うん! おにーちゃん、おねーちゃん、セリアもいっしょにあそびたいの!」
全員が私の笑顔にメロメロになり、私を遊びの輪に入れてくれた。
遊びの合間、私はこの町の情報収集を始める。
ターゲットは、鑑定スキルレベルアップのヒント。
すなわち、ランクB以上のアイテムを見つけられる可能性のある場所だ。
「ねえねえ、おにーちゃんたち。このまちで、なにかすごいものってある? セリアね、おにーちゃんたちの知ってること、ぜんぶ知りたいな!」
私が甘えると、子供たちは競うように自分が知っている町の秘密を教えてくれた。
「すごいものなら、近くの武器屋のおじさん! 顔はすごく怖いけど、子供には超優しいんだ。行くとお菓子をこっそりくれるよ」
とレンが教えてくれた。
(武器屋! 高ランクの武器があれば鑑定できるわ!)
「あとね、花屋のお姉さん! 綺麗な花を摘んで持って行くと、たまに買い取ってくれるんだよ!」
とリーネが声を弾ませる。
(珍しい花や植物は、ランクが高い可能性があるわね)
「町の広場の近くにある薬屋のおばあさんもだよ! そこらへんに生えてる薬草を見つけて持っていくと買い取ってくれるの!」
とココが付け加える。
(薬草! これも高ランクのものがありそうだし、今後鑑定で見つけた薬草があったら、持ち込むのにもよさそう)
さらにヨシュアは、公園から少し離れた場所にある屋台の情報をくれた。
「おなかがすいてる時に、串焼きのおじさんのお手伝いをすると、串を一本くれるんだ」
(すごい! 子供たちの情報ネットワーク、なかなかあなどれない!)
武器屋、花屋、薬屋、子供でも入りやすいお店が知れたのは、とても大きいわ!
鑑定スキルレベルアップに必要な高ランクアイテムは、教えてもらった場所から行ってみよう。
明日から、また忙しくなるわね。
そのあとは、皆にたっぷり遊んでもらい、日が傾き始めた頃、笑顔で皆に手を振った。
「ばいばーい! またあそぼうね!」
「うん、またあそぼうね!」
「セリアちゃん、またねー」
(ナビ、明日から忙しくなるね。明日は武器屋に行くよ)
≪セリア様、自宅に戻られましたら、ご提案がございます≫
(なんだろう? ドキドキしちゃうな! 新しいことを始めるのかな?)
ナビの提案が気になりながらも、自宅へと急いだ。




