Aランク素材を発見
魔法の修行は、予想を遥かに上回る成果だった。
ナビが「もはや私の予測は意味をなしません」と解析を投げ出すほどの凄まじい上達ぶりで、私は基礎の『ウォーターボール』だけでなく、上級の派生魔法である『アイス・スピア』まで使いこなせるようになったのだ。
(思ったよりスムーズに習得できちゃった。今日はこれくらいにして、帰る前に一時間ほど周辺で採取をしていこうかな!)
少し離れた場所で、唖然とした表情のまま固まっているガウルに声をかける。
「ガウルお兄ちゃん!魔法の練習は一旦おしまい。帰る前に、少しだけこの辺りで薬草の採取をしてもいい?」
「……え?ああ、はい。構いませんが……。……あの、セリアさん。先ほど、上級魔法のアイス・スピアを使用しませんでしたか?魔法の練習を始めたばかりでは、ありませんでしたか?しかも、四歳ですよね……?あれ?私、もしかして夢でも見ているんでしょうか。それとも、さっき食べたマヨネーズというソースに幻覚作用でもあるのでしょうか……」
ガウルは眉間にしわを寄せ、自分の記憶を疑うように何度も首を振っている。
彼から見ても、四歳の子供がさらりと地形を変えるほどの魔法を放つなど、常識の範疇を完全に超えているようだ。
「えへへ、ちょっとコツを掴んじゃったみたい!」
「『ちょっと』で済むような話ではないと思いますが……。はは、セリアさんが規格外すぎて、私のこれまでの常識が音を立てて崩れていくようです。……わかりました、採取ですね。お供しましょう」
ガウルはどこか遠い目をして、深い溜息をつきながらも頷いてくれた。
(サーチ!)
私は周辺の状況を確認するために半径50メートル程度にサーチを行う。
すると、つい先ほどアイス・スピアで粉砕した大きな岩の破片が散らばるあたりに、ポツン、ポツンと二つの紫色に光る反応が見えた。
(ん……?なんだろう、あの紫色の光。二つもある。岩が砕けて、岩の下にあった何かが露出してるみたいだけど)
「ガウルお兄ちゃん、あそこの岩の破片をどかしてみてくれる?何かあるみたい」
「あそこの岩の下ですか?わかりました。……よっと!」
ガウルが、砕けた岩の塊を脇へどかす。
すると、土の中から赤茶色でキラキラした物体が二枚、姿を現した。
「これ、なんだろう……?綺麗だけど、すごく硬そう」
それは、大柄なガウルの手のひらよりもさらに一回り大きい、立派な鱗だった。
私が不思議そうにそれを見つめていると、横でガウルが「……っ!?」と目を見開いた。
「これは……竜の鱗ですね。地竜のようです。この大きさからすると、かなりの大型個体のもののようですよ。しかも二枚も……!」
「じりゅう……竜なの!?鑑定!」
思わず鑑定を試みる。
『鑑定結果:地竜の鱗、ランク:A、強力な魔力を帯びた地竜の鱗』
(すごい本当に竜っているんだ!さっき、サーチで見えたあの紫色は、Aランクの素材を示していたんだ。鑑定の結果と一致するし、これからは紫色が見えたらお宝確定だね!)
「地竜の鱗で、Aランクって出たよ。ガウルお兄ちゃん、ここには竜がいるの?」
「いえ、この辺りで地竜の目撃情報など聞いたことがありません。これほど大きな岩の下から出てきたとなると、大昔の冒険者がこの場所で落としたものか、あるいは昔ここに地竜が住んでいた名残かもしれませんね」
ガウルは冒険者としての鋭い視線で周囲を警戒しながらも、その鱗を慎重に指でなぞった。
「セリアさん。目撃情報がないとはいえ、地竜の痕跡が見つかったとなれば、念のため冒険者ギルドには報告しておかなければなりません。周辺の危険度に関わる問題ですから、私が報告してもよいでしょうか?」
「そっか……そうだよね。わかった、じゃあこの鱗、二枚ともガウルお兄ちゃんに預けてもいい?」
「ええ、責任を持って報告させていただきます」
私は拾い上げた大きな鱗を二枚ともガウルに手渡した。
(私みたいな四歳の子供がこんなものを持ってギルドに行ったら、間違いなく大騒ぎになっちゃうもんね。信頼できるガウルお兄ちゃんに任せるのが一番だよね)
「それからガウルお兄ちゃん。そのうちの一枚は、もしギルドでそのまま売れそうなら、売ってきてもらってもいいかな?」
「……売ってしまうのですか?地竜の鱗は、極めて高い防御力を持っているので、防具の素材として最高級の価値がありますよ。これほどの品なら相当な額になりますが……私が代理で売ってきてもよろしいのですか?」
「うん。セリアが売ろうと思ったら騒ぎになりそうだから。ガウルお兄ちゃんに、冒険者ギルドで売れそうならそのまま売ってほしいんだ」
「わかりました。セリアさんのためにも、足元を見られないようしっかり交渉してきますね」
ガウルはニコッと笑って、私の頼みを頼もしく引き受けてくれた。
採取を終えた私たちは、夕暮れに染まり始めた道を歩いて街へと戻った。
宿の入り口まで送ってもらい、私はガウルに向き合う。
「送ってくれてありがとう、ガウルお兄ちゃん!今日はとっても楽しかったよ!」
「こちらこそ。セリアさんの規格外な魔法と、驚くほど美味しい料理に翻弄された一日でしたが……とても楽しかったです」
ガウルはそう言うと、懐の鱗を大事そうに押さえた。
「私はこれから、ギルドへ報告に行ってきます。セリアさんは宿でゆっくり休んでくださいね」
「うん!じゃあ、また明日の朝、受付で待ち合わせね。明日もまた、一緒に外に行こう!」
「ええ、約束です。明日の朝、受付で待ってますね」
ガウルは軽く手を振ると、足早に冒険者ギルドの方へと向かっていった。
私はその背中を見送りながら、宿の扉をくぐる。
(ふふふ、今日は魔法も覚えたし、臨時収入も期待できそう。明日は何をお願いしようかな!)
アイテムボックスの中にある調味料の残りを確認しながら、私は明日への期待に胸を膨らませるのだった。
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