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【初心者安心パック】は歴代転生者アンケートから生まれました~いつの間にか聖女扱いされて困ってます~  作者: 紫陽花


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27/30

防御スキルとガウルの苦悩

 誕生日から一夜明けた朝。

 約束通り、ガウルが私を街の外に連れ出そうと宿の受付で待っていてくれた。

 彼の姿を見つけるなり、私は笑顔で駆け寄った。


「ガウルお兄ちゃん、おはよー!」

「セリアさん、おはようございます」


 ガウルも私に気づき、笑顔を向けてくれる。


「ガウルお兄ちゃん、街の外に行く前に、ちょっとお買い物に付き合ってもらえないかな?」

「はい、もちろんです!」


 私は彼の手を引き、まずは活気ある市場の通りへと向かった。





 最初に訪れたのは、この街でも取り扱っている肉の種類が多いと有名な肉屋だ。

 店先には少し強面のお兄さんがいる。


「お兄ちゃん、こんにちは!牛肉を二キロと、オーガの肉を一キロください!」

「おいおい、お嬢ちゃん。魔獣の肉は高いぞ?全部で小金貨2枚だけど払えるのか?」


 魔獣の肉はやはり高価だ。

 豚肉に似ているというオーガの肉を一キロ選んだだけでも、四歳の子供が買うには相当な贅沢品。

 本当はコカトリスの肉も欲しかったけれど、今回は予算の関係で断念した。


 私は鞄から小さな巾着を出し、小金貨二枚を取り出した。


「小金貨二枚ね!はい、これでちょうどよ!お兄ちゃん、全部厚切りにしてくれる?」

「おぅ、厚切りだな!待ってな」


 肉屋のお兄さんは一瞬驚いた顔をしたが、すぐ商売人の顔に戻り、手際よく肉を切り分けていく。


「ちょっと重たいが持てるか?」

「私が持ちましょう」


 合計三キロの肉は四歳には重すぎる。

 ガウルが代わりに受け取ってくれた。


 店を後にして、私は建物と建物の間の人目に付かない路地へガウルを連れていく。


「セリアさん、どうされましたか?」

「お肉をアイテムボックスに入れておこうと思ったの。ガウルお兄ちゃん持ってくれて、ありがとう」

「いえいえ、このぐらいいくらでも持ちますよ。そうですね、セリアさんのアイテムボックスは鮮度も保つことが出来ましたね」


 ガウルからお肉を受け取り、鞄にしまうふりをしながら、アイテムボックスへと収納していく。


(収納!うんうん、本当にアイテムボックスって便利!)



「まだ、行きたいところがあるんだ。もうちょっと付き合ってね」

「もちろんです。ゆっくりお買物をしてください。どこまでもお付き合いします」




 次に向かったのは、少し落ち着いた雰囲気の魔道具屋だ。


「魔道具屋?セリアさん、魔道具は高級品ですよ。何を購入されるのですか?」

「ずっと前から狙っていたものがあるんだー」


 私が指差したのは、棚の奥にある金属製の四角い道具。

 魔石をエネルギー源にして火を出す『携帯型魔導コンロ』だ。


「これ、ください!あと、これに入れる火の魔石もください」


 コンロが小金貨二枚、魔石が銀貨五枚。

 日本円にして約二万五千円。迷わず支払う私を見て、ガウルはついに絶句した。


「セ、セリアさん……そんな大金、どこで……」

「えへへ、薬草採取で頑張って貯めたんだよ。ガウルお兄ちゃん、今日のお昼は期待しててね!」

「まさか、さきほどのお肉は、今日のお昼ご飯の食材だったのですか?私も、払います!」

「いいの!色々とガウルお兄ちゃんにお願いしたいことがあるから、これは『賄賂』なのよ!」

「賄賂ですか...そんなものがなくても、セリアさんのお願いなら危ないことではない限り、断りませんよ」

「あ、あはは。私が、ガウルお兄ちゃんと食べたいだけだから、気にしないで」


(危ないこと...うーん、断られちゃうかな...)

 

 その後も西門に向かう途中で、フライパンやお皿など必要なものを次々と購入し、私のアイテムボックスはどんどん充実していった。



 西門を出てしばらく歩き、街道から外れた人目に付きにくい場所へ移動した。

 周囲に誰もいないことを確認して、私はガウルに向き直った。


「ガウルお兄ちゃん、相談があるんだけど、聞いてくれる?」

「はい、どうしましたか?」


 真剣な瞳で見つめてくる彼に、私は意を決して告げた。


「あのね……ガウルお兄ちゃんのことは、お友達と思ってるの。もう、親友だと思ってるよ」


 ガウルは一瞬呆然とし、それから耳まで赤くして顔を綻ばせた。


「……僕も、です。セリアさんが私の初めての友人ですが……親友と言ってもらえるなんて。僕も、セリアさんのことをそう思っても良いのでしょうか?」

「もちろんだよ!それで親友のガウルお兄ちゃんにお願いがあるの」

「はい!何でも言ってください!」


 勢いよく胸を叩く彼に、私は満面の笑みで告げた。


「じゃあ……セリアのこと、叩いて!」

「はい!もちろんで……す?」


 反射的に良い返事をしたガウルだったが、すぐに内容を理解して顔面を蒼白にさせた。


「……え!?い、いや、無理です!何を言っているんですか!?そんなこと、できるわけがありません!!」


 私は慌てて、防御スキルのレベルを上げるには衝撃が必要なこと、このままでは魔物に襲われた時に危険なことを必死に説明した。


「お願い!こんなことを頼めるのは親友のガウルお兄ちゃんしかいないの!」

「ううぅ...でも、叩くなんて...」


 頭を抱えて悩むガウルに、私は少し申し訳なくなってきた。


「そうだよね……無理なお願いしてごめんね。ちゃんと戦ってレベル上げすることにするよ……」

「え?戦うって魔物とですか!?」

「少しでも安全にレベル上げようとしたけど、こんなのズルだよね……」


 私が視線を落とすと、ガウルはしばらく黙り込んでいたが、やがて決意したように顔を上げた。


「……わかりました。協力します。安全にレベル上げができるなら、その方がいい。ただ、もう少し街から離れましょう」


「え?本当?ガウルお兄ちゃん、ありがとう!」




 私たちはさらに離れた大きな木の陰まで移動した。

 しかし、いざとなると子供である私を叩くのはかなりの抵抗があるのだろう。

 ガウルの拳が小さく震えているのがわかった。


(ナビ、ガウルお兄ちゃんに鑑定スキルのこと伝えようと思う)

≪はい。お伝えしたほうが、ガウル様も協力するとき安心だと思います≫


「ガウルお兄ちゃん、私は鑑定スキルを持ってるんだ。自分のステータスを確認しながら力の調整をお願いするから、安心して!」

「か……鑑定!!!」


 ガウルは驚愕したままフリーズしてしまった。


「ガウルお兄ちゃん...?大丈夫...?」

「いまセリアさん、なんといいましたか?」

「え?鑑定スキルを持っていて...」

「はぁ.........」


 ガウルは大きなため息をつくと、その場にしゃがみこんで、私と視線を合わせた。


「セリアさん……鑑定スキルを持っていることは絶対に秘密にしてください。あぁ、どんどん秘密が増えていく……」

「うん、セリアはガウルお兄ちゃんだから言ったの。パパやママにも秘密にしてるよ」

「もちろん、困ったことがあれば、僕が力になりますが、いつも近くにいるとは限りません。僕がいない時は、必ずご両親に相談するんですよ」

「うん、わかった」


(ガウルお兄ちゃん、きっともっと色々聞きたいことはあるはずなのに、何も言わないで心配だけしてくれるなんて、本当に良い人すぎるよ......)



「えーっと、それじゃあ、準備するね。バリア!鑑定!」


 言葉にしなくても鑑定スキルは使用できるが、ガウルにも分かりやすいように言葉にする。


【鑑定結果】

 セリア

 レベル:1

 体力:30(防御+50)

 魔力:999,999

 魔法属性:火、水、風、土、聖

 スキル:魔力カンスト、防御スキル、鑑定、サーチ、経験値増加、アイテムボックス、言語理解、地球調味料セット


「うーんとね、防御スキルを使うと体力にプラス50つくんだ」

「わかりました。では、肩あたりを叩いてみますね。本当にいいんですね...?」

「うん、お願い!」

「……わかりました。ですが、まずは軽く、本当に軽くですからね」


 ーポン


 そっと肩を叩かれた。

 衝撃はまったくないが、叩かれたという認識だけはある不思議な感覚だ。


(なんか、不思議な感じだなぁ。どれどれ、いまのでどのぐらい減ったんだろう?)


【鑑定結果】

 セリア

 レベル:1

 体力:30(防御+20)

 魔力:999,999

 魔法属性:火、水、風、土、聖

 スキル:魔力カンスト、防御スキル、鑑定、サーチ、経験値増加、アイテムボックス、言語理解、地球調味料セット


「うーんと、防御分が30減ったよ。もう少し強くてもいいよ!」

「わかりました...」

「バリア!お願いします!」


 防御スキルを新たに張り直し、ガウルにお願いする。


 ―ボン


【鑑定結果】

 セリア

 レベル:1

 体力:30

 魔力:999,999

 魔法属性:火、水、風、土、聖

 スキル:魔力カンスト、防御スキル、鑑定、サーチ、経験値増加、アイテムボックス、言語理解、地球調味料セット


「す、すごい!!!ガウルお兄ちゃん!ぴったりだよ!!防御スキルだけなくなってる!!すごい!すごい!」

「ふぅ...このぐらいの力が50ですか、わかりました」

「じゃあ、続けていっくよーー!バリア!!」

 ーボン


 コツを掴んだガウルは、そこからリズムよく私を叩き始めた。

 私は攻撃を受けるたびに防御スキルをかけ直す。


「バリア!!」ーボン

「バリア!!」ーボン

「バリア!!」ーボン

「バリア!!」ーボン



 何度続いただろうか。

(なんだか、餅つきみたいだなぁ……)

 なんて考えていた時だった。


『防御スキルがレベル2になりました』


「や、やったーー!ガウルお兄ちゃん!レベル上がったよ!!」

「おめでとうございます、セリアさん!!」

「ガウルお兄ちゃんのおかげだよ!本当にありがとーー!」


 私とガウルは手を取り合い、私はその場で飛び跳ねて喜んだ。


≪セリア様、おめでとうございます。経験値増加スキルをお持ちということもありますが、かなり早いペースでレベルが上がりましたね≫

(うん!ナビも、ありがとう!)


 経験値増加スキルの効果もあり、わずか二十回ほどの打撃でレベルが上がった。

 私はワクワクしながら、もう一度『防御スキル』を使用し、自分のステータスを確認する。


「レベルアップでどのくらい防御力は上がったのかな?バリア!!」


 どれどれと鑑定画面を確認する横では、ガウルが緊張した面持ちで見守っている。



【鑑定結果】

 セリア

 レベル:1

 体力:30(防御+100)

 魔力:999,999

 魔法属性:火、水、風、土、聖

 スキル:魔力カンスト、防御スキル、鑑定、サーチ、経験値増加、アイテムボックス、言語理解、地球調味料セット



「わぁ!体力にプラス100もついたよ!やったーー!!」


 私が喜ぶ横で、ガウルがパチパチと拍手をして微笑んでいる。


「あ、で、でも...100って、どのぐらいなのかな?大人ぐらい?」

「そうですね。成人女性の平均が200前後だと聞いたことがあります。まだ大人の女性には及びませんが、四歳にしては驚異的な頑丈さですよ。普通の衝撃なら、怪我一つしないはずです」


 ガウルは少し考えてから、優しく教えてくれた。


「そっか……。まだまだレベル上げたいけど、とりあえずお腹が空いちゃった!」


 気がつくと陽は真上にきている。


「そうですね。修行も一段落です。そろそろ十二時でしょうか」

「ガウルお兄ちゃん、お昼は期待してて!最高のお肉を焼くよ!」


 私は満面の笑みで、アイテムボックスから買ったばかりの魔導コンロを取り出した。


お久しぶりです。

体調を崩しており、更新に時間がかかってしまいました。

また、お楽しみ頂けたら幸いです!

いつも、応援ありがとうございます。

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