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【初心者安心パック】は歴代転生者アンケートから生まれました~いつの間にか聖女扱いされて困ってます~  作者: 紫陽花


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22/25

チキンサンドイッチとアイテムボックス

いつも、ありがとうございます。

今日もお楽しみ頂ければ幸いです。

 ディートムの朝は、清々しい空気とどこからか漂う薪の燃える匂いで始まる。

 私はパタパタと小走りで一階の厨房へと向かった。

 そこでは、父が鶏肉を焼いているところだった。


「パパ、おはよー!」

「おお、セリア。おはよう。ほら、約束通り焼き上がってるよ」


 フライパンの上で弾ける脂の音。

 パパが焼いてくれたのは、昨日の鶏肉だ。

 外側はカリッと、中は肉汁を閉じ込めてふっくらと。

 父の焼き加減はまさに神業だ。


「パパ、ありがとー!ガウルおにーちゃんと一緒に食べるね!」

「ああ。ガウルさんの言うことをよく聞いて、絶対に離れるんじゃないぞ」

「はーい!セリア、ちゃんとお利口にしてるでしゅ!」


 パパから、焼いた鶏肉とランチボックス、水筒を受け取ると、私は足早に宿の裏庭へと向かった。

 朝露に濡れた瑞々しいレタス。

 パパに既に許可はもらっているため、一番出来の良さそうなものをいくつか選ぶ。


 そして、私は自室に戻って扉に鍵をかけた。


「えっと、まずは昨日買ったパンを出さなき」


(アイテムボックスオープン、パン3つ)


 昨日パン屋で買った、大人の拳ほどもある茶色のパンを取り出す。

 アイテムボックスの中は時間が停止しているため、まだ温かさを保っている。

 これだけでも十分に美味しそうだが、今日のメインはここからだ。


(さて、地球の英知を見せちゃおうかな)


「地球調味料セット」


 私の目の前に、リストが展開される。

 そこには醤油、味噌、マヨネーズといった馴染み深い名前がずらりと並んでいる。

「……あった。『バター』と『タルタルソース』!」


 取り出したバターを、まだ温かいパンの内側にたっぷりと塗り広げる。

 その上にシャキシャキのレタスを敷き詰め、パパが焼いてくれた鶏肉を贅沢に乗せる。

 そして仕上げに、卵のコクが詰まった濃厚なタルタルソースをたっぷりとかける。


「よし、チキンサンドの完成!……あ、あとこれも忘れてた」


 リストの端っこに見つけた、一番の楽しみ。

 私は「コーラ」を二缶取り出した。

 手のひらに伝わる、冷蔵庫から出したばかりのようなキンキンの冷たさ。

 温かいサンドイッチと、冷たい炭酸飲料。

 これ以上の贅沢があるだろうか。


「アイテムボックス、収納!」


 私は出来上がったサンドイッチとコーラをアイテムボックスへ入れた。

 これで準備は万端。私は軽やかな足取りで、ガウルが待つ玄関へと向かった。




 宿の入り口には、既にガウルが立っていた。


「おはようございます、セリアさん。今日は、しっかり護衛いたします。斧はメンテナンスに出しているため、今日は代わりにこれです」


 彼が腰を叩くと、そこにはすらりとした長剣が刺さっていた。

 斧を持っていないガウルは、いつもより少しだけ「優雅な騎士」のように見える。


「ガウルおにーちゃん、おはよー!剣も似合ってるよ。かっこいい!」

「ありがとうございます。では、行きましょうか」


 私たちは朝の活気に満ちた街を抜け、西門へと向かった。

 西門をくぐり抜けた瞬間、視界がいきなり開ける。

 そこには、どこまでも続くかのような緑の絨毯――広大な平原が広がっていた。

 遠くに見える山脈は青く霞み、吹き抜ける風が草原を波立たせている。


「わぁ……ひろーい!」

「見晴らしはいいですが、油断は禁物ですよ。門からあまり離れすぎない場所で、薬草を探しましょう」


(サーチ、治癒の胞子茸)


 東門に比べて、あまり大きな木がなく草原が続いているため、治癒の胞子茸はあまり見当たらない。


(うーん、治癒の胞子茸の買取が高いから、できれば治癒の胞子茸を採取したかったけど...効率がわるいな)


(サーチ、毒消し草!)


 すると周囲にたくさんの毒消し草を示す青い光が浮かび上がる。


(毒消し草を採取したほうが効率がよさそう!)


 私は、どんどん毒消し草を採取する。



「セリアさんは、何を採取しているのですか?」


 私が、どんどんと迷いなく採取する姿を見て、ガウルが声をかけてきた。


「毒消し草でしゅよ」


 ガウルに毒消し草を見せる。


「すごいですね。毒消し草を見分けるのも、少し難しいと聞いていましたが...」


 ガウルが私の毒消し草の採取のスピードに驚いていたが、私はその後もサーチで光る場所を次々と回り、『毒消し草』を発見していった。


 一時間、二時間と経つうちに、私の周囲には三歳児が持つには到底不可能な量の薬草が積み上がっていった。

 私はガウルの死角を突いて、大きな革のカバンに手を入れるフリをしながら、次々と「収納」していった。


「アイテムボックス!収納」


 カバンは、どれだけ薬草を放り込んでも軽く、しぼんだままだ。

 ガウルは時折不思議そうに私のカバンを見ていたが、何も言わずに周囲の警戒を続けてくれた。




 太陽が天高く昇り、草原に短い影が落ちる頃。

 私はお腹の虫が鳴るのを感じて、ガウルの袖を引いた。


「ガウルおにーちゃん、お腹空いた!お昼ご飯にしよ!」

「そうですね。ちょうどいい木陰があります、あそこで休みましょう」


 私たちは大きな一本の木の下に腰を下ろした。

 ガウルは長剣を傍らに置き、一息ついている。

 私は「えっへん」と胸を張り、カバンの中に両手を突っ込んだ。


(アイテムボックスオープン、サンドイッチ3つ、コーラ2つ)


「じゃじゃーん!お昼ご飯でしゅ!」


 私がカバンから取り出したのは、大きなサンドイッチが三つ並んだ箱と、二本のコーラだった。

 それを見たガウルは、自分の目を疑うように数回まばたきをした。


「……セリアさん。そのカバン、そんなに大きくなかったはずですが……」

「とりあえず、食べてみてくだしゃい」


 ガウルの疑問には答えず、私はガウルに、特製チキンサンドイッチを手渡した。

 ガウルがそれを受け取った瞬間、彼の目が見開かれた。


「……!?あ、温かい。セリアさん、これ、温かいですよ!?」

「そうでしょ? パパが今朝焼いてくれたお肉を、昨日買ったパンに挟んだの」


 ガウルは困惑しながらも、サンドイッチから香る匂いに耐えきれなかったのか、サンドイッチを一口かじった。

 その瞬間、彼の咀嚼が止まった。


「……っ、美味しい……!濃厚なソース、こんな味、食べたことがありません。パンもまだふかふかで、肉の旨味が……!」


 大柄なガウルは、感動のあまり震える手で二つ目のサンドイッチに手を伸ばした。

 私はその隣で、キンキンに冷えたコーラを差し出す。

「こっちも飲んでみて。プシュッてするんだよ」


 教えた通りにガウルが缶を開けると、快い炭酸の音が草原に響いた。

 彼が恐る恐る口に含んだ瞬間――。

「ふごっ!?な、なんですかこのシュワシュワは!冷たい……甘い……そして鼻に抜けるこの刺激……!」


 初めて体験する「地球の味」に、ガウルは完全にノックアウトされていた。

 彼はゆっくり、しかし味わうようにサンドイッチを平らげ、最後の一滴までコーラを飲み干すと、ふぅーっと深いため息をついた。


「……セリアさん。こんなに幸せな気持ちで食事をしたのは、生まれて初めてかもしれません」




 食後の穏やかな沈黙の中、ガウルが真剣な表情で私を見つめた。


「セリアさん。……単刀直入に伺います。あなたは、アイテムボックスを持っていますね?」


 隠しても無駄だと思ったし、何よりガウルを信頼していた。


「うん!」


 私は、あっさり頷いた。


「バレちゃった?」

「……バレるどころではありませんよ。それだけ鮮度を保ち、温かいまま、しかも大量に収納できる。鞄の大きさと収納されている量が一致していませんよ。それでは周囲にすぐばれてしまいますよ。でも、そんなに簡単に認めてしまって、良いのですか?」

「ガウルおにーちゃんはお友達だもん。周りに言ったりしないでしょ?」


 私の迷いのない言葉に、ガウルは顔を覆って小さく笑った。


「……参りましたね。あなたという人は。実は、私も『アイテムボックス』を持っているんです」


 今度は私の番だった。

「えっ、おにーちゃんも!?」

「ええ。ですが、私の魔力では容量が少なくて。自分の斧を一つ入れたら、あとはリュック一つ分くらいしか入りません。セリアさんのように、食べ物を温かいまま保存するなんて芸当も不可能です」


 ガウルはそこまで言うと、少し表情を引き締めて私の瞳を覗き込んだ。


「セリアさん、よく聞いてください。あなたの瞳は、この世界でも極めて稀な『濃いサファイアブルー』。それは強力な聖魔法の適性を持つ証です。そこに加えて、その規格外のアイテムボックス。……もし教会や貴族が知れば、あなたを自由にはしておかないでしょう」


「教会には行きたくない!セリア、冒険者になって、ガウルおにーちゃんみたいにカッコいい斧を持って世界を旅したいんだもん!」


 私の宣言に、ガウルは優しく首を振った。

「斧は接近戦の武器です。相手の返り血を浴び、命のやり取りをする距離になります。セリアさん、本当に怖くはありませんか?」


 言われてみて、想像する。

 巨大な魔物が目の前に迫り、それを斧で叩き切る血なまぐさい光景。


「……う。それは、ちょっと怖いでしゅ」

「そうでしょう。それなら……『杖』を、斧の形にしてみてはどうですか?」


 その言葉に、私は雷に打たれたような衝撃を受けた。


「杖を……斧の形に?」

「ええ。魔法使いとしての能力を活かしつつ、見た目は大好きな斧の形にするんです。軽い素材で作れば、セリアさんでも持ち歩けます。バルカスさんに相談してみては、どうでしょうか?彼は実は、帝都でも名の知れた伝説的な鍛冶職人の息子なんです。腕は確かですよ」


「斧の形の杖……!かっこいい!セリア、それにする!」


 新しい目標に胸を躍らせる私に、ガウルは最後に少しだけ真面目な顔をして、私の頭をそっと撫でた。


「いいですか。今日のセリアさんの行動は、あまりに無防備でした。私の前以外では、決して不用意に『アイテムボックス』を使ったり、薬草を見つけすぎたりしてはいけませんよ」


「はい!ガウルおにーちゃん!」



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