〜side縁〜
「桜澤有紗、お前との婚約を破棄する!!そしてこの逢坂縁と婚約をする!」
あら。あの女は何の言い訳もせずにさっさと出て行ってしまったわ。
これから断罪するはずだったのに・・・。シナリオ通りにちゃんと動いて欲しいわ!!
このイベントが終わったら隠しキャラの駿貴様に会えるはずだったのに……
その上、あの女が出て行った後 5人以外の人たちは誰も祝福してくれなかった。
すごく冷たい蔑んだ目で見られて不愉快だわ。
これからゆかりはゲーム後の幸せな鏑木家の次期当主の妻になるんだから、
ゆかりに逆らった人間はぜ~んぶ良一さんに始末してもらおう。
ちょっと泣けばみんな動いてくれるから大丈夫よね。
全部上手くいくわ。今までだってイベント通りだったし。
最後だけちょっと違ったけど私は愛されるべきヒロイン だもの。大丈夫よ!!
シナリオにはなかったけどあのつるバラのネックレスは素敵だったなぁ。
良一さんか世彰がもうちょっと頑張ってくれればゆかりの物になったのに。
ゆかりにぴったりだもの。今からでもどうにかして手に入れられないか考えなくちゃ!!
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良一さんに連れられて皆で鏑木の本家に行くことになった。
そこでご両親に紹介してもらえることになったの。
お義母様はゆかりの事気に入ってくれているからあとはお義父様に気に入られるようにしなくちゃ。
結婚式は絶対に盛大なものじゃなくちゃ嫌だしね。
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「良一と桜澤有紗嬢との婚約は先ほど正式に破棄と相成った」
その言葉を聞いて私たちは歓声をあげた。やった----!!
「あの女は俺のことが好きだったんじゃない。ただの金と地位が目当ての女だ!!次期当主になるためならば仕方がないと諦めていた。だが俺は真実の愛を縁に教えられた。これからは縁と2人で生きて行く。お母様は許してくださいました。お父様、我々の婚約を認めてください!!」
「お義父様。私たちは愛し合っています。どんな苦労も2人で乗り越えて見せます。」
「「「「僕たちも皆で2人を支えて行こうと誓いました!!」」」」
辺りがシーンとなった。そうでしょう。感動の場面よね〜
「お前たちの婚約を許そう」
「「「「「ご当主様????」」」」」
「お前たちの力だけで生きて行けばよい。 鏑木の庇護から離れて何ができるか遠くから見ていよう。」
「待ってください。それはどういう意味ですか?俺は鏑木の次期当主だよ!俺がいなくなったら困るのは鏑木だ!」
「お前は廃嫡だ。今すぐ家から出ていけ。籍も正式に抜く。お前の母とも離縁する。今後は母の実家の安斎を名乗れ。お前の養育は妻に任せていたが・・・・失敗だったな。鏑木の一族の為だ。お前たち母子とは絶縁する。
手続きは弁護士に任せてある。既にお前の実家に話は行っている。実家で自分が何をしたのか考えなさい」
「あなた!!なんで?なんで縁ちゃんじゃダメなの?」
「お義父様ひどいです!!良一さんほど立派な人はいないのに。あの女に騙されてる!!」
当主は大きく 息を吐いた。
「良一。お前程度の能力の物なら鏑木にいくらでもいる。お前が次期当主と目されていたのは私の嫡男だったことと、婚約者が有紗さんだったからだ。
我々にとっての婚約や結婚は契約だ。その契約を超えるほどのメリットはその娘にもお前個人にも無い。分家も社員も使用人も、お前達には従わないだろう。今のお前にはこの一族は支えられない。一族の為にお前を切り捨てるしかない。(頭の中が)残念だよ。本当に。」
「お前は当主の妻として飾り立てる以外に何の才能もない。お前を見て、良一には賢い女性を望んだのだが・・・。やはり母に似た頭の中身の軽い女を選んでしまった。見る目もないし、人望もない。私の血も継いでいるはずなのに・・・ 」
「そして、お嬢さん。君の理論でいえば一般庶民なら誰に何を言っても許されるのかい?
桜澤のお嬢さんをお前たちは”あの女”呼ばわりかい?我々にはそんな下品な言葉は馴染みがあまりなくてねえ。
ところで、君たちはそれほどに優れているのかい?素晴らしい人間なのかい?あの有紗さんより?私はそうは思わない。我々の階級の世の中の誰もそんな事は思わないだろう。
そう思っているのは君たち5人だけだよ。君たちの味方になるような人間はいないと思うよ。でも、そんなに素晴らしい君たちならきっと実力で世の中を生きて行けるんだろう?
頑張って鏑木家を超える一族でも会社でも作ればよいよ。」
なんで?なんで?なんで?みんな絶望したみた いな顔してるの?
桜澤家から弁護士を通して正式な婚約破棄の手続きを進めるように連絡が来たんでしょ?
可愛いゆかりが新しい婚約者になるんだから、みんなもっと喜べばいいのに!!
あの女が卒業後にすぐにでも結婚して家に入ってほしいと一族が熱望していた娘?
強引に進めた縁談をぶち壊した浮気相手??
なんで?誰もがそんな顔押してこっちを見るの?
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私たち5人は玄関前まで引きずられ投げ出された。
「お坊ちゃま。もう二度とお会いすることはございません。ほんとに残念ですね(頭の中が)」
警備の男たちも皆蔑んだ目で見てる。
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「とりあえず私の実家に行きましょう。」
義母に促されて歩き出した。
「あんなこと言っているけど実際にそんな事出来るはずないわ。直ぐに謝りに来るだろうけど簡単に許しちゃだめよ。ちゃんとどちらが上か知らせなきゃ!!」
お義母様の実家の安斎家は鏑木に比べると小さい。使用人の態度も悪いしイライラする!!
あのお屋敷に住めると思っていたのに!!
「儂はお前に当主を怒らせることだけはするなと言って嫁がせたはずだ。有紗嬢が鏑木一族にとってどれほど大切だったか分からなかったのか?それともただお前以上に愛されていた彼女に対する嫉妬か?
お前をこのまま我が家に向かい入れることはできない。北海道にある別宅だ けはお前にやろう。そこから一生出てこないでくれ。これ以上お前に振り回されてはお前の兄も兄嫁も気の毒だ」
お義母様のお兄様は
「お前たちのしでかしたことはもう分かっている。馬鹿だとは思っていたがここまでだとは思わなかった。有紗嬢を敵に回して社交界で生きて行けると思うな。彼女には老若男女ファンが大勢いる。
学校の友人たちからも色々と噂が流れるだろう。お前たちと同類だと見られれば我が家に今後はない。良一とその娘の取り巻きたちは皆、廃嫡の上絶縁だ。どうにでも生きていけ!!」
みんな呆然としていた。
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ゆかりだけは北海道に行かずに実家に戻ったのに実家でも厄介者扱い!!
あの女が手をまわしたに違いない!!
皆の婚約者達も既に婚約破棄がされたらしく4人にも会うことができない。
絶対に許せない!!仕返ししてやらなきゃ!!
でも、あの女の周り 警備が強化されて近づけない。
あの女に復讐したら北海道で6人で暮らせばいい!!
秘かに連絡をとろうと頑張ったが家からも出してもらえなくなった。
なんで?
私はヒロインじゃないの?なんで幸せになれないの?
そうかリセットボタンを押せばいいんだ。そうすればやり直せるはず。
今度こそ幸せになれるはず。
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「ゲームだとかリセットだとか復讐だとかぶつぶつずっとつぶやいています。風呂も食事も使用人が世話し ない限り何もしません。」
「そうか」
「明日の手術で子供が出来ないことが確実になったらあの五人の誰でも良い、一番最初に迎えに来たものに渡せ。戸籍はもちろん抜いてあるな!」
「はい。もともと実子ではなかったので簡単でした。」
「思ったより使えなかったな。有紗嬢もその周りにも隙がなかった。本当なら今頃有紗嬢をこの手に出来ていたはずなのに・・・次回のチャンスを待つか・・・。つるバラの令嬢か・・・・手に入らないからこそ尚美しい花なのか・・・」
ニヤリ口元をゆがめ冷徹な瞳に初めての色を見せた。
(ご当主様もつるバラの香りに惑わされた一人か・・・)
月がとてもきれいな夜だった。
お読みいただきありがとうございます。