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幼馴染みは爆死するのが定め  作者: 明日今日
Another Survivor (2)
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使者

Sideです

鈴音視点

今回の話でこのAnother Survivor (2)は完結です

 鈴音は木陰に隠れてスポーツバックからジッポライターと書類の山を取り出して紙を竃のように空気が入るようにくみ上げてから震える手で火を着けた。

 消防法で文句言われるのだろうが今はそれどころじゃない。こっちは命が掛かっているのだから。

 あっさり火が着いた書類の山は瞬く間に全体に広がり暖を取るには充分な焚き火になる。


「寒い寒い。ブレザーを脱いでおけば良かった」


 張り付くブレザーを無理矢理脱いでカッターシャツも何とか脱ぎ終えてスポーツバックに入っていたナイロン製のウィンドブレーカーを羽織る。一切水を通さないのが幸いした。

 靴を抜いで靴下も脱ごうとした時に視線を感じて振り向く。そこには銃を手にした女性が居た。明らかに悪意が込められた瞳だった。

 脱出者狩りか。こんな所で油断するなんて。それとも月山に嵌められたか。


「見つけたよ。こいつだよね。連れ帰って解体してするの? 殺しても良いんだ──」


 女が言葉を言い終わる前に銃声と彼女の頭から赤い血となんか黄色い物体が宙に舞った。


「ガイスト様は自分と同等に扱えと仰られた。聞いてねぇのか。戦闘狂クソ女が……狂犬はこれだから使えねぇ」


 この暗いのにサングラスを掛け、アルマーニと思しきスーツを着込んだ男が林から現れ、拳銃を向けて引き金を引いてトドメを刺す。それは兎川が拾った銃に似ていた。

 サングラスの男がこっちを向く。鈴音はさっきのやり取りの間に逃げなかった事を後悔する。


「おい。お前達、こっちだ。こっち。このシニョリーナに着替えを」


 サングラスの男は銃を下げて誰かを呼ぶ。林の中から本当に普通のメイド服を着た20代と思しき女性が三人現れた。全員ただの日本人女性に見える。


「大丈夫ですか? お怪我はありませんか?」


 男がイタリア語を喋ったのでイタリア語で話し掛けられるのかと思えば近寄ってきたポニーテールの女性が話し掛けてきたのは日本語だった。彼女に悪意はない。


「こいつまたやらかしたの? つーか殺すなよ」


「ガイスト様から余計な事をやったら殺せと命令されてたんだよ」


「それより彼女を着替えさせませんと」


 それぞれ勝手な事を言っている。鈴音は逃げ出す隙があるかを伺っているがサングラスの男には隙がない。訓練を受けたプロだ。【e】を感染させたら全員殺せるだろうけど勿論、【e】に即効性なんかない。変異する前に私が殺される確率の方が高い。


「申し訳ありませんがこれをお召し下さい。多分、サイズは合ってると思います。合ってなかったら申し訳ありませんが我慢して下さい」


 ポニーテールの女性が持っていたショルダーバッグのジッパーを開けて中身を見せる。メイド服と白い下着が収まっていた。


「ここで着替えるの?」


「しばしお待ちを」


 相手の隙を作る為に言った一言だが残り二人のメイドがやってきて簡易着替え所になるように鈴音の周りに布を広げて背を向けた。外からは見えない上にサングラスの男から隠れた。


「お早く」


 鈴音は一瞬躊躇ったがこのままの服装で居る訳にはいかないので着替え一式を受け取って着替え始める。メイドのコスプレをする方が凍死や肺炎を起こして死ぬよりはマシだと考えた。


「バランスを崩したら彼女たちに捕まり下さい」


 ポニーテールのメイドがそう告げる。鈴音は黙って着替え始める。制服のスカートを脱いでウィンドブレーカーを着たままブラジャーを着替え、受け取ったメイドの黒いロングスカートを履く。


「脱いだ物はわたしが預かりますので」


 鈴音が適当に投げて渡すとポニーテールのメイドが喋り出す。


「天津鈴音様が思っているとおり私達はノアの幹部であるガイスト様に使えている物です。貴女様を主と同じように扱うように命令を受けております」


 鈴音はメイドが喋っている間に下着を履き替え、ウィンドブレーカーを脱いで白いカッターシャツを着て黒いエプロンを着ける。


「あとこれが帽子ですと言いたいですけど髪が乾くまで無理ですね」


 ポニーテールのメイドは白いタオルを隙間から渡す。


「大丈夫ならタオルを解除しますが宜しいですか?」


「いいわよ」


 初っぱなから毒気を抜かれてしまったような気がしてならないが鈴音は彼女たちに気を許しては居ない。

 タオルの壁が解除されてポニーテールのメイドが白いタオルで鈴音の顔を拭く。


「貴方達は【e】に感染しないと知ってるの? いえ耐性があると思っているの?」


「いえ。ありません。貴女に感染させられたら死にます。主のガイスト様に関してもそうです」


 ポニーテールのメイドが鈴音の黒髪を拭く。


「準備出来たならこっちを頼む」


 サングラスの男は鈴音に銃を向けた女性の顔に紅い布を掛けて持っていた石を足下に捨てる。いや紅い布では無く石で歯を潰していたようだ。


「死体に工作するのは俺の趣味じゃない」


 ポニーテールのメイドとおかっぱのメイドが女性の服を脱がし、鈴音の制服を着せていく。鈴音は抗議しようと思ったがやめておいた。それよりも海人に生きてると連絡する方が先だ。


「携帯を貸して」


「仲間に連絡を取りたいのならどうぞ」


 最年少と思しきツインテールのメイドが投げるように鈴音にスマホを渡す。

 鈴音にとっては使われてる言語が日本だったのが幸いだった。

 [今、山を超えて最夜を無事に出た。でもちょっと厄介な事になってる。これからの連絡はショートメールでその度に番号が変わると思う]と海人の電話番号にショートメールを送った。


「返してもらえますか」


 ツインテールのメイドにスマホを返す。


「携帯と財布と学生証を出して下さい」


 なんとなく想像はつくが鈴音は何も言わずにそれらを投げてポニーテールのメイドに渡した。彼女は女の遺体に着せた鈴音の制服のポケットに適当に入れる。わざとなのかいい加減なのかは判別が付かない。


「こちらに車がありますのでご同行願います」


 逃げても仕方ないのでツインテールのメイドの案内を受けて鈴音は彼女に着いていく。すぐ後ろにはサングラスの男が退路を塞いでいる。


「ガイスト様が貴女に望む事は子を成して頂く事です。それが今の人類を書き換える事になります」


「海人の子供なら産むけど誰かに言われて子供なんか作らない。あくまで私の意思で行う事だわ」


 鈴音が怒気混じりに言い返す。


「その方の子供で構いません。貴女が望む人の、愛する人の子供を自然分娩で産み落として頂く事が一つ。そしてガイスト様は子供を成して頂いてその子の臍帯血が欲しいのですから」


「へその緒で何するの?」


「新しい人類を作るそうです。手前どもにはそれしか知らされてません」


 鈴音が後ろを見るとメイド2人が女性に燃料を掛けて火を着けた後、焚き火を消してこっちへと向かってくる。


「取り敢えず、最夜から離れるまでは同行してあげる」


「ではその後に手前どもの主であるガイスト様と会談して決めて下さい。お願い致します」


 鈴音は目の前に見えたロールスロイスを見て舌打ちをした。海人に会えるのは当分先になりそうだ。先程までの寒気は海人に会えない怒りに変わっていた。

 鈴音の聴覚には南の空にヘリが飛ぶ音を聞いたような気がした。

解説なような物

天津鈴音について

名前を見て速攻で気が付いた人が居ると思うけど鈴音=輪廻の当て字。

彼女は最初から変異する予定で後半の地獄ゾーンを抜ける為のナビ役だった。

勿論、那名側にとってラスボスと言えるんだろうけど──

ちなみに兎川さんは元々後半を抜ける為のお助けキャラだったのだが──(以下略

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