伝わり過ぎる言葉 参
休憩時間
移動教室での授業が終わり、クラスに戻っている途中に彼女を見つけた。
「・・・あれ?」
彼女は由紀ちゃんと楽しそう会話をしていた。
俺の時とは正反対だ。
「へぇ~。あんな顔もできるんだな」
「惚れたのか?」
「違うわ。感心してたんだよ。俺といたときはあんな顔一回もしなかったから・・・」
「悔しいのか?」
「いいや。全然」
「無理はするな」
そう言って褥は俺の肩を軽く叩いた。
すげー腹立つけど、勝てないから我慢するしかない。
これが弱肉強食だ。
「・・・どんだけ俺を貶めたいんだよ・・・」
「そう言ってはいるが・・・図星だろ」
「・・・・・・」
悔しいけど反論できない。
そう。俺は少し、ほんのちょっぴり、小さじい一杯分だけだが
褥の言うとおり、悔しかった。
「しかし、お主が女子の事で負けるとは・・・愉快だな」
「まだ負けたわけではないだろ。勝手に決め付けるな」
「そうだな。まだ決め付けるのは早い。・・・が、お主がまたあの女子に挑むのならまだわからんな」
「・・・挑発しなくても俺はやってやるよ」
「楽しみにしているぞ」
「あ!先輩。こんにちわ!」
俺の神々しい存在に気づいてしまった由紀ちゃんが挨拶しに来た。
「やあ由紀ちゃん。こんにちわ」
「はい!先輩は今移動中ですか?」
俺が手に持っている教科書を見てそう思った由紀ちゃん。
「いや、今から自分の教室に帰る所だよ」
「そうだったんですね」
満面の笑みを見せてくれる由紀ちゃん。
この笑顔を見れただけで元気になる。
由紀ちゃんは俺の心のオアシスだ。
乾ききってボロボロになっている心を一気に癒してくれる。
ありがとう由紀ちゃん。
今日も俺頑張れるよ。
「・・・由紀。私戻るね」
「あ・・・」
俺が余韻に浸っている中、彼女は足早に戻っていった。
・・・やっぱり俺嫌われてるのか・・・。
せっかく癒しくれた心に罅が入りそうだ。
「先輩ごめんなさい」
急に由紀ちゃんが謝りだした。
「どうしたの急に?」
「いえ。先輩が気を悪くしちゃったと思ったので・・・」
少し俯き申し訳なさそうな感じをしている。
そんな状況の中俺は
「大丈夫だよ。気にしてなんかないよ。(ウッハ!マジカワユス!!)」
「・・・本当ですか?」
「ああ。本当だよ(ウヒョー!その目その表情最高だね!!)」
「ありがとうございます!やっぱり先輩は優しいですね」
「そんな事ないよ。普通だよ(マイメモリーに保存だ!ほ・ぞ・ん!!!)」
しっかりと由紀ちゃんのフォローとマイメモリーに保存する事に成功した。
そうだ。
由紀ちゃんに彼女の事を聞いてみようかな。
「由紀ちゃん。彼女ってクラスではどんな感じなのかな?」
「睦ちゃんですか?」
「あ、名前睦ちゃんって言うんだね」
「はい。・・・多分ですけど。名前を知っている人そんなにいないと思います」
「それはどうして?」
「先輩は授業ってどこで受けますか?」
授業を受けるって、普通は教室だよな。
あとは移動授業の教室くらいだし。
「・・・教室だね」
「そうですよね。でも、睦ちゃんは違うんです」
「違うって、どこで受けてるの?」
「図書室です」
「・・・図書室?」
「はい。理由はわかりませんけど睦ちゃんが教室で授業を受けた所は、あまり見た事ないです」
「何か原因があったの?」
「私にはわかりません。先生方も色々と説得はしてみたんですけど・・・」
「駄目だった感じだね」
「はい。それで先生方は話し合った結果。授業のプリントを睦ちゃんに渡して勉強をさせる事で解決したらしいです」
「睦ちゃんの親は知ってるのかな?」
「あ、はい。それは先生方が話をしたそうです。両親もそれで了承はしたらしいです」
「なるほどね。・・・由紀ちゃんはどう思う?」
「私にはよくわかりません。・・・でも、睦ちゃんは私の大事な友達です。出来たら一緒に授業を受けたりご飯を食べたりしたいです」
由紀ちゃんの表情は寂しそうだった。
「・・・そっか」
由紀ちゃんのその気持ちは本物だろう。
彼女は正直だからな。
・・・ちょっと麗香に頼んでもう少し調べたほうがいいかな。
「由紀ちゃん。ありがとう。色々応えてくれて」
「いえ。私は構いません。ただ、睦ちゃんの事勝手に話したりして・・・」
由紀ちゃんは言葉を濁らした。
あぁ。なるほど。
由紀ちゃんは彼女の現状を勝手に話して罪悪感を感じてるんだな。
本当に優しい子だな。
「大丈夫だよ。誰にも言わないから。もちろん本人にもね」
「・・・ありがとうございます」
「気にしなくていいよ。・・・あ。そろそろ授業の開始の時間だね」
「あ、本当ですね。では先輩。戻りますね」
「うん。授業頑張ってね」
「はい!」
俺に手を振りながら元気良く走っていった。
・・・見えそうで見えない。
もう少し早く走ってくれたら見えたな・・・。
「亮治。戻るぞ」
「そうだな。麗香にも頼んでおきたいしな」
「直接いかんのか?」
「いったらこの前と同じになるかも知れないだろ?会うのは一通り調べてからだ。場所はわかってるんだ。どこにも行かないよ」
「それもそうか」
授業のチャイムが鳴る前に教室に戻った。
「―――――でここにこの公式を入れて―――――」
「なぁ麗香」
「何?」
数学の授業中。
俺と麗香は黒板から目を離さず、ノートもしっかり取りながら会話をしていた。
もちろん周りに迷惑をかけないように小言でだ。
「昨日図書室にいったろ」
「ええ」
「その時もう一人女の子がいたのは知ってるな?」
「・・・ああ奥の方にいた子ね」
「ふむふむ。なるほどな・・・」
「そうだ。それでちょっとその子の事調べてほしい」
「今回の標的なの?」
「ほう。・・・この時にあれを使うのか・・・なるほど」
「いや、違う」
「?。じゃあなぜ?」
「・・・ちょっと色々あってな」
「ならこの問題も似たものか」
「・・・煮え切らない言い方ね。どうしたのよ?」
「言っても信じてもらえないな・・・」
「私は亮治の事なら何でも信頼するわよ」
「・・・嘘くせぇ」
「嘘じゃないわ。で、どうなの?教えてくれるの?」
「むむ。ここはどうしたらいいのか・・・」
「・・・わかった。後で教える」
「わかったわ」
「・・・おお。解けたぞ」
「・・・褥」
「どうした?」
「問題が解けて嬉しいのはわかる。そして、授業中の私語は良くないのを知って、話してた俺が悪いいのもわかる。だけど・・・会話の途中途中で入り込むのはやめてくれないか?」
「・・・・・・善処する」
それから授業は滞りなく進み無事終えた。
「それでどうしてその子調べてほしいの?」
机に肘を置き、頭を手に乗せていた。
だが、それだけの仕草なのに、やたらと絵になる。
魅力がオーラとなって見えるみたいだ。
「実はな―――――――」
俺は麗香に俺が体験した話をした。
「それ本当なの?」
予想通りの返答が返ってきた。
「だよな。信じれないだろ?」
「ええ。だって聞いた事ないんですもの」
「でも、本当の話なんだ」
「・・・その子って人間なの?」
「間違いなく人間だ。物静かで話さなくて他人を寄せ付けない感じがするがそれが逆に彼女の魅力になっていてあんな魅力をあの年で会得するのは中々出来ないそれに彼女の存在は触れようとしたら遠ざかるまるで蜃気楼のような永遠に届くことがない宝物みたいな彼女が人以外であるはずがないじゃないか」
「・・・・・・最初のほんの最初の部分はわかったわ。とりあえずその子は人間って事ね。後亮治、息継ぎをしなさい」
「それで調べてくれるのか?」
「そうね・・・」
麗香はポケットから鈴を取り出し音を鳴らした。
―――チリンチリーン―――
「お呼びですかお嬢様」
「うお!?」
俺の後ろからエリスさんの声がした。
俺の席は窓際でしかもここは二階なのにどうやって来たんだ?
しかも、あの鈴で鳴らして三秒もかかってない。
・・・謎が多い人だな。
でも、嫌いじゃないよ。そんなエリスさんも俺は素敵だと思っている。
「どうかなさいましたか伴崎様?」
そんな登場をしてもまるで動じない、いや、わかっていないエリスさん。
「い、いや、今日も綺麗ですねエリスさん」
「あ、ありがとうございます」
「ふふ。だいぶ馴れてきたようね」
「ゴホン。お嬢様何か御用がおありですか?」
「そうだったわね。エリス。一年生の睦って子を調べてきてほしいの」
「わかりました。それで写真とかありますか?」
「ないわ。だけど図書室のいるから授業中にでも見に行きなさい」
「おい麗香。授業中に抜け出すのはむずk」
「畏まりました」
「え?いいの!?」
「はい。問題ありません。ずっと抜け出すわけではないので」
ああ、そうか。お手洗いとか言えば問題ないもんな。
「気配を消して気づかれないようにします。・・・気づく方がいましたらこの麻酔針で」
そう言ってエリスさんは靴の中から細くて長い針を取り出した。
「お願いね」
「お任せ下さい」
「いやいやいや!!」
「どうかしたの?」
「どうかしたの?じゃねぇよ。何で褥みたいな考えしてんだよ」
「失敬だな。余がそんなことするはずなかろう」
「・・・本気でいってるのか?」
「当たり前だ」
「なら、俺の対応をもう少し柔和してくれ」
「してるではないか」
「あれでか!?・・・まあいい。二人ともこうなりたくなかったらもっとましな案を見つけなさい」
「わかりました。ではこれは使いません」
そう言って、エリスさんは針も元の場所に戻した。
よしよし。どうやらわかってくれたみたいだな。
エリスさんは普段はとても出来るメイドだけど、たまにこういった無茶な行動を取ろうとする所があるからな。でも、こうやって話を聞いて改善しようとしてくれるから安心だな。
「エリス。どうするの?」
「はい。先ほどの案が駄目でしたので、こちらを使おうかと思います」
胸元を探り、出した物は缶ジュースの形をした何かだった。
「それならいいわね」
麗香はその缶が何なのかわかっているらしい。
「エリスさん。その缶は?」
「これは催眠ガスです」
「・・・は?」
「これを室内で使えば皆さん眠って問題なく抜けれます」
そう言って少し自慢げに話すエリスさん。
「いやいやいや!!普通にお手洗いとか体調が悪いとかいって抜ければいいじゃないか!!」
「「・・・・・・・・・」」
二人が俺の顔をじっと見てくる。
「な、何だよ・・・」
「「その手が(ありました)あったわね」」
「・・・たまに思うけど、麗香とエリスさんはもっと庶民の暮らしを学んだ方がいいと思うぞ・・・」
「・・・ここ座っていいかな?」
「・・・・・・」
俺は彼女の返事を聞かずに向かい側の椅子に座った。
彼女は声をかけた時、一瞬だけ驚いた表情をした。
しかし、すぐに無表情というか興味がないのか、視線を本に移した。
「(やれやれ。相変わらず嫌われてるな・・・)」
ここの椅子に座る前に何冊か取ってきた本を読むことにした。
「・・・・・・」
静かに、黙々と本を読み続ける彼女。
そんな彼女を時々ちら見しながら静かに本を読む。
「(さて、どうするかな・・・)」
俺は麗香に調べてもらった情報を思い返した。
――――――。
「名前は菖蒲 睦一年生。家柄は普通。性格は物静かっていうか、あまり話さない見たね。それに、自分の教室にはめったに顔を出していないわ。理由は多分、亮治の言う言霊だと思うわ。でも仲のいい友人はいるみたいよ。同じクラス由紀ちゃんがそうね。由紀ちゃんとは時々会話をしているみたいよ」
「なるほど。それで他には?」
「あるわよ。どうやら今の性格は昔からではないみたい」
「っていうと昔はどんなんだったんだ?」
「えーっと・・・。昔は活発で明るくてクラスの子達ともよく話したりして友達も多かったいたいね」
「今とは正反対だな」
「そうね。それでどうしてこんな夫になったかというと、・・・聞きたい?」
「調べてあるんなら聞きたいな」
「・・・わかったわ。切欠は――――――」
「・・・そうか・・・」
「ええ。他に聞きたい事はあるかしら?」
「いや、ないよ。悪いなこんなことしてもらって」
「いいのよ。亮治のためなんだから。ねぇエリス」
「はい。その通りです」
「ありがとな」
二人は嬉しそうな顔をした。
「それにしてもどうやってこんなに情報を集めてるんだ?」
「あら。教えてほしいの?」
「そうだな。前から気になってた事だし、よかったら教えてくれよ」
「いいわよ。でもこれは結構重要機密だからこの紙にサインして頂戴」
そう言って麗香は二枚の紙を取り出して俺に渡した。
そうだよな。こういった物って誓約書を書かないと駄目だもんな。
いくら俺の為にやってくれたとは言えそれをただで教えるわけにはいかないもんな。
俺はボールペンを取り出し記載されている誓約書にサインをしようとした。
あ、そうだ。一応内容を読んでおくか。
サインする前に契約書の内容に目を通した。
・・・あれこの誓約書おかしいな?
「・・・・・・麗香さん」
「あら、さん付けなんて、どうかしたの?」
「この誓約書って何の誓約書?」
「何のって情報ルートを教える為の誓約書よ」
「そっか。じゃあ何でこんな文字が書いてあるのかな?・・・婚約届って・・・」
「誓約書であってるわよ。私の名前はもう書いてあるわよ」
「おかしいだろ!?何でこれが誓約書なんだよ!!?第一これに書いたら俺死ぬだろ!なぁ褥」
「もちろんだ」
「ほら!!何書かそうとしてんだよ!!」
「大丈夫よ。今じゃないから。それはあくまで予定だもの」
「予定でも駄目だろ!なぁ褥」
「いや、お主の罪が消えたら問題ないぞ」
「まじかよ!?」
「よかったわね。さあ、早く書いて頂戴」
「書けるか!!」
「書いてくれないと教えられないわよ?」
「どうしてだよ!」
「だって重要機密で私の家族と一部の人にしか教えられないからよ、だから私の旦那になったら問題ないわよ。もちろんエリスの旦那でもいいわ♪」
「え?エリスさんも!?」
そう言われもう一枚の紙を見た。
あ、エリスさんの名前書いてある。
「・・・エリスさん」
「・・・何でしょうか」
「いくら麗香の命令だからってこんな事にまで従わなくていいと思いますよ。麗香。あんまりエリスさんを苛めるなよ。可愛そうだろ」
「・・・・・・」
「エリス諦めちゃ駄目よ」
「はい。精進します」
「?」
――――――。
「(うん。八割ぐらい関係ない話だったな。っていうか麗香の奴、最近積極的になってきたな。別に嫌いではないけどなそういう所も。ただ、もう少し考えてやってくれたらいいな。たまに、あいつの発言や行動で褥が動くからな・・・。今度言っておくか)」
「・・・・・・」
「・・・ん?」
視線を感じ正面を見ると
「・・・・・・」
彼女が俺を見つめていた。
「どうかしたの?」
一瞬緊張してしまったが、いつも通りの顔を見せた。
「・・・・・・」
しかし、この前と同じように、彼女は何も話さず視線を本へと移し直した。
「・・・はぁ・・・」
こう何回も無視されると堪えるなぁ。
しかも、ほら。
「・・・・・・」
俺の存在を抹消してるかのように読書に夢中だ。
凹むなぁ~・・・。
・・・・・・だが、
俺は諦めないぜ!
釣りと同じように、獲物が掛かるまでじっと堪えるんだ。
堪えて、堪え抜いて、俺は!!
この魚ちゃんを絶対に釣り上げてみせる!!
―――ポト―――
「ん?」
俺の目の前に紙切れが・・・。
なんて書いてあるんだ?
俺はその紙切れを広げてみた。
『きもち悪いです』
「・・・・・・」
チクショ~。
絶対に負けないからな!!
・・・意気込んだはいいが、
その日は進展もなく終わった。
―――二日目―――
進展なし。
―――三日目―――
進展なし。
―――四日目―――
進展なし。
それから一週間後
「・・・・・・」
「・・・・・・」
今日も図書室に来て彼女の向かい側に座っている。
「・・・・・・」
相変わらず本に集中している。
「(おかしい・・・)」
来る日も来る日も会話がなく、本を読み続ける日々。
「(おかし過ぎる!!)」
いくら嫌われてるとは言え何かしらのリアクションはするだろ!?
それなのに、一切そんな気配はない!
でも、ここまで通い続けた事もあるから今更辞める訳にもいかないしな・・・。
『悩んでいるようだな』
頭の中に褥声が聞こえる。
「(褥か。どうかしたのか?)」
『特に用はない。お主の情けない姿も見飽きたのでな。それで声をかけた』
「(そんな事でいちいち話しかけるな!)」
『そう怒るな。言っただろう。見飽きたから声をかけたっと』
「(というと何かいい案があるのか?)」
『あるぞ』
「(頼む!教えてくれ!!)」
『よかろう』
良し!これで今の状況から脱出できる!!
褥もたまには役に立つな。
普段は俺の命を刈り取ろうしているのに。
少しは見直したよ。
『その場で裸になれ』
前言撤回だ。
「(お前いきなり何言ってるんだよ!?)」
『何とは裸になれだが?』
「(二回も言うな!!なれるかそんなもん!)」
『進展はするぞ』
「(確かにするが、それはしてはいけない方に進展するだろうが!)」
『・・・どうしても駄目か?』
「(当たり前だ!裸になってみろ。俺はこの学校を退学になって社会に一生顔向けできない人生を送る羽目になるんだぞ)」
『その時は死ねばいいではないか。手伝うぞ?』
「(断る!)」
『・・・なら次の案だな』
「(まだあるのかよ・・・)」
『安心しろ。こちらはまともな安だ』
「(・・・信じていいんだな?)」
『もちろんだ』
「(なら聞かせてみろよ)」
『まずこの女子の隣に座る』
「(・・・うん)」
『そっと手に触れる』
「(ほうほう)」
『指に触れ握る』
「(ふむふむ)」
『握った指を反対側に曲げる』
「(・・・・・・)」
『ではやってこい』
「(出来るか!!)」
『なぜだ?』
「(お前、拷問されて話してくれる人なんていると思うか!?)」
『この前みたデーヴァイデーには話していたぞ』
「(DVDな。それは自分の命がかかってるからだ。普段の生活では使わん)」
『そうなのか。・・・では行け』
「(いかねぇよ!)」
『我侭な奴だな。・・・む?あの女子どこに行った?』
「(どこって俺の正面・・・あれ?)」
褥との無駄話に気がそれていつの間にか彼女がいなくなっていた。
「・・・どこにいったんだ?」
『探しにいけばいいではないか』
「そうだな」
腰を上げ彼女を探し始めた。
――――――。
―――。
「・・・どこにいったんだ。・・・お」
無駄に広いこの部屋と大量に本が整頓されている本棚の通路をくまなく探していると、彼女を見つけた。
「・・・・・・」
彼女は本のタイトルを見ながらどれを読むのか探していた。
「・・・・・・ん」
彼女が本に手を伸ばす。
届かない。
踵を上げ再度試みる。
届きそうで届かない。
「・・・・・・」
「よかったら取ってあげようか?」
「!?」
急に声をかけられて驚く。
「どの本なのかな?」
俺は優しく言った。
「・・・・・・」
彼女は何も言ってくれない。
「これかな?」
俺は適当に指でさした。
「・・・・・・」
無視された。
「・・・えっとこれかな?」
「・・・・・・」
いや、何か言ってくれよ!
言わないとわからないだろ!
俺、ここまで嫌われてるのか。
何か彼女に失礼な事でもしたか?
もしかしたら気づかない内にやったのかもしれないな。
「・・・・・・て」
「・・・え?」
「私の事は放っておいて」
久しぶり彼女の声を聞いて驚いた。
「・・・いや、でも、読みたい本があるんだよね。だったら僕が取ってあげるよ」
「いいから放っておいて」
「いや、でも―――」
「私には構わないで!」
「・・・・・・」
さすがにムカついたぞ。
いくら女子に優しい俺でもここまで理不尽な事をされたら我慢の限界だ。
ここはビシっと言ってやる。
「おい。さすがにそれは酷くないか?俺は君の為を思ってやってるのに」
「そんな事頼んでない」
「それはそうだけど。言い方があるだろ」
「あなたには関係がない」
「関係がなかったら何を言ってもいいのかよ。他人の気持ち考えろよ」
「それはあなたが言える言葉ですか?」
「はぁ?どういう意味だ」
「・・・やっぱり。あなたはわかってない。いいから私の事は放っておいて」
「ふざけるな!さっきから揚げ足をとるみたいな言葉を言いやがって。俺が嫌いならはっきり―――」
「どこかに消えて!!」
急に彼女が大きな声で怒鳴った。
「・・・・・・」
俺はその声に驚いた。
『・・・これは』
「(どうした褥?)」
『亮治。その場から離れろ』
「(は?何言ってるんだよ)」
『いいから早くしろ』
「(出来る訳ないだろ。女の子が困ってるんだぞ。いくら嫌われてるからといっても無視が出来るはずないだろ)」
―――ガタ―――
「ん?今何か音が・・・」
『間に合わんか』
―――グラ―――
「・・・は?」
後ろを振り向くと、
大量に本が整頓されている本棚が俺に向かって倒れてきていた。
「え?ちょ待って―――」
何でいきなり倒れてきてるんだよ!?
ってか逃げれないぞこれ!!
こんなんに下敷きにされたら死ぬ!
「だ、駄目ーーーー!!!」
彼女が叫ぶ。
「う、うわぁぁぁあああーーーー!!!」
―――バタン!!―――




