やっぱり裏切者って結構馬鹿だよね。
ふと見てみたらお気に入りが十四件も。
ありがたい限りです。
~主人公side~
「………だから油断するなと言ったのだ!!!!」
ドアの向こうから声が聞こえて来るが意味が理解できない。何故なら現在装備しているスキルの中に【全語理解】及び【全語会話可能及び読み書き可能】が入っていないからだ。これが入っていないので今聞こえて来た言葉は俺には
「ХΠ¶‰⊥∃∨∮〝※★&☆*¥∞◎!!!!」
こんな感じに聞こえるのだ。まあ、スキルの装備とかいきなり言われても訳が分からないだろうから、説明をしよう。
そもそもスキルにはいわゆるパッシブスキル、つまり《常時発動型スキル》とアクティブスキル、つまり《限定発動型スキル》と最後にそのどちらにも分類することができるパッシブorアクティブスキル、つまり《常時、限定選択型スキル》の三種類がある。
パッシブスキルは体力を消費せず常に発動しているスキルだが常に発動するように設定できる数に限りがある。俺の場合は三個である。何時もは【無限収納】と【経験値吸収効率up!】と【サイズ調整】である。
【無限収納】については常時これを発動していないと二十年前に魔王の城で手に入れたアイテムが全部出てきてしまうので絶対に外せないのだ。
次の【経験値吸収効率up!】は読んで字のごとく経験値の入手量が増え、なんと効率を二倍以上に引き上げ、この二十年間で俺のレベルを一上げてくれた。二十年間ずっといた十階層のモンスターのレベル平均が十~二十。レベル差七百であることを鑑みれば一上がっただけでも奇跡に等しいものである。ありがたいことだ。
そして最後に【サイズ調整】については単純に相手が複数の場合この宝石箱サイズでは非常に触手の使い勝手が悪いからである。サイズさえ完璧ならば千本近くの触手を出す事も可能なのだが只の宝石箱サイズだと出口が狭すぎて五本出せれば良い方なのだ。なので集団戦闘時には必然的にサイズ調整で最低でも普通の宝箱サイズにはならなければならないのだ。ちなみに後で説明するが【サイズ調整】もパッシブorアクティブスキルの一種である。
次にアクティブスキルは一定の体力を消費してその時だけ発動するスキルである。俺の場合は体力が消費されたと言うのは分かるが消費された量が少なすぎていくら使っても疲れはしないが。
比較的多用するのは【触手操作levelMAX】と【サイコキネシス】である。ちなみに【サイコキネシス】や【触手操作levelMAX】等は効果発動中ずっと体力を消費する。対して【餌作成】や【トラップ作成】等は作るのに体力は使うが作った後は消費は無いのである。
最後に紹介するパッシブorアクティブスキルは名前の通り少し特殊で、パッシブスキル、もしくはアクティブスキルのどちらにしても効果を発揮するものである。先程説明した【サイズ調整】がこれにあたる。これらのスキルはパッシブスキルにセットすることで体力の消費が無くなるのだ。このスキルに当て嵌まるのは【完全擬態】や【スキル創造】などであり【サイズ調整】や【完全擬態】はアクティブスキルにすると変化している最中は体力を消費し、変化後は元に戻るとき以外は体力の消費は無い。【スキル創造】に関しては、スキルを創造したときに【○○○○(スキル創造)】のように表記が変化し、創造するスキルによってパッシブスキルか、アクティブスキルかが決まる。例えば【防御結界(スキル創造)】ならパッシブスキル、【衝撃波発生(スキル創造)】ならアクティブスキルになる。といった具合である。
ちなみにこの世界では魔法のようなスキルは存在するが魔法は存在しないようだ。魔法のような物もやはりスキルなので結局は体力勝負である。何故そんなことが分かるかは言わなくても分かると思うが、【スキル創造】の力である。
と、こんな感じで色々学習したのだ。伊達に二十年間も地下でのんびりしていた訳ではない。
ちょっと考えたら誰でも分かる知識をひけらかしながらパッシブスキル【経験値吸収効率up!】と【サイズ調整】を【全語理解】と【全語会話可能及び読み書き可能】に変更する。これで相手の声はなんだろうとこちらには日本語に聞こえ、本来なら出る筈もない此方の声は相手が普段使っている言語に聞こえる筈である。
「ああ!?何だと!!!そいつが居なくてもなぁ、俺一人でも何とかなってたよ!!」
「ふざけるな!!!!!!貴様一人でどうにかなってただと!!!!!ならかったから彼女が死にそうなんじゃないか!!!このままじゃ彼女は後数分で死ぬぞ!!!!責任取れるのか!」
どうやらあの無駄にイケメンで人間だった頃に会っていたら「死ね!爆発しろ!!」と叫びたくなる様なイケメンくんが失敗をしてそれをかばった美人のお姉さんが結構深い傷を負った様である。しかもイケメンくんが謝らない。ぶん殴りたくなるふてぶてしさだ。
憤りを覚えながらも元々接触する予定だったので見棄てるのもどうかと思い音を立てないように部屋に入り見付からないように慎重に自分の中から二十年前に魔王の城から掻っ払って来た一番上等な回復薬である《悪魔のエリクシル》を取り出す。これもやはり音を立てないように床に置く。コト……と僅かに音がするが気付かれ無かったようだ。
そしてその隣に完全に箱型になって擬態する。スキル【完全擬態】も使用する。これで触手を出している所を見られでもしない限り正体がばれることはない。そして訓練に訓練を重ね何とか物を平行移動させることが可能になった【サイコキネシス】で扉を少しだけ開ける。
ギイイッと大きい音をたてて扉が軋む。言い争っていた二人がビクリと反応して素早く此方に振り向く。
「しまった!まだいたのか!?」
と、女性が驚きの声を上げる。
「宝石箱……と薬??」
扉の側に置いてある俺に気付いてくれたと思ったらいきなり此方に走ってきた。ばれたか!?と思ったが俺を通りすぎて扉を開け外を見回している。どうやら外に人が居ると思ったようである。誰も居ないことを確認したようで、戻ってきてエリクシルの方を手にとって観察するかのような仕草をし、
「なっ…!」
と、薬の効果の高さに驚愕する。
「んだよ、効果が糞だったか?どんな糞でも良いよ。さっさと使って諦めろよ。もう助からないの。」
そしてさっきまでのイラつきが嘘の様な言い方。どうやら感情の波が激しいようである。イケメンだが性格はウザくて屑な様だ。まあ、証拠隠滅の為に残った一人を殺さないのでまだ救い用はあるかもしれないが。
「そうじゃない。見ろ!!神は我々を見はなさななかったぞ!!」
女性がイケメンくんに薬を見せる。
「ちっ。うるせぇなぁ。なんだよ。……!これは…!何故こんなものが………!」
イケメンくん目を見開く。どうだ。凄いだろう元々俺のじゃ無いけど。
「しかしこれでナターシャは助かるぞ!!早く飲ましてやらなければ!」
女性がナターシャと呼んだもう一人の女性の方に向く。
「こんな良いものを…そんなことに…?………」
そしたらなんかイケメンくんが信じられない、といった顔をした後ナターシャじゃ無い方の女性に近づいていく。そして
「かせっ!!」
女性の手からエリクシルを奪い
ナターシャに使うのではなく自分で飲んだ。
「え………?」
俺も言いたいよ。全力で「信じらんねぇ……」って脱力したいよ。何これ。がっかり過ぎるわ。本当。嫌になる。あんなのもうイケメンくんじゃなくて糞噛ませ野郎で良いよ。て言うか本当にそれはお前のじゃないよ。前言撤回するよ。それ俺のだよ。返せ。とか思ってたら糞噛ませ野郎が
「ははっ。こりゃあ良い。力が、限界が上がったのが分かるぞ。これで俺は最強だ!!!!!!強くなった!!」
とかほざきやがった。何様だよ。ここ二十年間で感じたことの無いほどの怒りが込み上げてくる。が、今ここで重要視すべきは奴が借り物の力に酔いしれている間にナターシャにエリクシルを渡すことだ。それしかない。
「き……さま、貴様なんて、事、をもう、もう薬は無いんだぞ!!ナターシャは助からないんだぞ!!」
女の人。分かる。分かるぞ。その気持ち。俺も加勢したい。しかしここはいつの間にか側にアイテムが置かれている不思議な宝石箱として余生を過ごすため。俺はもう一度触手でエリクシルを取りだし音を立てないように置こうとする。
「ナターシャ?知らないなぁ。誰だい?それは。」
糞噛ませ野郎がムカつくことを言っているが無視無視。そーっと。そーっと。そー………
「貴様ぁ!!…………!!っ!そっそうだ。宝石箱。宝石箱の方に何が入っていないだろうか。」
女の人がこっちを向いた。
ピシィッと音を立てて時間が止まった。
取り敢えず視界だけを動かして女の人の方を見る。目が合った。
糞噛ませ野郎を見る。こっち見んな。
………ヤバい。何がヤバいって自分から正体明かした様なもんだから【完全擬態】がもう掛からない。 とにかく開かないのでこの箱は戦利品として持っていこう的なイベントは潰えた。取り敢えず当初の目的だけはと視線が突き刺さる中ナターシャの前まで移動し、触手二本で口を開け気道確保。二本使って鼻を塞ぎ最後の一本でエリクシルを飲ませる。ナターシャの傷がみるみる内に治り安らかな寝息を立て始める。
良かったと(箱なので)無い胸を撫で下ろしたのもつかの間。
糞噛ませ野郎が何とか行動可能になり、手を震わせながら
「まだ……まだたくさん持ってるのか……?」
と言う。そして急に偉そうな態度になり
「なあ、そこのミミックよりも弱そうなモンスター。消されたくなかったら大人しく今飲ませた薬を全部渡しな。」
馬鹿だ。馬鹿がここに居る。どうやら欲に目が眩みまくって普通のモンスターには言葉が通じないと言うことすら忘れているようだ。たまたま俺がスキルを持っていたからよかった様なものの、普通のモンスターなら問答無用で襲い掛かっている。そして余りのムカつき具合に普通のモンスターじゃ無い俺も襲い掛かってしまいそうだ。
俺が必死に自分を抑えつけていると、何をどう勘違いしたのか
「へ……へへへ……そんなに怖いかぁ……?無理もねえ。俺様はなんたって二十九レベルなんだからなぁ。てめえみたいなちびモンスターにそんなアイテムは要らねえから俺がもらってやるよ……。」
嗚呼。馬鹿だ。何度でも言おう。馬鹿だ。何だろう。こいつなら三歳児と良い勝負が出来そうな気がしてきた。二十九レベって。どうやったらそんな自信が持てるんだよ。自信だけは一人前だな。糞噛ませ野郎。隣のまだ名前わからない女の人も唖然としてるよ。顔( ; ゜Д゜)こんな感じだよ。あまりの酷さに思わず
「うわぁ………ないわぁ………」
って口走っちゃったよ。
そして馬鹿丸出しのまま変な笑い声を上げて突っ込んでくる糞噛ませ野郎改め馬鹿。 簡単に殺すことも出来るが流石に彼の仲間も居る手前殺りづらい。上手いことサイコキネシスで移動しながら触手でいなすしてみたがこの二十年ずっとモンスターとしか闘ってこなかったのだ、人形のモンスターは居ても対人戦等初めて。上手く行く筈もなく地面に叩きつけられる。が、高々二十九レベルの力で七百九レベルの俺を傷つけるなど出来る筈もなく。しかしここは今後こんな事があるとも限らないし、【スキル創造】を使う。アクティブスキルの一つ、
【攻撃学習】
相手の大まかな攻撃の筋を学習するスキルだ。体力を消費している間なら、攻撃を見れば見るほど慣れていく。これを使えば徐々にではあるが確実に敵の攻撃をかわせるようになっていく。似たような攻撃なら応用でかわせる様になったりもするのだ。
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五分後
いくら攻撃しても傷一つ付かず、しかも徐々に攻撃を避けられる様になっていく俺を見て流石におかしいと気づき始めた。まあ、気づくの遅すぎるが。
「糞っ………糞っ……!!何で当たらなくなっていくんだよお!!!当たっても傷一つつかないんだよおっ!!!」
若干涙目である。レベルが低すぎると言って馬鹿にしてやりたいがタイミングを逃したため今非常に喋り出すのが難しい。途中で
「糞っ。またかわしやがった。エリル手伝え!!」
とか更に馬鹿なことを言い始めたお陰でもう一人の女の人の名前がエリルと言うことがわかった。中々役に立つ事もあるじゃないか、馬鹿。
しかし今の状況を動かしてくれそうな肝心のエリルさんはここまで一緒に来た仲間かその仲間を助けてくれたモンスターのどちらに味方するか迷っている様だ。さっきまで裏切者!!的な雰囲気を出してたのに優しいことだ。
と、考えていたら偶然馬鹿の一撃が何か痛い壺みたいな所に入った。
「うわっ。痛っ。」
「え?」
「え?」
「あ。」
思わず声が出てしまった。また時間が止まるかと思ったがさっきので少し耐性が出来たらしい。もの凄く驚いた程度のようだ。
「え?え?何で?モンスター?え?何で?喋って?何でぇ?」
「ひいいっ!!喋りやがった!!」
どっちがどっちの反応かは言わなくても良いような気がする。
何か……………面倒な事になった気がする。
中途半端で切れました。ご免なさい。




