やっぱりこうなる。
何も聞かないのも時には大事…
それは突然のことだった。
陸人と海が2人で教室に戻っている途中で、陸人は悪寒を感じて立ち止まったのだ。
「どうしたの?」
陸人が急に立ち止まるので、海はなんでだろう?と不思議な様子だ。
「いや、なんでもないんだけど…。海。悪いけど先に戻っててくれないか?」
「?いいけど」
海の頭には?マークを浮かべたままだが素直に陸人の言葉を飲み込んで教室のある方へと向かう。
その様子を見た陸人はホッと一息をついた。
陸人自身、なぜ安堵の息を漏らしたのかは謎だったのだが、直感というのだろうか?そうした方が良いと無意識に思ったのだ。
ほんの少し経つと陸人の教室のある方から空が小走りにやってくる。
「あっ!いた、わね。こんにちは。りっくん」
「…おはよう、ねぼすけ」
少し驚いた陸人だったが含みのある表情でそう言う。ニヤニヤとした表情で昼にも関わらずおはようと言う陸人の顔はとても楽しそうなものだった。
すると、頬を染めた空が恥ずかしそうにしながら言う。
「昨日、夜遅くに押しかけてきたのはどっちだったかしら…?」
「それは悪かったって。でも空も許してくれただろ?」
「そういえば、そうね…。ごめんさない」
素直に謝る空に陸人は戸惑いながら言う。
「いやいや、謝らせたくて言ったわけじゃないって。それよりどうしてここに?用事があったんじゃないか?」
「…?りっくんを探してただけよ?」
「そ、そっか。用事がないなら教室に戻ろうか?」
「うん!」
とびっきりの笑顔というのだろうか?いつものクールな雰囲気ではなく無邪気な子供のような笑顔で空が言うのだ。
陸人もつい、そんな空を惚けて見てしまって動きが止まってしまった。
「どうしたの?行かないの?」
「いやいや、行くよ。それより…いや、なんでもない」
「なんなの!?もう!」
「いや、行こう」
口調が子供っぽい、と陸人は言おうとしたがテンションの上がった空を相手にするのは大変だな。と思い、口にしなかった。しかしこの空気は嫌いではないなと思う陸人。空も楽しそうにしている。
そんな2人は教室に向かって歩き出した。
*
空と陸人の2人が教室に入るといつものようにクラスメイトの視線が集まる。といっても初日ほど集まっているわけではない。
陸人は初日から少なくなった視線とそんな視線があると覚悟していたことで、少し周りを見渡せる程度の余裕ができていた。
そんな陸人が海の方を見ると、手のひらを小さく立てて、よっ。とでもいうようにしていた。
海なりの挨拶なのだろうが、なんだかおかしくなった陸人は苦笑しながら同じような挨拶を海に返す。すると、海は納得したように頷いていた。
お、正解だったみたいだな。海の仕草を見てそう陸人はそう思っていた。
するとそんな陸人の肩が軽くトントンと叩かれる。軽く叩かれたはずなのだが、なんだか重みがあるように感じる。それと同時に嫌な予感も。
肩を叩いた人物を見て陸人は本日2度目の背筋が凍る体験をするのだった。
「りっくん…?」
「そ、そら…?」
陸人の肩を叩いたのは満面の笑みの空だった。
しかし、目にはハイライトがない。それに気づいたクラスメイトが小さな悲鳴を上げるほどだ。
そんな視線を受けて、陸人も内心では悲鳴をあげていた。
助けてくれ…。と、そう思い陸人は海を見るが既に周りの友達と会話に花を咲かせていた。
すると、今度は陸人の肩が後ろからガシッと掴まれる。
「りっくん…?」
後ろから掴んでいる張本人である空は普段より低い声でそう言う。
何故だか分からないが、とりあえず謝らないといけない気がする陸人。
「ご、ごめん」
陸人がそう言うと同時にチャイムが鳴る。
すると肩から手が離れて空はスタスタと自分の席へと向かっていった。
なんだか知らないけど許された…?と、ホッとした陸人も自分の席へと向かい授業の準備を始めるとだが、空からのジト目の視線が痛く感じるのだった…。
陸人。頑張れ…




