表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世間知らずな錬金術師  作者: 白井木蓮
対策本部編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/37

7.師匠のお友達が来ました

 王都近辺に魔工ダンジョンが出現して一週間が経ちました。


 昨日は中級冒険者たちのパーティが三組合同で第五階層に挑みました。

 ようやくダンジョン討伐かと思ってたんです。

 でも第六階層が存在していたという事実が私たちを落胆させました。

 しかもその第六階層には数えきれないくらいのベビードラゴンがいたそうです。

 それを見た中級冒険者たちは迷わず退却を選んだんですって。

 早く逃げないと第五階層にも次のベビードラゴンが湧いてきますからね。


 それでも所詮ベビードラゴンですよ?

 どうやら私は中級冒険者という定義を勘違いしていたのかもしれません。

 強い人が中級冒険者になるんじゃなくて、依頼を多くこなした人が自動的にそう呼ばれることになるんじゃないかと思えてきました。

 それを決めてるのは冒険者ギルドですけどね。


 もちろんダンジョン周辺の魔瘴は毎日徐々に濃くなっていってます。

 日を追うごとにダンジョンに入る人は増えているんですから当然です。

 おそらく今後は範囲が拡がっていくでしょうね。

 今でも魔道士の方々に浄化をしてもらっていてこの状態です。


 今日はいつもより早く十九時に解散になりました。

 私と師匠はグッタリした様子で帰ってます。

 成果が出ないというのは精神的に疲れますよね。

 私たち対策本部の仕事もやれることがなくなってきてます。


「師匠、上級冒険者の方っていないんですか?」


「さぁね。パルドにいたとしてももう年寄りなんじゃない? この周辺は狩場が少ないから腕を磨きたい人は離れていくからね。残ったのは見ての通り、ただお金を稼ぐために依頼をこなすことが冒険者の仕事と思っているような連中よ」


 やはりそうなんですか……。

 もしかして魔王はそれをわかっててここに作ったのでしょうか。

 冒険者は弱く、数は多いって最高の環境ですもんね。

 このままじゃ本当に世界は滅びてしまうのでは……。

 もしかして私たちがしっかり対策を立てないせいなんですかね?


「あの、ロイス君たちに手伝ってもらいませんか?」


「う~ん。むしろなぜ手伝いに来ないかが不思議でならないのよ。もう一週間経つし、マリンからも聞いてるはずでしょ?」


「確かに……。ララちゃんなら喜んで来てくれそうなもんなんですけどね。それほど改装作業が忙しいのでしょうか?」


「そうかもね。あなたの読みだと地下四階以外にもなにかするはずなんでしょ?」


「はい。ロイス君は常にサプライズに飢えてますから」


「ある意味病気ね……。でも今までの魔工ダンジョンの傾向からすぐに討伐されて終わりだから手伝いに行っても無駄足になると思ってるのかもね。二百人以上入ってることも聞いてるでしょうし」


「その可能性のほうが高そうですね……」


 せめてピピちゃんが来てくれれば状況がわかるんですけど。


「あれ? 店の前にどなたかいらっしゃいます」


「え? ……あっ! デイジーじゃない!」


 デイジー?

 どなたでしたっけ……。


「スピカ! 良かったぁ、今日は帰ってこないかと思った」


 呼び捨てということはお友達ですかね?

 見た目は師匠のほうが圧倒的にお若いですがそれは仕方ありません。


「急にどうしたのよ? とにかくあがって! カトレア、早く鍵開けて! お茶の用意もね!」


「あら? あなたがカトレアちゃんなのね! 初めまして。私はスピカの知り合いのデイジーと申します」


「初めまして。カトレアです。ごゆっくりしていってください」


 中に入ってもらいました。

 まだ寒いのにいつからお待ちだったのでしょうか。


「私たちはご飯にするけどどうする? 食べてきた?」


「えぇ、さっき息子と主人といっしょにね」


「そっか。じゃあ勝手に食べるけど気にしないでね。カトレア、あなたが食べたいものでお願い」


 今日はトンカツの気分なんです。

 朝から決めてました。

 ブラックオークの肉は大量にありますからね。

 ララちゃんから教わった手順で揚げ物も楽勝です。

 キャベツもお米ももちろんダンジョン産です。

 だから魔力もたっぷりですよ。


 お二人はずいぶん盛り上がってますね。

 久しぶりに会ったのでしょうか?


 ……あっ!

 もうお酒も飲んでます!

 師匠がここで誰かとお酒を飲むところなんて初めて見ました!


「お待たせしました。トンカツ定食です」


「わぁ~、これは美味しそうね! ブラックオーク使ってるの?」


「はい。ほかも全てダンジョン産です。デイジーさんもよろしければおつまみにこちらをどうぞ」


「あら、ありがとうカトレアちゃん。さすが気が利くわね」


「当たり前じゃない! 私の子なんだからね!」


 師匠が上機嫌です。

 お酒のおつまみになりそうなものをもっとララちゃんから習っておくべきでしたね。


「カトレア! あなたもこっちで食べなさい!」


「え……はい」


 気を利かしてたつもりだったのですが。

 師匠とデイジーさんは同じソファに横に座っていたので私は椅子を持ってきます。

 ソファをもう一つ買ったほうがいいのかもしれませんね。


「まさかこんな短期間にまた会うなんてね!」


「そうね。あなたがこの間いきなり来たときはビックリしたけどね」


「あ、そうだカトレア。デイジーはマルセールの町長をやってるの」


「そうなんですか」


 マルセールのお知り合いでしたか。

 この間会ったというのは十二月に大樹のダンジョンに行ったときってことですね。


 ……町長?


「マルセールの町長さんなんですか!?」


 ビックリして思わず大きな声を出してしまいました……。


「えぇ。といってもつい一週間ほど前に辞めたんだけどね」


「えっ!? 辞めたの!? なんで!?」


 お辞めになったんですか。

 師匠も知らなかったようです。


「限界を感じたの。これ以上はみんなが望むような町を作れそうにないって思ってね。だから最後に冒険者ギルドの立ち上げだけやって退くことにしたのよ」


「急すぎじゃない? 辞めさせられたわけじゃないんでしょ? それなら任期いっぱいまでやるのが普通でしょ?」


「そうなんだけど……実は失敗しちゃったことがあってね」


 町長さんの口調が暗くなりました……。

 いったいどんな失敗をしたのかが気になります。


「それがね……二人には言いにくいんだけど……」


 二人?

 私もですか?

 もしかして魔工ダンジョン関係のことでしょうか?


「……ロイス君を怒らせてしまったの」


「…………はい?」


 なぜここでロイス君?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ