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加増

書こうとしていたものとは違いますが、魔法の話です。

 私がこの国に喚ばれて随分経った。

 体感で言うと半年は経っているんじゃないかな。



『ステータス』




 島崎佑花 Lv 73


 属性 : 光 闇 水 風


 HP 3050/3050

 MP 11550/11550


 スキル : 属性魔法無効化 状態異常無効化 迎撃(中) 魔法付与



 しばらく確認していないことを思い出し、久しぶりにステータスを見てみたらいつの間にやらLvもガッツリ上がっていて、私のMPどうなってるんだろうっていつものことながら不思議に思っている。


 でも普段、ツァーリ様の魔法練習とアルバート様の剣の練習くらいしかLv上がりそうなことなんてやってないし、やっぱりお菓子を作るのに勝手に魔法付与されてるからそれが大きそうな気がするよね。

 お菓子は時間があれば毎日のように作ってるし、むしろそれ以外思いつかない。


 というか、スキルの迎撃(中)って何なんだろう。

(中)ってことは(小)とか(大)もあるの?



 相変わらずよくわからない自分のステータスを眺めていると、何か違和感があることに気が付いた。



「………………あれっ!?」



 そう、何故か属性が増えている。

 これまでは光、闇、水だったはずが、しれっと風が追加されていた。


 え、何で?

 よくわからないけど、これツァーリ様に報告しないといけないやつ…………よね?


 今日は魔法練習の予定はなかったからツァーリ様が魔道士団にいるかわからないけど、とりあえず行くだけ行ってみよう…




 お菓子を作る予定だったのを渋々諦めて、ファーラに案内してもらいながら魔道士団までの道を歩く。


 未だに魔道士団までの道順を覚えられない私と違い、ファーラはすでに団長室と副団長室も覚えたそうだ。

 その記憶力、ちょっとでいいからわけてほしいよ。



「ユーカ様?」


 どうして自分には道順を記憶するということが出来ないんだろうかとさすがに悲しくなりながら魔道士団の研究棟みたいな所を歩いていると、反対側から歩いてきた青い髪の男性に声を掛けられた。


「バーダック様」

「今日は副団長の魔法指導はお休みでは?」

「そうなんですけど、ちょっとツァーリ様に用事ができまして」


 歩く度に人に囲まれる騎士団と違って、魔道士団の人達って基本的にスルーされることが多いから、声を掛けてくれる人も限られるのよね。

 大体、団長のミライズ様か、副団長のツァーリ様、そして今声を掛けてくれたバーダック様の三人くらい。

 無視されるとかそういうことはないし、すれ違うと皆さん会釈はしてくれるけど、わざわざ声を掛けてくるようなことはないのですごく貴重な人達なんです。


 バーダック様はあの日からツァーリ様との魔法練習に時間の合う限りご一緒してくれて、私が失敗して地面に穴を空けたりしてもすぐ直してくれるの。

 今回何故か風属性が追加されてたけど、土属性は持ってないから私じゃ直せないし。


「そうでしたか。副団長なら第三研究室に居ましたよ」

「第三研究室…………ファーラ、わかる…?」

「申し訳ございません。そちらにはお邪魔させていただいたことがありませんので…」

「だよね…」

「ああ、それもそうか。じゃあ私が案内しようか」


 ツァーリ様が魔道士団の詰所にいることはわかったけど、副団長室にいない可能性をすっかり忘れていた私は、結局またしてもバーダック様の好意に甘えて案内してもらうことになった。


「一度ならず二度までもすみません……」

「お気になさらずに。後で副団長の所に行く用事もありましたから、ついでですよ」

「ありがとうございます…」


 優しいバーダック様のことだから、きっと本当にツァーリ様に用事があったとしても急ぐものではないのだろう。

 でも私が気にしないように気を遣ってくれたんだろうな。


 これ以上は逆にバーダック様の好意を無駄にしてしまうかもしれないと、私は素直なお礼を言って、余計なことは喋らないような口を噤んだ。





「ここが第三研究室だ」

「結構遠いんですね」

「こちらはほぼ副団長専用の研究室なんですよ」

「そうなんですか!?」


 副団長にもなると専用の研究室が持てるのかな…?


 と思ったら、バーダック様は苦い顔で続けた。


「あまりにも副団長が研究室にこもりきりで、次第に寝起きもそこでするようになってしまって。ほぼ私室のように使われていたのでだんだん他の人達の方が別の研究室に移るようになりましてね」

「ツァーリ様………」


 要するにツァーリ様が研究室を私物化しちゃったってことか。

 副団長が居座ってたら他の人達はそりゃやりにくいよね。



「失礼します。副団長、聖女様がお見えです」


 苦笑する私を一瞥して研究室の扉を叩くバーダック様。


 けれど返事はない。

 もしかしてどこかに行かれたとか…?

 それなら副団長室とか訓練場とかもやっぱり見に行ってみた方がいいのかな?


 どうしたものかと悩んでいると、バーダック様は大きく溜め息をついた後、さっきよりも荒くノックをし始めた。


「副団長! 入りますよ!」

「えっ!? いいんですか!?」


 かと思えばそのまま勢いよく扉を開けて遠慮なくズカズカと入っていってしまう。


 え、いいの!?


 私はどうしたらいいのかわからず、入口でファーラと顔を見合わせて首を傾げていた。



「副団長!!」

「…………?」

「副団長!!!」

「……………バーダック殿?」

「はぁ…ようやくですか…聖女様が御用事があるそうですよ」

「ユーカ様が?」


 バーダック様のあんな大声初めて聞いたわ…

 ツァーリ様も寝てた訳じゃないんだよね…?

 なのにあの声が聞こえないって、どれだけ集中してたの…!?


「ユーカ様、お入りいただいて大丈夫ですよ」

「あ、はい! お邪魔します…」

「お待たせしてしまったようで失礼致しました。私に用事とは、何かあったのでしょうか?」


 いつもの笑顔で聞いてくるツァーリの目元には隈がすごくて、恐らく寝ずに研究していたんだろうと簡単に想像できる。

 副団長なんてただでさえ忙しいだろうに、加えて私への指導もあるから本来の研究の時間が減っちゃってるのかもしれないよね…

 そうだとしたら申し訳ないなぁ…


「お忙しい中、邪魔をしてしまってすみません」


 ちょっと居た堪れなくなってそう謝ると、今度はツァーリ様とバーダック様が目を見合わせてパチクリされていた。


 どういうこと?


「ユーカ様、気になさらないで下さい。副団長は昔からこうなんです」

「熱中すると時間を忘れてしまうことはよくありますね」


 ですが、私が今一番興味があるのは聖女様の魔力についてですので貴女の訪問は大歓迎ですよと笑うツァーリ様に、私はどう反応すればいいのかわからなかった。


 ついでに、ここに来た用事を素直に話して大丈夫なんだろうかと少し不安になった。


 まぁ、そのために来たんだからちゃんと話すけど。


「それで、どうされたのです?」

「あの、今朝ふとしばらくステータスを見てないなって思って見てみたら、風の属性が増えてたんです」

「「は?」」


 バーダック様ならいつも魔法練習に付き合ってもらってるし問題ないかと思い、二人に自分のステータスを見せる。


 すぐに「何から指摘していいのかわからないステータスですね…」とバーダック様の困惑した声が聞こえてきたけど、その反応は予想出来ていたものなのでスルーさせてもらう。

 ツァーリ様の方を見ると、何やらかんがえのんでいる様子だった。



「これは、水の属性が増えた時と同じ現象かもしれませんね」

「えぇと、もしかしたら私が扱えるタイミングを待ってステータスに現れているのかもしれないと言っていたやつですか?」

「えぇ。そしてその予測で言うと、ユーカ様は全属性を使える可能性も出てきます」

「全属性…」


 そんなに使えるようになったところで制御できるものなんだろうか。

 でも確かに可能性としては有り得るかもしれない。


「…となると、ユーカ様が現時点で扱える魔力量を確認する必要が出てきますね」

「このMPでは、半分が許容だとしてもそこら辺の魔道士よりも遥かに高いですけれどね」

「ユーカ様、本日は魔法指導の予定はありませんでしたが、少しお時間を頂くことはできますか?」

「大丈夫です」

「バーダック殿のお時間は?」

「私も問題ありません」

「では訓練場に参りましょう」



 私達は頷いて第三研究室を後にし、訓練場へと向かうことになった。

読んで下さってありがとうございます!

魔法の話となるとどうしてもツァーリとバーダックになりますね。もう少し続きます。

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