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反復

前話の続き、魔法の話です。

 訓練場に来た私達は、さっそく私が今の時点で扱える魔力量を測ることになった。


 …といってもどうすればいいんだろう。

 前に騎士団でやった時みたいに剣に可能な限りのMP注げばいいの?

 わからないのでツァーリ様に聞いてみると、悩む所ですねと少し渋る声が聞こえてきた。



「以前と比べてユーカ様の最大MP量が大幅に増えています。それはつまり、ユーカ様が制御できるMP量も増えているということです」

「はい」

「あの時でさえ、私が創り出せる最大の防御壁はあっさり崩れました」

「副団長の防御壁が…!?」


 バーダック様がすごい驚いてると思ったら、あの時は騎士団の訓練場でやってたから騎士さん達は見てたけど、魔道士さん達はいなかったっけ。


 いつもの水の剣だとツァーリ様の光の壁は硬すぎて痛くて切れないんだけど、確かに魔力量を増やして刃先に練りこんだら思っていたより簡単に切れてしまった。


 でもバーダック様の驚き方から察するに、きっと魔道士団の中でもツァーリ様の防御壁トップクラスってことなんだろう。


「バーダック殿にも来て頂いたのはユーカ様の魔力が暴発してしまわないとも限らないので、私と共に防御壁を張って頂きたいからです」

「それは構いませんが……副団長で無理となると私では到底防ぎきれませんよ」

「ですからユーカ様には一度に集中していただくのではなく、数度にわけて追加してみていただきたいのです」

「なるほど……でもどのくらいずつにすればいいんですか?」

「そうですね…慣れている魔法の方が良いでしょうから、魔力消費量の多い光の剣か闇の剣で普段の五倍に致しましょう」

「それを魔力操作がブレるギリギリの所までやればいいってことですよね?」

「ええ」


 光と闇の魔法の消費量は、火、水、風、土の魔法のほぼ二倍。

 ということは水の剣を十倍で創るのと同じってことか。


 騎士団で水の剣を作った時は五倍だと確か団長さんの剣にヒビが入ったのよね。

 それの倍となると、結構MP消耗しそうだなぁ。


 あの時は剣を五本創り出して重ね合わせて合体させるしか出来なかったけど、あれから魔力操作の練習をしてきて少しは出来るようになったはずだから、きっと今なら一本の剣でいける気がする。



 私は、ツァーリ様とバーダック様が私達の周りを囲むように『グランドウォール』と『ライトウォール』を二重に張り巡らせたことを確認して手のひらに魔力を集中させていく。


 いつも最初に創り出す魔力量から倍に、倍にと増やしていき、体感的に五倍くらいかなという所で剣の形に造形した。



『ライトソード』



 そうして生み出された剣はいつもより眩く光り輝いていた。

 光の剣で魔力増やしてみるのは初めてだけど、こんな風になるんだね。

 水の剣みたいに濃縮された色になるんだと思ってたよ。



「今の消費MPはどの程度ですか?」

「えぇと、『ステータス』」



 島崎佑花 Lv 73


 属性 : 光 闇 水 風


 HP 3050/3050

 MP 9050/11550


 スキル : 属性魔法無効化 状態異常無効化 迎撃(中) 魔法付与



「2500……かな?」

「ということは、あの時に扱えた最大の魔力と同じくらいという訳ですね」

「あ、そうですね」


 確かあの時は二千強くらいは消費してたはず。

 それでもかなりの疲労感があったのに、今は最大値が増えてるからなのか、魔力消費量が大きい魔法もどんどん使うようになって身体が慣れたのか、そこまでの疲労は感じない。


「ではそこから少しずつ魔力を増やしてください」

「はい」


 前は今くらいのMP量が最大だったことを考えると、慎重に増やしていかないと危険だよね。


 私は大きく息を吐くと、手に握る光り輝く剣にゆっくりゆっくりと魔力を注いでいく。




「剣が…!」

「更に輝きを増しましたね…」


 目を閉じて集中しているので私には見えないけど、どうやらお二人の反応から更に光の剣は輝きを強めたらしい。


 何となく二十倍くらいはいった気がするけど、もう少し…と増やそうとしたらあの時のようにコントロールがブレる感覚に襲われた。


 これ以上はダメってことね。

 それでも前よりも扱える魔力量は格段に増えているし、きっと焦るなってことだと思うから無理に増やそうとはせず、目を開けてツァーリ様にここまでだと手を挙げてみせる。





「お疲れ様でした。消費量はどうでしょうか?」


 光の剣を消してステータスを確認してみてもやっぱり二十倍程の消費で、何となくの感覚とほぼ一致していた。


 ツァーリ様とバーダック様も防御壁を解除して私のステータスを覗いている。



「それでもまだ半分のMPが残っているとは…」

「このMPを全て制御出来るようになった時、全属性を扱えるようになるのかもしれませんね」

「なるほど…?」

「まだわかりませんけれども、可能性はあると思いますよ」

「全属性なんて前代未聞ですね」


 このステータスを見ると有り得ない話ではないと思ってしまいますけれども。

 そう言って笑うバーダック様と頷くツァーリ様に私は苦笑するしかない。

 自分でもこのステータス、謎なんだもの。



「さて、このまま風属性魔法の練習をされますか?」

「ツァーリ様は大丈夫なんですか?」

「構いませんよ」

「それならお願いしたいです!」


 どうせ今から戻っても、お昼からはラミィと出掛ける予定だからお菓子作る程の時間はないし。

 それに、風魔法も使ってみたい!


「では、本日はこのまま練習を行い、明日はお休みにしましょうか」

「ありがとうございます!」


 私が意気揚々と魔法練習を申し出ると、ツァーリ様は今日と明日の予定を入れ替えてくれた。

 ゆっくりお菓子を作りたかった私にとってそれは有難いことなので、二つ返事で受け入れる。


 そうなると明日は夕方のアルバート様の剣の指導しか予定がなくなるし、朝からお菓子を作って、久しぶりに騎士団に差し入れに行こうかな。

 しばらく騎士さん達に会ってないし、そのままアルバート様を待たせてもらえれば。


 うん、明日の予定が決まった!





「風の下級魔法から参りましょうか。水属性と同じ感覚で『ウィンド』を手のひらに生み出してみて下さい」

『ウィンド』

「結構です。水属性魔法で随分と扱いが上手になりましたね」


 属性が違うだけで魔力消費量は水と同じだから、手のひらに水を集めるつもりでやっていたものを風に置きかえただけだったんだけど、それでよかったみたい。


 けど、そのまま今の時点で水属性で使える魔法と同レベルまで一気にやることになったのはさすがにスパルタすぎませんか?




『ウィンドウォール』

「もう一度」



『ウィンドランス』

「もう一度」



 何度も何度もやり直しって言われるけど、他の属性で出来てることだからかツァーリ様からのアドバイスはない。

 繰り返して身につけろってことなんだろうね。


 あと、最近言われるようになった“発動時間の短縮”のこともあると思う。

 いざ討伐に同行した時、魔物は魔法の発動を待ってくれないんだから、どれだけ早く発動できるようになるかは生存確率を大きく左右するって。

 確かにそうだと思うし、そのためにはひたすら反復練習するしかないのもわかる。


 わかるので、とにかく瞬時に出せるくらい慣れるしかないと自分に言い聞かせて集中を切らさないようにする。


 私はMP量はかなりあるから尽きることはないんだけど、どうしても集中力が途中で切れちゃうんだよなぁ…

 お菓子作りならいつまででも集中力続くのに。


 あ、お菓子作りたい。

 明日は何作ろう、







 …なんてうっかり考えてたら案の定生み出した風の壁がブレて閉まってツァーリ様に怒られた。


「ユーカ様、集中して下さいね」

「す、すみません…」

読んで下さってありがとうございます!

佑花は根が真面目なのでやらなければならないことは頑張ってやろうとするんですが、どうしてもお菓子>>>>>>>>他のことになる子です。

もはや、自由にお菓子を作るために他のことをやっているとも言う。

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