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《32》恋愛裁判?

皆さんこんにちは!

当作品を開いていただきありがとうございます!


そろそろ初夏なれど雨が多くなりましょう。気温が大きく変わります。ぜひ皆様におかれましては体調にお気をつけられまして、どうかご自愛くださいませ。

 GW中日。赤色の数字が連続で並ぶ一週間のうちで黒く塗られた逆紅一点の平日。俺は自転車をかっ飛ばしていた。


 くっそぉおぉお!寝坊したぁぁぁあぁぁぁ!


 休みボケを見事にかまして盛大に朝寝坊。むくりと起きて時計を見たときにはすでに登校5分を過ぎていた。1人暮らしのアパートに戻っていた俺は大急ぎで制服に着替え、まともな朝食を取らずに自転車にまたがってアパートから飛び出してきた。


 うわぁぁぁぁぁあああ!一限の数学小テストだぁぁ!!!


 小テスト一つも無駄にしようものなら死滅が待ってる俺の数学レベル。何が何でも間に合わせくてはならない。すでに息は上がっていたが鞭を打って飛ばす。


 ちっくしょう!これがパンでも咥えておけば曲がり角で美少女とぶつかるイベントなんだがなっ!!!


 風を全身で受けてボタンをとめていない制服のブレザーがバタバタとはためく今の速度でそんなことすれば死人モノだ。出てこないことを祈ってブレーキに火花を散らさせタイヤの跡をアスファルトに残し、カーブする。遠心力はかなり強く汗が飛んだ。


 間に合えッ!!


 校門を抜けて駐輪場へ特攻。自転車を放り投げるように止めて時計を確認。もうすでに40分を示す8の数に長針がさしかかっていた。いつ鐘がなってもおかしくない。地面を蹴り込み砂を跳ねあげて下駄箱へ疾走する。


 サイクリングの次はランかっ!もうトライアスロンだよっ!スイムねーけどよっ!!


 下駄箱に靴を投げ入れ上履きを引っ張り出す。そのまま靴下で廊下を一陣の風になって吹き抜ける。ここにきてゲーム発売日の感性が活きる日が来ようとはなぁ!!先行く教師や生徒を瞬く間に抜き去っていく。


 そのまま一歩も速度を落とさず、階段を三段飛ばしで駆けあがって2年文系棟の三階まで上がったとき。


 キーン


 鐘が鳴り始めた!この鐘の音が鳴り止む前に教室へ!!一気にラストスパートをかける。


 カーン


 あと6教室!


 コーン


 4!音の折り返し!!


 キーン


 3!


 コーン


 2!


 カーン


 1!


 コー


 ここだっ!!


 全速度を両足の裏で受け止める。ザサァァァァァッ!両足の裏で床を削る。


「はぁっ…はぁっ…はぁっ…はぁっ…。」


 ン


「と、藤堂…。もうすこし落ち着いて入ろうな。」


 HRにきていた先生に咎められる。


「セーフですよねっ!?!はぁっ…はぁっ…。」


 もっとも俺はそれどころじゃないが。


「はあ?」

「遅刻してませんよねっ?!はぁっ…。」

「あ、あぁ…。」

「しゃぁぁぁ!!!ぁっぶねぇ!!!」


 なんとか間に合ったようだ。全身で喜びを表しそのまま教卓の前で力尽き、仰向けに寝転がって肩で息をする。


「藤堂―、席つけー。」

「今は無理なんで息整えたらいきまーす。」

「いやお前が良くてもな…。」

「は?」


 何か気まずそうな先生。そっちの方を見る。1人の女生徒が立っている。


「レースの白か…。」


 見えていた男の理想郷(アヴァロン)。ついその世界はどんな色だったか口にしてしまう。


「藤堂!おい!」

「バカ藤堂!!」


 榊と長門の声がする。


「と・う・ど・う・く・ん。」


 ヒェっ…。やっちまった。


 教卓の前、すなわち委員長、相澤杏果の前で俺は本人の下着の色を口していたのだった。猛吹雪が吹き荒れ始めた。


「なーにしてるのかな?」

「さーせんしたぁ!!!」


 疲れが吹き飛ぶような冷酷な声がふってきた。反射と変わらない速さで土下座を決める。ガツンと頭を床に打った。


「藤堂きさまぁ…。」


 あれっ?なんか教室の空気変わったぞ?別のところから声が…。


「新島さんの胸を好き放題だけでは飽き足らず…。」

「相澤の太ももからその先まで覗きよってからに…。」


 見渡すと長門と榊は「やっべーあいつやっちまった!!!」と言わんばかりの顔しているし、そのほかの男子の目が執念と怒りの炎が上がっていた。


「そうだよっ!私は私の太ももは好きにしていいとは言ったけど、そこまでしていいなんて言ってないよっ!!」

「「「「「「「「「あっ?」」」」」」」」」


 教室の空気がが杏果の声でピシッとひび割れた。長門と榊は「ご愁傷様です。」と手を合わせてきた。


 え?なにが起こるの?


「藤堂きさまぁ!!!!」

「そこになおれぇ!!!!」

「えっ?えっ!?」


 意味がわからないまま激昂する男子クラスメートとその数人に連れられ、教室のど真ん中に正座させられる。あたりの机がどかされあたかも法廷が出来上がった。


「これより!被告人!藤堂照史の恋愛裁判を執り行う!!!!」


 高らかに宣言された。えっ?なに?俺、裁かれるの?なして?!


「待てよ!なんで裁かれなきゃならんのさ!」


 謂れのない裁判を裁判長役と思われる生徒に抗議する!


「だまらっしゃい!貴様は新島さんという素晴らしい幼馴染がいるのにもかかわらず!相澤さんと姫宮さんというこの学年の六麗華のうち三人を(たぶら)かしている罪だ!!」

「冤罪だ!そんなつもりは微塵もない!!」


 声高らかに反論する。


「加えて、普段から身に余る、うらや…過度なスキンシップや今の行動についてもしっかり裁いてくれよう!!」


 されど罪状はまだ突きつけられた。

「そうだ!そうだ!」「俺らの至宝を好き勝手しやがって!!」「断じて許さん!!」などなどあっちこっちで非難の声が上がる。


 ヤベェ!こんなに敵に回してたっけ?!


「そんなこと俺に言うなよ!いつのまにかそうなってたんだ!!」


 事実をそのまま告げる。俺だってなんでこうなっているかわからない。


「きっさまぁ!しらを切るつもりかぁ!!!」

「断じて許すまじ!」


 なぜかさらにヒートアップした。叫び声が窓ガラスを割りそうなほどでかい。


「即刻コヤツを学内引き回しからの打ち首にして晒せぇぇ!!」

「物騒だな外野ぁ!おい!!!」


 こんなところで死んでたまるかよ!!なんで友達といたら殺されなきゃならんのだ!


「裁判長!俺から情報があります!」

「うむ!認める!」


 写真部兼新聞部の男子だ。一枚の写真をファイルから取り出して高々と掲げる。んー?それは映画の…。


「これをご覧下さい!これはこの間ナスカに行った時のモノです!午後15:30頃!映画館の方で騒ぎを聞きつけたので駆けつけたところ!被告は六麗華の1人、新島真実さんに頬に接吻をされていた模様です!」

「「「「「「な、なんだってぇ!!!!!」」」」


 クラスが再び大きくどよめく。

 やっぱ帰る時の写真だ!耳打ちされて黄色い声もらった時の!なんでそのタイミングなんだよ!もうすこし早く来いよ!


「違う!俺はされてない!」

「静粛に!!」


 黙らされた。


「しかももう一枚の写真から分かるようにいつもよりも距離が近いです!」


 そう言って写真部は別の写真も取り出して掲げた。今度は帰る時のだ。周りからは「クッソ羨ましい!」だの「リア充は爆発しろ!いや俺がする!」だの聞こえる。


「以上から私は被告に有罪判決を要求します!」

「被告人!反論は?!」


 きた!ここで弁明しなくては!!


「あります!!」

「認めん!却下だ!!」

「ええっ!!!横暴だ!人権侵害だ!!」

「知ったことかぁ!!」


 反論をする余地もなく一瞬で発言権を奪われた。


「判決を言い渡す!」

「待ってくれ!」

「被告人…。」


 そんな静止は聞き届けられることなく、無慈悲に判決が告げられる。


 こうなりゃ次が「は」であれ!「は」になれば「被告人は無罪!」だ!


「を教室掃除一ヶ月の刑に処す!!」


 ダメか…。


「「「ギルティーギルティーギルティー!!!!!!咎人には罰を!罪に償いを!!!咎人には罰を!罪に償いを!咎人には罰を!罪に償いを!!」」」

「…まじかよ…。」


 教室中が歓喜の声に震える。中にはよくわからん舞をしている奴もいる。


「嘘だろ!!帰るのが遅くなる!あんまりだ!」

「知らん!罪人はこれを徹底するように!!閉廷!!!」


 黒板消しを二度と教卓に叩きつけ無慈悲に恋愛裁判は幕を閉じ、俺のわずかな奮闘も虚しく舞うチョークの粉のように散った。俺は結局1ヶ月掃除当番をすることにされた。


「うっそぉ…、勘弁してくれ…。」


 悲壮に顔が歪みガクッと四つん這いになる。こんなことになるなんて思ってなかった。ゲームの時間が減るとかまじで無理…。あぁ、語彙力が死んだ…。


「「藤堂…。」」


 ぽんと2人が肩に手を置いた。2人が「どんまい。」と言ってサムズアップしてきた。お前らも道連れにするぞ?…八つ当たりか…。


「藤堂くん…なんかごめんね?」


 杏果がひょこひょことやってきてしゃがみ小声で謝ってきた。


「もういいんだよ…もう…。グッバイ、マイスイートタイム。ひと月経ったらまた会おう…。」

「おーおー、旦那ぁ本気で沈んでらっしゃる。よーしよし、可哀想ですなぁ。」


 長門がそう言って頭を撫でてきた。

 もう何も言い返したくない…。また煩悶とした一日になりそう。


「えー、そろそろ終わったかー?授業始めるぞー。」


 そう言って数学教師が入ってきた。


 お前いるんなら止めろよ。クソゴミチキンかよ…。


 その後の小テストはなんとか満点。


 しかしどれだけテストの回答が丸に埋め尽くされても俺の心は空っぽだった。


 もうゲームの時間が俺の生きるエネルギーというならばそれを削がれるってだけでストレスが山積みになった。


 出席番号と日付の一致で当たりやすい日だったのに、そのことばかりに頭がいき、二限目の日本史の時間には江戸幕府の藩の分け方をやったが、「親藩以外に何と何があるか。」という問いに対して、「譜代」と「外様」ということはわかっていても口から出てきたのは「ブザマ大名」だった。「無様なのはお前だ。」と榊につっこまれ、穴があったら引きこもりたいほどに恥ずかしかった。


 そのまま三限目の世界史では「キリスト教の聖地で今もなお宗教的にどこの聖地か争っているところはどこか」と問われ「メッカ。」と答え、ヴィア・ドロローサ(悲しみの道)を十字架なしで歩いてやろうかと思った。


 そして続く四限も似たり寄ったりの醜態を晒して、半日だけで築いてきたいろいろが崩れた気がした。


 そして迎えた昼休み。今日は朝が飛び出しと同じだったので真実には申し訳ないながらスパルタクスに混じって購買戦争に向かう日がきた。コンディションは最悪で踏み倒されて死ねる自信がある。


 むしろいっそ殺せ…。


「そいじゃ真実にちょっと待つように言っておいてー。」


 榊に伝言を頼む。


「生きて帰って来いよ。」

「自信ねーわ。」

「線香くらいはあげに行くよ。」

「あーざっ。」


 廊下に立つ。後ろから迫ってくる強行兵の波にのまれる前に今日二度目の全力疾走をかます。




 ◇◇◇



 今送り出した藤堂が購買に向けて走っていった。あの下のラグビー部や野球部が押しかける軍団に混じって買い物は正直キツいだろうよ。本当に帰ってこれるかは賭けだなぁ…。


「あれ?アキは?」


 そこにはなぜかお弁当を二つ持った新島さんがいた。とりあえず藤堂に頼まれていたことを伝える。


「あー、今あいつ購買だよ。」

「購買?」


 頭に綺麗にはてなマークが浮かんでいる。


「あいつ今日寝坊して作ってきてないっだって。」

「だから今でもRINE既読付いてないのね。」


 そういって二段連なるお弁当を見ているあたりさしずめどっちかは藤堂のために作ってきたんだろう。まぁ、ちょっと今朝のことを言っておくか…。


「あいつ朝に裁判受けて放心状態だったからねぇ…。」

「裁判?なんの?まさかっ!このあいだの!」


 すこし血の気が引いたような顔をした。なにか関係があるのか?あの右手の切り傷と…。


「俗に言う恋愛裁判だね。」

「恋愛裁判?」


 再びはてなが浮かんだ。


「新島さんと付き合ってる説ですこしね。」

「詳しく聞かせて!」


 ガシッと肩を掴まれた。


 えっ?なにこの人凄く力強いんですけど?藤堂、いつもこれに腕締められてるの?血流れてる?


「早く!」

「あ、あぁ、今朝な…。」


 そういって朝のことをそれはそれはまつびらかに話して聞かせた。最後まで聞き終わったあたりで「そう。ありがと。」といって解放された。その後に「それじゃあもういいよね?」と独り言をいって新島さんは藤堂の席に向かった。


「たーま〜。」


 藤堂が帰ってきた。手には買い物袋を持っている。そしてなぜか笑顔。


「お帰り…。何かいいもん買えたのか?」

「あぁ。見てみろ。」


 そう言って取り出したのは購買組に最人気で、そうでない俺らも名前くらいは知っている焼きそばパンとホイップメロンパンがでてきた。


「大戦果じゃないか!!!」

「だーろ!!俺、購買組向いてるかもしれんわ!」


 そう言って意気揚々と席に引き返していった。その姿を見た新島さんが藤堂に飛びついて、相澤さんが引き離している。大変だなぁ…。


「手作り弁当だとぉっ!!!!」

「藤堂!きさま、またもや!!」


 いきなりクラスメイトの大声で叫んだことにびっくりした。本当に大変だなぁ…。



 ◇◇◇



 初購買戦争には大金星を挙げて教室に凱旋した。すこし榊に得物の自慢をして大満足で席に戻るといつのまにか真実が席にいた。


「あっ、アキ!」

「うおっ!いきなり飛びつくな、驚くわ。」


 すこしバランスを崩して周りの席によたつく。


「ちょっと!新島さん!学校ではそんなにベタベタしない!風紀が乱れるわ!」


 杏果がつっこんできた。いやお主、風紀委員会ではなかろ?


「風紀なんてどうでもいいじゃない。ねぇアキ?」

「いや、よくないことはないと思うぞ?ないといろいろ問題あるだろ。」

「じゃあアキはこーゆーの嫌い?」


 そう言ってワイシャツの胸のボタンを外してその中を見せてきた。そこには豊かな二つの……


 …


 …ん?なんだその銀色の棒状で上にピンチが付いているの…。それ、まさかバタフライナイフじゃねぇの?いや、間違いねぇわ。


 …


 …まーじか…。いやー、なんのために持ってるし。いや予想はつくけどさ?


 バタフライナイフを見つけた時、胸を見せられたのとは別のヒヤリとしたドキリを感じた。


「あっ、あー、悪くないねー。あははっ。」


 声がひきつる。作ったような苦笑いしか出てこない。


「藤堂くん!デレデレしない!」

「ウィッス。」


 そんな問題じゃすみませんぜ?委員長…。


「でね!アキ!ハイ!手作りお弁当!!RINE見てなかったでしょ?」

「あー、ありがとう、助かるぜ。今購買行ってきたけど量がどうしても足りないからな。」


 その時また今朝と同じ空気が流れた。


 えっ?また?


「手作り弁当だとぉ!!!!!」

「藤堂!きさま、またして!!!」


 もー!なんでこうなるんだヨゥ!!


「アキ!こっち!」


 そう言われて真実にいつも通りの掻っ攫われていく。「新婚旅行―!」とか「エスケープ!!」とか聞こえるがもう勘弁してくれ。これ以上ペナルティは増やしたくはない。


 なされるがままに中庭に今日も今日とて後ろ向きフルダッシュ。残り半日…俺生きてっかな…。

ここまでご一読いただきありがとうございました!感想等ございましたらツイッター等で受け付けております!

ブクマ等していただけたら泣いて喜びます!

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