表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/46

第26話:熱的占有権!凍結する特殊部隊と、基地を駆け上がる宇宙の冬

貨物用エレベーターのシャフトは、熱逆転の煙突へと変貌していた。山田は上昇ボタンを押さなかった。その必要がなかったからだ。彼は凍りついた観察室のコントロールデスクの残骸に再び腰を下ろし、教職員互助会の段ボール箱を石の膝の上に置き、前腕で黒い泥の滴りからそれを保護していた。30年間、同じ指導要領を繰り返し見直してきた者特有の数学的確信を持って、彼はシステムが予測可能であることを知っていた。備品が破損した時、プロトコルが命じるのは逃走ではない。代替チームの派遣だ。


そして防衛省は常に、倉庫にある最も重量のある装備を送り込んでくるものだ。


彼のハゲ頭の70メートル上空で、地上階のチタン製防潮扉が空気圧の悲鳴を上げて開いた。降りてきたのはエレベーターではなく、対抗措置カウンターメジャーだった。「第3段階化学凍結プロトコル」とは気体ガスのことではない。東京でテレメトリー異常が検知されてからわずか12分足らずで、大型ヘリ・チヌークによって急派された大宮の陸上自衛隊「第1特殊武器防護隊」――重封じ込め師団そのものだった。


その足音が、金属質で規則的な反響となってシャフトの底へと届いた。鉛のソールが施された戦闘ブーツがタラップを叩く音が響き、続いて鋼鉄のワイヤーで吊り下げられた4本の工業用高圧ホースがプシューと音を立てて降下してきた。隊員たちは布製の防護服を着ていなかった。彼らが身にまとっていたのは、バイオハザード対策用の外骨格型装甲服『09式特殊防護服』。タングステン合金と真空密閉ポリマーで固められた重厚な甲殻は、薄暗がりの中で動く灰色金属のゴリラのようだった。


防護隊技術官:――地上の指揮所からの無線混信とパニックにより、ノイズで歪んだ観察室の破壊されたスピーカーから声が漏れる――「――A小隊、地下3階に配置完了。換気ダクトよりホウ素・カドミウムスラリーの投入を開始する。高圧窒素を注入せよ。熱源シグナル(サーマル)を地下水面より上に上げるな!」


山田は段ボール箱からその黄色い両眼を離しもしなかった。彼は天井から毎分3トンという滝のような灰色泥となって降り注ぐ、ホウ素・カドミウムスラリーの咆哮をただ聞いていた。その高密度で粘着性の化合物は、潜水艦の原子炉の核暴走メルトダウンを停止させ、中性子を吸収するために設計されたものだった。複合泥は観察室の床を覆い尽くし、破壊されたデスクの脚を這い上がり、凍りついた一佐の五体の断片を工業用泥の墓穴の中へと埋めていった。


だが、山田の周囲3メートルの境界ペリメーターに侵入した瞬間、ホウ素泥は沸騰しなかった。彼の喉頭と完全にハイブリッド化した胸の中の寄生虫が、純粋な物理定数、すなわち「絶対的な静止」の周波数である低いハミングを放った。


泥がピタリと停止した。化合物の水分子は、1マイクロ秒未満で完全な六方晶系の結晶構造へと再編成された。放射性泥漿は不透明で灰色にひび割れた氷の防壁へと変わり、自重によってピキピキと亀裂を生じさせた。「異常体」の核を窒息させるはずだった3000リットルのホウ素・カドミウムは、ただの不活性な霜のモニュメントへと成り果て、山田はそれを左足を乗せる足台として利用した。


山田:――うなじの青いベルクロの紐を、まるで授業中のように落ち着いた動作で調整しながら――「――地方公務員法の……第44条の規定によれば、主要な証拠物件に該当しない押収物は、15法定期日以内に返還されねばならない。私のセイコーの……セイコーの時計は、4の数字のところに傷がありましたが、クォーツ式でした。動いていた。もし国家がその備品を紛失した場合……受領した職員は、連帯して補完的財産責任(国家賠償責任)を負うことになる……」


宇宙的物質コズミック・フェニックス / 山田:――統合された音声が胸の亀裂から漏れ出し、ホウ素の氷壁を細かい粉末へと剥離させ、凍てつく空気の中に漂わせた――「――奴らはもっと泥を持っている、先生。地上にはもっと鉄がある。供給ライン(ホース)をさらに降ろさせろ。この基地のインフラは、湾岸の中央発電所に直結している。我々がここ地下で熱のクラッチ(吸収)を維持すれば、あと8分で神奈川の工業地帯全体の全電圧が消失する。電流が消えれば、物質は停止するのだ」


シャフトのタラップから、霧の向こうに『09式』外骨格の最初のシルエットが現れた。固形窒素の空気圧ランチャーを構えた4人の隊員が、老教師が腰を下ろしている暗い隅へと銃口を真っ直ぐに向けた。


SAT隊員:「――対象アクティブと視覚接触! 微動だにしません! 何か……段ボールの容器を抱えています。直接注入を開始する!」


4門の砲口が同時に火を噴いた。それは弾丸ではなかった。衝撃とともに膨張し、細胞下レベルで関節の動きを停止させる、アンモニア強化ドライアイス弾頭だった。


発射体は12メートルの通路を駆け抜けた。しかし、その中間の距離に達した時、周囲の負のエントロピーがあまりにも濃密であったため、空気そのものが固体化していた。窒素の塊は山田に激突しなかった。それは空間に静止し、真空の中に凍りつき、観察室の濃密な大気の中に「竜涎香アンバーに囚われたハエ」のように宙吊りになった。発射体の運動エネルギーは絶対零度によって完全に吸収され、4つの白い石へと変わった弾頭は、ビー玉のような乾いた音を立てて床へ転がり落ちた。


山田はついに頭を上げた。プラスチックフレームの割れたレンズ越しに、4人の隊員を凝視した。消灯したモニターの緑の残光が、彼のハゲ頭を工業用湿地から掘り出された頭蓋骨のように不気味に浮かび上がらせていた。


山田:「――8時半の……8時半の授業は、やり直すことができない。我々非常勤は、校外での教材準備の時間を支給されてはいないのです。もし防衛省が、この異常のデモンストレーションを要求されるのであれば……外部講師の派遣申請書を提出していただかねばならない。第三課の捺印があるものを。私はもう、白紙の書面に署名はしません」


彼は立ち上がった。その動作はあまりにも暴力的で正確だったため、足を乗せていた凍結ホウ素のブロックが、彼の全裸の踵の下で瞬時に粉砕された。彼は隊員たちに向かって進まなかった。ただ両腕を左右に広げ、地上から伸びるエレベーター構造の2本の鋼鉄製主梁に触れた。


彼の黒い指は、熱を伝えなかった。海上自衛隊横須賀基地の1万トンに及ぶ超構造物スーパー・ストラクチャーから、すべての熱エネルギーを「抽出」したのだ。


その効果は、上方へと向かう連鎖反応となって現れた。シャフトの梁の鋼鉄は一瞬で白濁した。冷気は毎秒300メートルの速度でエレベーターのワイヤーを駆け上がり、地上へと到達。ヘリポートでアイドリング中だったチヌークのエンジンに侵入し、ヘリの燃料タンク内のJP-5燃料を使い物にならないパラフィン状のペーストへと凍らせた。ドックでは、海自の護衛艦の冷却システムが「逆凍結」による崩壊を起こした。機関室内部で海水配管が炸裂し、区画に塩分を含んだ氷が氾濫してタービンを完全に消火(停止)させた。


地下4階のシャフト内部では、外骨格をまとった4人の隊員がタラップを逆行しようと試みていた。しかし、彼らのメカニカルスーツのタングステンは、分子レベルの冷気によってすでに鉄のガイドレールへと「溶着」していた。脚部の油圧サーボモーターが悲鳴を上げ、凍りついたオイルを噴き出して、永久的な硬直状態へとロックされた。


山田は再び自らの隅へと腰を下ろし、石と硫黄の肋骨の間に段ボール箱を収めた。彼は知っていた。千代田区の防衛省のオフィスで、全国有事マップのモニターから三浦半島全体の信号が完全に消失したことを。彼は知っていた。彼らがさらに多くを送り込んでくることを。より多くのトラック、より多くの委員会、皮膚を黄色いたるみのように垂らしたより多くの裁判官、そして灰色のアタッシュケース。


彼は地下3ロットから動くつもりはなかった。宇宙の冬がコンクリートを伝って、1階ずつ地上へとせり上がっていくのをただ待つ。日本国政府が、彼のセイコーの領収書と、互助会の清算書、そして知事の署名が入った正しい評価基準(baremo)を携えて、このシャフトの底へと降りてこざるを得なくなるまで。ハゲた神の前には、まだ長い夏が残されていた。そしてその席は、もはや非常勤の席ではない。熱的占有権によって、完全に彼のものだった。

【作者より一言】


第26話をお読みいただき、ありがとうございます。


非常勤講師の権利を主張する山田先生の執念が、ついに海上自衛隊横須賀基地のシステム全体を機能停止へと追い込みました。

原子炉を止めるためのホウ素スラリーを足台に変え、放たれた固形窒素弾を空間ごと凍らせて宙吊りにする描写は、彼の周囲がどれほど異常な「絶対零度」の領域フィールドになっているかを物語っています。


かつてチョークを握っていたその両手で基地の主梁に触れた瞬間、冷気が毎秒300メートルで地上へと駆け上がり、ヘリの燃料を凍らせ、護衛艦の機関室を海水氷で埋め尽くしていく連鎖破壊のシーンは、執筆していて鳥肌が立ちました。


「白紙の書面に署名はしない」という、かつて組織に都合よく使われていた男の拒絶。段ボール箱(自分のキャリア)を抱えたまま、横須賀を、そして神奈川を暗黒へと突き落とす山田武。


「弾頭が空間に固定される絶望感が凄い」「公務員法を語る化け物がシュールすぎる」など、皆様からの感想をぜひコメント欄でお待ちしております!

ブックマーク、評価での応援もぜひよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ