第1話:神光降臨!でも選ばれたのは3TBのHDDを持つドブネズミ教師でした
神戸にある山中高校の2-B組の教室の窓には、夕日が鈍い光を投げかけていた。空気には、古びたチョークの匂い、停滞したホルモンの匂い、澱んだ空気、そして山田武の脂ぎった汗の匂いが漂っていた。
山田は41歳で、役人らしいわずかな猫背があり、髪は頭皮にへばりつくほどギトギトで、頭頂部に天井の明かりが反射していた。彼はスーパーの衣料品コーナーで買ったベージュの半袖シャツ――脇の下には黄色っぽい汗染みがついていた――と、丈が短すぎてかかとにトマトの柄が入った灰色の靴下が丸見えのプリーツパンツを履いていた。
使い古したチョークで、山田は黒板に二次方程式をぐちゃぐちゃと書きなぐっていた。彼の声は単調で平板なブーンという音のようなもので、聴いているだけで昏睡状態に陥りそうだった。
山田:「独立項を反対側に移動すると……」――生徒たちを見もせずに、彼はつぶやいた――
彼が生徒たちを見なかったのは、もし視線を上げれば、その飛び出た黄色がかった目が、どうしても3列目の女子生徒の制服のスカートの方へと逸れてしまうからだ。山田の頭の中は文字通りドブ溜めだった。口が機械的に「平方根」と繰り返す間も、脳内では3テラバイトのハードディスクに隠されたフォルダを次々と巡らせ、その変態的な執着に浸りながら、「今夜、あの薄汚いアパートに戻ったらどんなクズ動画をダウンロードしようか」と計画していた。
その時、空が紫がかった赤に染まった。
ドーーーーン。
それは雷鳴ではなかった。まるで現実の織物が引き裂かれたかのようだった。山中高校の窓ガラスが内側へ向かって一斉に爆破し、無数の鋭い破片が飛び散った。生徒たちは頭を抱えて悲鳴を上げた。
熱せられたバターのようにドロドロと溶けていく天井を突き抜け、威厳に満ちた、あまりにも神々しい存在が降りてきた。それは――「宇宙のフェニックス(不死鳥)」。
純白の炎でできたその聖なる存在は、黄金色の光の羽から、人間の骨の髄まで震わせるような天上の旋律を奏でていた。教室全体が、まるで楽園そのものから切り取られたかのような神聖な光に包まれた。
その神は水晶のくちばしを開き、轟くような、壮大で荘厳な声が、教室だけでなく、神戸の街全体に響き渡った。
宇宙のフェニックス:『山田武よ! 浄化のサイクルは、聖なる鳥が最も腐りきった灰の中から蘇ることを求めている。あらゆる堕落した心の中から、この地球上のあらゆる人間の屑の中から――貴様の未成年者への忌まわしい執着、この教壇からの吐き気を催すような妄想、精度そして貴様のパソコンに保存されているあのウイルス塗れの隠しゴミファイルこそが、貴様をこの国で最も卑劣で惨めな存在たらしめているのだ!それゆえ、宇宙のアルゴリズムは、貴様を強制的な贖罪の器として選んだ!汝、新たなフェニックスとなれ!!』
山田:――石像のように固まり、チョークを半分持ち上げたまま――。「……はいぃっ!?」
自分の検索履歴とPCの身の毛もよだつ中身が、銀河系の神によって教職員と生徒全員に一斉配信されてしまったという事実を脳が処理するよりも早く、フェニックスが彼の胸に音を立てて激突した。
痛みは激しかったが、その内から湧き出る力はそれ以上に強烈だった。
山田のベージュのシャツの背中を引き裂き、翼幅4メートルにも及ぶ巨大な黄金の炎의 翼が2枚、激しく噴き出した。彼の瞳は超新星の光のように輝いた。足元の床が溶け始め、リノリウムは粘り気のある溶岩へと変わり始めた。熱は凄み、生徒たちの机から黒い煙が立ち上り始めた。
その後、完全な静寂が訪れた。
だが、誰もその美しい翼を見ていなかった。誰も、山田の周囲を神秘的に漂う聖なる炎など見ていなかった。
3列目では、女子生徒たちが席で身を縮め、顔面蒼白になり、まるで害獣を見るような恐怖と、その生々しい生理的嫌悪感から吐き気を催していた。後ろの男子生徒たちは、山田をまるで肥大化したドブネズミを見るかのような目で睨みつけていた。ドアのそばでは、騒ぎを聞いて駆けつけた校長がガタガタと眼鏡を押さえながら、破壊された天井と、今や神々しいオーラを放つ中年教師とを交互に見つめていた。
床から10センチほど浮き上がり、その翼は神話的な優雅さで翻っていたが、その神聖さは彼のパニックに満ちた顔や、加齢臭混じりの汗の匂いと、とんでもなく最悪なコントラストを描いていた。
山田は、おずおずと咳払いをした。教室を見渡し、次に硬直している校長を見据え、鼻梁の部分が熱で少し溶けてしまった金属フレームの眼鏡をクイッと直した。
山田:「えっと……」――震える声でたどたどしく――。「宿題は……34ページの演習問題をやっておいてください。僕は……その、病院に行かなきゃいけないので。ええ。病院へ」
翼を垂直に立て、不器用で未熟な羽ばたきで、天井の穴へと飛び出した。上昇する際、軌道を誤って屋上のコンクリートの枠に頭を思いきりぶつけ、天井に灰の跡と、教室内へひらひらと焦げた灰色の靴下を片方残していった。
山田は、まるで酔っ払った隕石のように神戸の空を横切り、高圧電線に激しく衝突して一帯の街を大停電に陥れた。その下では、全住民が「一体どんなトチ狂った神が、あんなクズに絶対的な力を与えたんだ」と首をかしげていた。
【作者より一言】
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※この作品はブラックユーモア、風刺、および勘違い要素を含みます。設定上、R-15指定とさせていただきます。
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