第125話 結界
闇邪教の幹部と思わる奴に死魔術を放ってみた。
だが、弾かれた。
どうやら、あの分身の侵入を防いだ結界を持っているらしい。
あれは魔力を遮断するから、死魔術の魔力も遮断される。
ただ、結界を持っているのは幹部だけのようだ。
下っ端はあっけなく死んだ。
虐殺者になりたいわけではない。
下っ端を皆殺しにするのは最終手段だ。
「サマンサ先生、魔力を防ぐ結界を知ってる?」
「何それ! そんなのが出来たらほとんどの魔法は防げちゃいます」
「敵が使っております」
「ええっ、原理を知りたいです」
「これをどうにかするには物理だな。となると石弾辺りか」
「魔力制御が切れた石弾まず当たらないと思いますよ」
うん、しいの実形にして、回転させれば直進する。
ただ、これを使うと手口がばれてすぐに真似される。
簡単だからね。
銃みたいな魔法を流行らせたくない。
もっとも石弾だと、頑張っても時速200キロメートルぐらいしか出ない。
でも、速度を上げることを考える奴はいるはずだ。
今の石弾は形が歪で、たぶん速度を増すと不安定になって、明後日の方向に飛んで行くはず。
しいの実形というブレイクスルーを与えたくない。
「散弾ならどうでしょうか」
「カリーナ、街には周りに人がいるから被害が出る。石弾、一発だって、外して他の人に当たったら大変だ」
死なら、ひと一人を包んで、周りに被害を出さない自信がある。
「てっとり早いのは結界を解くことですね。原理さえ分かれば容易いと思いますよ」
魔力を弾く原理か。
魔力というのは、思念で操作が可能だ。
ただ魔力を弾けと命令するのは無理。
魔力は肉体も突き抜ける。
魔力に魔力をぶつけてもやはりすり抜ける。
あれっ、なんか?
なんだっけ?
ええと、喉まで出かかったけど出て来ない。
そのうち、思いつくだろう。
幹部を殺すのにあまり物騒な手は使いたくない。
とくに相手にすぐに真似されるようなのは、よろしくない。
「結界はひとまず置いといて。闇邪教の幹部と信者をどうにかしたい」
「先生に、そういう質問はしないで下さい。期待されても困ります」
サマンサ先生は技術開発しか興味がないんだろうな。
いいよ、カリーナと考えるから。
「狂信者は始末に負えないんだよな」
「心を変えるのは魔法でも大変ですわ」
「洗脳魔法は禁忌だし。そう言えば、闇邪教の教えって知らないな」
闇邪教がどういうものか知りたいと、クロフォードに手紙を書いた。
1週間後、早馬で手紙が届けられた。
封を切って読み始める。。
ええと、異教徒を殺して死ぬと天国に行ける。
ここからしてもう駄目だ。
妬みや憎しみ、悲しみ、とにかく負の感情を邪神は司るとある。
邪神に近づけばそれらの感情から解放されるらしい。
負の感情を受け入れて、従えるのが理想なのか。
負の感情は全て赦されるらしい。
憎しみ恨み大いに結構みたいな感じか。
闇邪教はそれに闇の安らぎが加わった。
救いようのない宗教だな。
「好きになれない教えですわね」
「まあな」
「でも負の感情が溢れると、それを受け入れてくれる闇邪教に染まるのでしょうね」
「うん、俺としては戦えよと言いたいがな。逃げても何にもならない」
とりあえず、幹部を矢で狙撃してみるか。
分身に弓を持たせて幹部を待つ。
他の人がいなくなったのを見て、矢を放つ。
矢の軌道は魔力の線でシミュレートしてある。
矢は幹部の服に当たって、落ちた。
防弾チョッキ並みの性能の服かな。
くそっ、金を掛けている。
フードを被っているから、狙う場所は限られる。
今回は失敗だな。
幹部は、顔を布で隠した。
あの布も防弾なのだろうな。
ここは異世界だから、モンスター素材が溢れている。
ドラゴンのウロコなんかだと、銃弾もきっと弾くだろう。
矢ぐらいだとドラゴンほどでなくても防げる。
分身が使った弓は鉄製の特別製だったんだがな。
このぶんだと石弾も無理だな。
やはり死魔術でないと。
今は情報収集するべきかな。
やつらが何か起こしたら対処するしかない。
対処療法は嫌なんだけどな。
「駄目でしたわね」
「飛び道具は望み薄だ。火で包んで蒸し焼きとかなら、いけるかも知れない。温度は魔力を弾く結界で防げないからな」
「冷却の魔道具か魔法で対抗しそうですわね」
「だよな。俺でもそう考える」
死魔術が封じられたのがこんなに痛いとは、思わなかった。
やつらの知らない力か。
重力とかはどうだろうな。
押し潰せば良い。
単純な攻撃だ。
単純なものほど防ぎにくい。
また今度、機会を狙ってやってみよう。




