第107話 イカサマ
分身ナンバー1の映像。
ワイズベル達を映している。
「マフィアの残党の大半は吸収できました」
「奴ら幹部がいなくなって頼れる者がいない。だから今は大人しいが、力を付けたら裏切り者もきっと出る」
「ですね」
「生かさず殺さずで行けよ」
「はい、わかってます」
「マフィアの残党には賭場をやらせろ。ギャンブルは良い。イカサマすれば儲かるからな」
「はい、イカサマするための魔道具を開発してます」
イカサマするために魔道具開発か。
「このコンピュータという魔道具は凄いな。イカサマに使える。購入して研究させろ」
「はい」
金貨何百枚もの魔道具をお買い上げか。
イカサマに使われると思うとちょっと複雑だが、カリーナに影響がなさそうだから割とどうでも良いな。
ギャンブル好きの奴の面倒は見れない。
面白いので、何日もワイズベルの映像を見た。
ワイズベルは勝つ確率が高くなる賭け方のプログラムを作った。
賭け事は確率だからね。
それとカードなんかの場合、出た札を覚えておけば、札が減るにしたがってどうなるか予想が付く。
頭で覚える人もいるようだけど、コンピュータを使えば簡単だ。
ワイズベルが賭場に足を踏み入れた。
側近は隣の部屋でコンピュータを操作するようだ。
ゲームが始まった。
ワイズベルは負けることはあったが、高い勝率を叩き出した。
「イカサマだ」
客のひとりが騒ぎ始めた。
「どんなイカサマで」
マフィアの人間が出て来て、凄みを利かせる。
「台だ。台に細工がある」
「存分に調べても良いですぜ。だが何もなかったら」
客は台を調べた。
「カードだ」
「存分に調べな」
カードを穴のあくほど調べたが何も出て来ない。
「後ろでカードを見てた」
「お客さん、ここの賭場に通う客は。カードを伏せるのが基本ですぜ。カードを見る時は手と体で隠して後ろから覗けなくします。お客さんはそうではないんですかい」
「そうだが、絶対にイカサマだ」
「ここまで来ると言い掛かりっていうもんですぜ。ちょっと来てもらえますかい」
客は別室に連れて行かれて、慰謝料として金をたんまり取られた。
とうぜん金はないので借用書を書く。
あーあ、そんな高い利子の借用書を書いたら、家族全員が奴隷落ちだろう。
仕掛けはこうだ。
側近は、台の捨て札とワイズベルの手札のカード情報を魔法で覗くと、コンピュータに打ち込む。
出た結果が、ワイズベル正面のテレビモニターに映される。
テレビモニターは花や鳥の映像なので、ぱっと見はそれが合図だとは分からない。
客はただの装飾だと思っている。
悪辣な仕掛けだ。
札を全部覚えて、瞬時に計算できる人間だけがこのイカサマに勝てる。
そういうばくち打ちは、すぐに分かるので出入り禁止にされる。
プリンクといいワイズベルといい、こういう悪知恵が働くな。
コンピュータを見て、イカサマに使おうなどと普通は考えない。
イカサマプログラムを開発している魔法学園の生徒が凄いのだが。
プログラマーのセンスを持った人間は何パーセントかの確率で存在するようだ。
こういう悪党にコンピュータを売らないという選択肢はあるのだが、サマンサ先生は開発のために色々な場所の研究者とやりとりしている。
だから情報漏洩や、金に目が眩んだ研究者が出るのは避けられない。
全てオープンにして、魔力コンピュータが発展する方が利益があると考えたのだ。
カリーナに被害が及ばなければわりとどうでも良いと思っている。
ワイズベルはイカサマで負けたり勝ったりをしたが、最終的には勝っている。
ばくち打ちも何人か相手にしたようだが、プログラムには勝てなかった。
だよね。
こういうゲームはそうなっている。
「コンピュータって凄い便利なのですね」
分身の映像を見てたカリーナがそう言った。
「まあね。計算することに掛けては最強かな」
「数学の授業で計算機の使用が禁止されましたね」
「俺も聞いた。計算機を使っていると計算できなくなるから。算盤は逆に計算ができるようになる」
「そう考えると、コンピュータは人に優しくありませんね」
「まあね」
コンピュータが出来て、この世界の発展はどうなるんだろう。
きっと、前世の世界みたいになるのかな。
それにはインターネットが必要だな。
通信分野が遅れているな。
巨大魔石を使えば、長い距離の魔力通信もできそうだが。
有線と、無線で考えたいな。
有線の施設を敷設するには、金貨10枚どっかんでも足りなそうだ。
魔力を遠くまで流す有線は簡単だ。
魔石の粉で糸を染めれば良い。
めちゃくちゃ金が掛かる。
糸だと耐久性に難があるな。
金属の線に、魔石の粉と接着剤を混ぜた物を塗るのは良いが、こちらも金食い虫だ。
こんなの国でやるべきだな。
国王はきっと予算は出さないだろうな。
便利だけど、金が掛かり過ぎると言って。
無線は魔力ラジオでやっているから、デジタル信号を無線でやれば、ネットワークはできるんだけど。
こっちもかなりお金が掛かりそうだ。
アイデアだけサマンサ先生に投げておこう。
きっと後世の学者が実現してくれるはずだ。




