第十八話 そのスキル…欲しい
俺の全力の攻撃をくらったスライムデラックスは……
「グ……ギャ……」
「うわぁ……まだ生きてる……」
体力を半分以上残して俺の攻撃を耐えてきやがった。流石は魔物最強の物理耐久だ。
倒せなかったのは悔しいが、流石にあのステータス値にスキルが入れば、このぐらいの耐久力でも仕方がないと思えた。
「ま、今の俺の実力が見れたので良しとするか……〈炎之龍息吹〉!」
俺は火属性最高火力を叩き込むことでスライムデラックスを消し炭に……いや、灰すらも残さずに完全消滅させた。
「う~ん……だけど歴代勇者がここを突破できないのってまじめに考えると不自然だな……」
歴代勇者が〈炎之龍息吹〉を使えたことはトリスの図書館の本に書いてあった。
それなのに歴代勇者の最高到達点が七十階層なのはやっぱりおかしい。
「……分からんな」
俺はそのことに疑問を持ちつつも、扉を開けて部屋の外に出た。
「あ~全然LVが上がらねぇ……」
今俺がいるのは七十九階層だ。
あのバケモノを倒した後、ここに来るまでの三日間に倒した魔物の数は約八百だ。それなのに上がったLVはたったの2だ。
「別に出て来る魔物が弱いってわけじゃないんだけどなぁ……」
ここで出て来る魔物はみんな強い。
例えば、岩のような鎧に覆われた体長十メートルほどの首が少し長い亀のような魔物。
〈鑑定〉してみると、
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名前 アースドラゴン LV.75
体力 15000/15000
魔力 17100/17100
攻撃 13100
防護 13900
俊敏性 1000
弱点
・水属性
魔法
・土属性
自ら獲物を探すことは少なく、獲物が近づくまでじっと潜んでいる。
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と表示された。
ステータスが高いのに用心深い動きをするのはめんどくさいと思ったが、裏を返せば近づくまで動かないので、倒すのは思ったよりも簡単だった。
素早く近づき、白輝の剣で首を切り落とす。ただ、それだけだ。
他にいたのだと藍色の鱗を持つ体長三メートルほどの小さめのドラゴンだ。
〈鑑定〉してみると、
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名前 ワイバーン LV.72
体力 11200/11200
魔力 8200/8200
攻撃 13700
防護 9600
俊敏性 18100
主に五から十体の群れで行動する。
素早い動きで敵を翻弄する。
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と表示された。
こいつはコバエのように俺の周りを飛び回るから結構鬱陶しかった。
だが、耐久力がないので、適当に白輝の剣を振り回せば簡単に倒せるから問題はない。
「さて……八十階層のフロアボスは何だろうな……」
俺はようやく八十階層のフロアボスがいる部屋の前に着いた。
「では、入るか」
俺はゆっくりと扉を開け、中に入った。
「……ほう」
七十階層と同じくらいの広さの部屋の中央にいたのは九つの首を持つ体長十五メートルほどの蛇のような魔物。暗紫色の鱗を持ち、口から零れ落ちた暗紫色の液体が地面に落ちると「ジュー」という音とともに床が微かに溶けた。だが、ダンジョンの性質上、地面は直ぐに元通りになった。
「前に戦ったスライムデラックスよりも強そうだな……」
そう思いながら、俺は〈鑑定〉を使った。
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名前 ヒュドラ LV.89
体力 21100/21100
魔力 17800/17800
攻撃 14900
防護 15700
俊敏性 2900
弱点
・水属性
スキル
・超速再生LV.6
・魔法合成LV.3
魔法合成によって作られた、毒属性の魔法を使う。
九つの首を短時間で全て切り落とさない限り、また再生してしまう。
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と表示された。
「毒属性……俺が持っていない属性だ……」
スキルによって作られたものとはいえ、俺が持っていない魔法を持っていることに俺は少し羨ましがった。
「神様~俺もあのスキル欲しいんだけど……」
俺は天井に祈りを捧げてみた。だが、当然反応はない。
「はぁ……ま、やるか」
俺がそう意気込んだ瞬間、ヒュドラが天井を向きながら咆哮を上げた。
そして、それと共に九つの口から毒々しい色の煙が噴煙のように上に登っていき、やがて天井を覆った。
「何だありゃ?」
そう思った次の瞬間、そこから毒々しい色の液体が雨のように降り注いだ。
恐らくこれが毒属性の魔法なのだろう。
「まあ、〈結界〉!」
俺は取りあえず〈結界〉をドーム状に張って、その液体がかかるのを防いだ。
だが、少ししてから異変が起きた。
なんと、その液体に当たった所が「ジュー」という音を立てながら徐々に薄くなってきたのだ。
「は!?〈結界〉を溶かすのかよ」
俺は〈結界〉が溶かされていることに動揺した。
だが、直ぐに冷静になると、〈解毒〉を〈結界〉の表面に使い続けることで対処した。
「ふぅ……これで一先ずは安心だな……というわけで反撃開始といくか」
俺はそう言うと、〈結界〉ごしに〈暴風竜巻〉を使った。
〈結界〉の真横に現れた竜巻は、天井の煙を掻き乱し、そのまま消滅させた。
「では死ね!〈氷之龍息吹〉!」
首を全部切り落とすのは効率が悪いと思った俺は水属性の最高火力を撃って、ヒュドラを氷漬けにした。
そして、氷漬けになったヒュドラはそのまま塵となって消えた。
「よし……そこそこ強かったかな」
毒の雨がかなり厄介だったが、最高火力の魔法を覚えた俺には足止め程度にしかならない。
俺は魔石を回収すると、扉を開き、部屋の外に出た。
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